わが秘めたる人生

  • 文藝春秋
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感想 : 1
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  • Amazon.co.jp ・本 (542ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163154404

感想・レビュー・書評

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  • ポール・セロー氏の著作は面白い。再読だが、読んでみてよかったと心底思った。
    はじめに読んだ時に気がつかなかったことがなんと多いことか。あの時、私はただ文字を目で追っていただけで、章ごとの主人公の心理を理解はしていなかった。
    少年期から中年期までの男性の人生が、章に分けて丁寧に描かれている。秘密は女性だ。主人公は秘密を持つことを楽しんでいる。秘密があることが彼の人生そのものなのだ。
    少年期の主人公が親に秘密にしていたことが、バレてしまう瞬間を描写した文章が秀逸だ。
    『ねじくれた形で秘密が知れわたり、知らぬは自分ばかりであるーというふうに、そのときの私は感じた。成り行きのあて推量をするだけで、ろくなことが知れてこない。なんら真実は表に出ないまま、ある伝わり方が生じた。下手に包んだ荷物がほどけるようなものだ。まずはじんわりと染みて漏れるところができる。それから崩壊が進み、一気にばらばらにほどけて、どす黒くべっとりしたものが外へあふれ、どさっと床に落ちて誰の眼にも明らかとなり、『うわ、これは何だ』と騒がれる。
     その始まりはーえてして災難はそんなものだったがー電話口にいる母の声が私の耳に聞こえたときであった』
    下手に包んだ荷物の例えは、とてもセロー的で面白くて、こんな文章を読めるのは幸せだ。

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