- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152102126
作品紹介・あらすじ
ネットへの視覚的なアクセスを遮断する規制が敷かれた香川県からやってきた女子高生の大阪観光サイバーパンクの表題作、百合SFアンソロジーや『異常論文』へ書き下ろしとして発表された短篇群など、『元年春之祭』著者による知性と感情を揺さぶる小説全8篇
感想・レビュー・書評
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SF短編小説集、というよりは、著者の膨大な知識や興味から編纂された空想小説集といった趣きで、その知識量にまず驚かされました。
少女と吟遊詩人の巡り合いの旅路を描くファンタジックな「物語の歌い手」に、まさに頷かされてしまいそうになる『異常論文』たる「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」から、結論の鮮やかさがミステリの謎解きめいた脳科学SF「サンクチュアリ」、スマホゲームの開発をめぐり小気味いい会話で空想世界の構築を楽しむ「開かれた世界(オープンワールド)から有限宇宙へ」など、かなり高度でディープな仮想世界がぎっしりとどの短編にも形作られていて、凄い密度だなと思いました。
その中で表題作「ガーンズバック変換」は香川県のゲーム禁止条例を題材に取って少女同士の交流を瑞々しく描いた青春SFで、比較的ライトに楽しめます。この日本の少女らしさの描きかたも巧い。
そして「色のない緑」。親友の死の謎を追うミステリであり、近未来の人工知能の行く末を描いたSFであり、なにより彼女らの絆のつよさと切なさが胸を打つ、鮮やかな百合小説でした。彼女が研究を志した動機、絶望した理由、そして取った手段。すべてがひとつの存在がために帰結する、無駄のない硬質の美しさ。この短編、ものすごくただただ好みです。
また素敵な書き手さんと出会えた…という嬉しさを抱けた短編集でした。 -
陸秋槎『ガーンズバック変換』読了。
華文ミステリの俊英にして百合好きで知られる作者による初のSF短編集。
ほかの百合SFアンソロ収録の色のない緑や華文SFアンソロ収録のハインリヒ・バナールの肖像の完成度の高さは言わずもがなのことだけれども、本書書き下ろしの「物語の歌い手」は作者が表題作にしたかったと言うだけあって淡々とした描写の中に陸秋槎らしいエモさが凝縮されている。 -
SF短編集として期待していたんですが、なんともダラダラとした会話が続く作品が多く、それはそれで会話を楽しめればいいんでしょうが、まったく私には苦行でしかなかった。SFではなく、“不思議なお話し集”と捉えたらいいのかもしれないが、それにしてもあまりにも読者サービスがなさすぎる。表題の「ガーンズバック変換」が唯一我慢して読めた。
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光る作品もある。短編は難しいな。
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表題作「ガーンズバック変換」は香川県の「ネット・スマホ依存症対策条例」がモチーフ。現実よりは一歩踏みこんだ世界を描いているのだけど、現実と地続きのディストピアで、いかにも実現しちゃいそうでぞくぞくする。主人公が、液晶画面を遮断するメガネに形だけ似せた伊達メガネを作るのは、あくまでも自分のサバイバルを旨とした小さな抵抗。けっして地下組織に加わったり、表立って反対運動をしたりという大きなた抵抗ではない。でも、もしかしたらそういう心持ちのほうが長続きするかもしれないし、それが広がっていけば大きな抵抗網になるのかもしれない……ってそれがこの短編の眼目ではたぶんなくて、最後は百合的な友情に着地するんだけど。
「色のない緑」は、『ベストSF2020』で読んだのが最初だけど、今はその当時に比べてAIの状況がずっと進化しているから、はるかにリアルに感じられてちょっとこわいような。自動翻訳をめぐるエピソードも、また、AIが人間が知り得ないブラックボックス化するという状況もよくわかる。
ほかの短編は、中世っぽい舞台のものがあったり、ゲーム開発をネタにしたオタクっぽい作品があったりと振れ幅がすごくて、読んでいてとまどいもあるっちゃあるけど、百味ビーンズみたいな楽しさもあってよかった。 -
香川県ネット・ゲーム依存症対策条例をテーマに書かれた表題作『ガーンズバック変換』が前から気になっていて読んだ。SF作品集とされているが、SFしていたのは『開かれた世界から有限宇宙へ』『ガーンズバック変換』『色のない緑』くらいかなあと思う。
1番面白かったのは『色のない緑』。「色のない緑は猛烈に眠る」という文章がどうやったら成立するかを物語を通して伝える作品。
「色のない〜」はチョムスキーの例示した意味は成立しないが文法的にはあっている文。
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正直難しすぎて、何が書かれているのかも何を言いたかったのかも解らなかった。
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23/09/10読了
ふむ、という感じ。ガーンズバック変換(香川)と、サンクチュアリ(ゴーストライター)、色のない緑がよかったかな、他の作品も読みたい。