ガーンズバック変換

  • 早川書房
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本棚登録 : 217
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152102126

作品紹介・あらすじ

ネットへの視覚的なアクセスを遮断する規制が敷かれた香川県からやってきた女子高生の大阪観光サイバーパンクの表題作、百合SFアンソロジーや『異常論文』へ書き下ろしとして発表された短篇群など、『元年春之祭』著者による知性と感情を揺さぶる小説全8篇

感想・レビュー・書評

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  •  百合ミステリーが得意な(?)陸秋槎氏の短篇集。日本で出版される5冊目の本だが、私はそのうち4冊を読んでいる。

    本書をブクログに登録するにあたり、カテゴリーをどうするか迷った。ミステリー要素はないようだし、そもそも「百合」というカテゴリーは設定していない。全8篇のうち、表題作と最後に掲載されている二つの短編はSFと言えるのでそのカテゴリーに登録した。

     短篇集としてのテーマがあるわけでもないし、特定のジャンルでまとめられているようでもない、はっきり言って全般的によくかくわからない作品ばかりだ。私は、こういった短篇集は苦手である。

  • SF短編小説集、というよりは、著者の膨大な知識や興味から編纂された空想小説集といった趣きで、その知識量にまず驚かされました。

    少女と吟遊詩人の巡り合いの旅路を描くファンタジックな「物語の歌い手」に、まさに頷かされてしまいそうになる『異常論文』たる「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」から、結論の鮮やかさがミステリの謎解きめいた脳科学SF「サンクチュアリ」、スマホゲームの開発をめぐり小気味いい会話で空想世界の構築を楽しむ「開かれた世界(オープンワールド)から有限宇宙へ」など、かなり高度でディープな仮想世界がぎっしりとどの短編にも形作られていて、凄い密度だなと思いました。

    その中で表題作「ガーンズバック変換」は香川県のゲーム禁止条例を題材に取って少女同士の交流を瑞々しく描いた青春SFで、比較的ライトに楽しめます。この日本の少女らしさの描きかたも巧い。

    そして「色のない緑」。親友の死の謎を追うミステリであり、近未来の人工知能の行く末を描いたSFであり、なにより彼女らの絆のつよさと切なさが胸を打つ、鮮やかな百合小説でした。彼女が研究を志した動機、絶望した理由、そして取った手段。すべてがひとつの存在がために帰結する、無駄のない硬質の美しさ。この短編、ものすごくただただ好みです。

    また素敵な書き手さんと出会えた…という嬉しさを抱けた短編集でした。

  • 陸秋槎『ガーンズバック変換』読了。
    華文ミステリの俊英にして百合好きで知られる作者による初のSF短編集。
    ほかの百合SFアンソロ収録の色のない緑や華文SFアンソロ収録のハインリヒ・バナールの肖像の完成度の高さは言わずもがなのことだけれども、本書書き下ろしの「物語の歌い手」は作者が表題作にしたかったと言うだけあって淡々とした描写の中に陸秋槎らしいエモさが凝縮されている。

  • 短篇集。8篇収録。
    理論とかすっとばしてただひたすらに読んでいく(難しくて理解できないところもあるので…)こういう作品が作られていることが嬉しい。

    物語の歌い手
    上質な童話というか、こういった中世の世界観大好き。

    三つの演奏会用練習曲
    こちらはインド。不思議な読み心地。


    開かれた世界から有限宇宙へ
    ゲーム世界の理論の作り込みってこんなに大変なんですね(汗

    インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ
    読み終えて、ごめんなさい分かりません(笑)と思ったら
    『異常論文』掲載の作品なんですね。私にはハードル高すぎました。

    ガーンズバック変換
    香川県にだけ存在するガーンズバック変換。面白かったです。

    色のない緑
    人間を超えていくAI。こちらも面白かった。

  • SF短編集として期待していたんですが、なんともダラダラとした会話が続く作品が多く、それはそれで会話を楽しめればいいんでしょうが、まったく私には苦行でしかなかった。SFではなく、“不思議なお話し集”と捉えたらいいのかもしれないが、それにしてもあまりにも読者サービスがなさすぎる。表題の「ガーンズバック変換」が唯一我慢して読めた。

  • 光る作品もある。短編は難しいな。

  • 表題作「ガーンズバック変換」は香川県の「ネット・スマホ依存症対策条例」がモチーフ。現実よりは一歩踏みこんだ世界を描いているのだけど、現実と地続きのディストピアで、いかにも実現しちゃいそうでぞくぞくする。主人公が、液晶画面を遮断するメガネに形だけ似せた伊達メガネを作るのは、あくまでも自分のサバイバルを旨とした小さな抵抗。けっして地下組織に加わったり、表立って反対運動をしたりという大きなた抵抗ではない。でも、もしかしたらそういう心持ちのほうが長続きするかもしれないし、それが広がっていけば大きな抵抗網になるのかもしれない……ってそれがこの短編の眼目ではたぶんなくて、最後は百合的な友情に着地するんだけど。

    「色のない緑」は、『ベストSF2020』で読んだのが最初だけど、今はその当時に比べてAIの状況がずっと進化しているから、はるかにリアルに感じられてちょっとこわいような。自動翻訳をめぐるエピソードも、また、AIが人間が知り得ないブラックボックス化するという状況もよくわかる。

    ほかの短編は、中世っぽい舞台のものがあったり、ゲーム開発をネタにしたオタクっぽい作品があったりと振れ幅がすごくて、読んでいてとまどいもあるっちゃあるけど、百味ビーンズみたいな楽しさもあってよかった。

  • 香川県ネット・ゲーム依存症対策条例をテーマに書かれた表題作『ガーンズバック変換』が前から気になっていて読んだ。SF作品集とされているが、SFしていたのは『開かれた世界から有限宇宙へ』『ガーンズバック変換』『色のない緑』くらいかなあと思う。

    1番面白かったのは『色のない緑』。「色のない緑は猛烈に眠る」という文章がどうやったら成立するかを物語を通して伝える作品。
    「色のない〜」はチョムスキーの例示した意味は成立しないが文法的にはあっている文。

  • 正直難しすぎて、何が書かれているのかも何を言いたかったのかも解らなかった。

  • 23/09/10読了
    ふむ、という感じ。ガーンズバック変換(香川)と、サンクチュアリ(ゴーストライター)、色のない緑がよかったかな、他の作品も読みたい。

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著者プロフィール

小説家。1988年北京生まれ。2014年に短編「前奏曲」が第2回華文推理大奨賽最優秀新人賞を受賞。2016年に『元年春之祭』(新星出版社)でデビューする。同作は2018年にハヤカワ・ミステリから邦訳刊行され、日本の新本格に影響された華文ミステリ作家として脚光を浴びる。邦訳書に『雪が白いとき、かつそのときに限り』(ハヤカワ・ミステリ)、『文学少女対数学少女』(ハヤカワ・ミステリ文庫)があるほか、日本刊行の小説アンソロジー『アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー』(編=SFマガジン編集部/ハヤカワ文庫JA)、『異常論文』(編=樋口恭介/ハヤカワ文庫JA)などにも参加している。本作『盟約の少女騎士(スキャルドメール)』が、日本では初の単著書き下ろし作品となる。

「2021年 『盟約の少女騎士』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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