どこにでもある場所とどこにもいない私

著者 :
  • 文藝春秋
3.07
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本棚登録 : 358
感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163217703

感想・レビュー・書評

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  • 単行本はタイトルが違うので同じ本を二冊買ってしまった。こっちのタイトルにはっとした。「コンビニ」の話を読んで、いろんなところへ行ったり、いろんなものを見たりするのは、無駄じゃないんだな、って気づかせてれた。

  • 生きる希望をもつことのよろこびとか、生きる希望がない虚しさとかが描かれている

  • なんてことはない風景のなか、何かを変えようとする人のアンソロジー。
    しかし、その風景は未だ変わらないことに愕然とする。

    龍にしては小品だが、希望の国のエクソダスの時代を考えると必要な話なのかもしれない。

  • 「目玉がぎょろぎょろ動く」
    感想を一言でいうと、僕は普段の何気ない生活のリアルに結構近いものをこの本に感じ、また場所の具体性と曖昧さを同時に体験できる心地よさは文章独特だと思った。
    この本はいくつかの全く異なる小説で構成されている。場所はコンビニ、居酒屋、公園など、都市のどこか。視点は一人称で、各話の主人公は誰かと会話したり、その場を漂ったり、回想したりしている。普通だ。
    ただ、どの話も話そっちのけで描写が細かい。眼に映るものやことが、全部とは言わないがものすごい密度で書かれている。最初のコンビニの話なんか、コンビニに立ち寄って中をうろうろするわずか数分間のあいだに知覚されたことが約30頁にも渡って書かれている。注意が散漫な主人公の目移りがほとんどそのままに近い状態で記述され、何かが目に入っては次のものに目が移り、またふとした拍子にさっき見たものが目にとまったり、それに連想される出来事を思い出したりする。それらのものやことは、我々が対象を観察しながらスケッチするときのように、はっきりした輪郭をもつ言葉で描写されていく。ただし位置関係は曖昧なままで、それは読み手の想像に委ねられている。
    このようにして複数の断片が場面1つひとつにある全体=リアルな時空間を曖昧に浮かび上げている印象を受けた。この視点は、例えば何かしなければならないことはあるが少し背を向けたい瞬間や、どこかでぼーっと過ごしているときに僕も体験するものだ。他の人はどうだろうか?

  • 読むのに疲れた。

  • 人間観察の鬼!

    視覚、聴覚が研ぎ澄まされてる感じ。
    短編集。
    何か得るものがあるよーでない作品。

    私はいまいち話に入り込めなかった。
    逆に、マイナス思考に入っていきそうになった。

  • 淡々と進んでゆく短編集。エンターテインメント的なところもあまりない。文庫化で改題をしたのは疑問に思う。作者が具体的にどこを最高の短編と言っているのかわからない。個人的には『ライン』のほうがお薦め。

  •  村上春樹と比較され、「W村上」とも言われる、村上龍の作品を読んだことがなかったので、読まず嫌いせずに読んでみた。
    この本は、8作品による短編集である。読み終わった後は、ふーん・・いろんな人がいて、いろんなことを感じているんだということを伝える作品かなと感じた。また、こういう状況に陥る人も実際にいるかもしれないと感じた。
     しかし、”どこにでもある場所を舞台にして、社会的ではない、他人と共有できない個別な希望を書きたかった”著者による、このあとがきを読んで、それは表面的な読み方であったと感じた。自分の生活の中で背景的存在の他人にも、それぞれ個別の願いがあり、希望があり、そのために、その人なりにもがいてることに気が付かなくてはならなかったと感じた。つまり、誰もが、将来が今よりよいよいものにしようともがいているのだ。それをみんなが気付けば、平和な世界に~とは思わないが
     これから読む人がいるなら、これを念頭においてこの本を読んでほしい。個人的には「空港」がおすすめ。

  • 一つのシーンをゆっくりと時間をかけてかみ砕き、綿密に、あますところなく。
    ときには効果的に。ときには、少々くどいほどに。
    そんな、描写の仕方が印象的な小説だった。
    読んでいくうちに、ゲシュタルト崩壊という単語が浮かんだ。

  • 特別幸せではないけれど、特別不幸でもない、たぶん頑張ったら何かがちょっと変わるかもしれないけれど、そのモチベーションが見つからない。そんな人たちの物語。
    淡々とした語りだけどどこか心に残る。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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