- Amazon.co.jp ・本 (108ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163248509
感想・レビュー・書評
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「勤労感謝の日」「沖で待つ」
どちらもすらっと読めて、入り込んでゆけた。辛辣さがあった。バブル崩壊を境に大きく変わった働き方、女性総合職が出来た頃のお話。お仕事小説は苦手意識がありましたが、自然に織り込まれる仕事現場、仕事に奮闘する現場の裏側に惹きつけられた。
同期の男女の恋愛感情とも違う、強い絆を描いた沖で待つ。「沖」で待つんだな、そこでぐっときた。光景が浮かぶ、それなら怖くないかも。
沖で待つ、のある事情を除けば大きな出来事が起きたわけでなく通り過ぎるような日常。その中でふつふつと湧き上がる主人公の切実な感情表現が巧みだと思いました。現実的なテーマなのに宙を浮いているような感覚を得た一冊でした。正直、そこまで読み込めなかった自分がもどかしいですが、この空気感は気になるので、他の作品も読んでみたいと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『勤労感謝の日』(初出二〇〇四)『沖で待つ』(初出二〇〇五)の短編二篇。どちらも総合職として入社した経験を持つ三十代女性が主人公の話。物語の焦点も文体も互いに異なる二篇だが、当時の女性総合職の生きるさまをありありと見せてくれるところは共通している。
これがまた、上野千鶴子のミソジニー本(『女ぎらい』)の直後に読むという乙なリレーをしてしまったから、もはや“ミソビュー”でしか読めない。テトリスをひたすらやりまくったあとに、周りの何を見ても並べて消したくなるあの現象さながらに、周りの何を見てもミソ度測定してしまう感じ。
この二冊を図書館で同じタイミングで借りたのは本当に偶然なのだが、上野千鶴子本の中で『沖で待つ』のほうは脱ミソジニーの兆しが見える作品のひとつとして言及されていた。ミソジニーのもとでは、男女の友情は「成り立たない」に決まっていたが、『沖で待つ』には男女の友情が描かれている、と。それでいうと、作中の男女同期の友情だけでなく、男の先輩との関係もミソ度が低い。
ただまあ職場の人間関係というのは、共に達成しなければならないミッションがあるから、その達成のために良好な関係を築こうという動機付けが働くところもある。仕事をして生きていく者にとっては、「仕事がきっかけで生涯の友達に出会えた」と「仕事でもなければ友達になんてなってなかった」の差に意味はない。仕事だろうが、男女だろうが、同じ人間同士出会ったのなら、一方がではなく双方が楽しい(それが無理ならせめて「苦しくない」)関係を築き維持したい、それだけだ。ミソジニーの世界では、女は男からみたら対等な人間ではない。
『勤労感謝の日』の主人公は、ミソ度百パーセントの人たちに囲まれこれに抗っている。上野千鶴子によるフェミニストの定義「ミソジニーへの“適応”をしなかった者たち」そのものだ。作中にあった「総合職をやめた女に共通する脱力じみた孤独感」という言葉が忘れられない。-
111108さん
あ、私もこの本読もうと思ったのはそのラジオきっかけですよ^_^!小川洋子さんの本読んだことない(^^;けど、藤丸さんとのや...111108さん
あ、私もこの本読もうと思ったのはそのラジオきっかけですよ^_^!小川洋子さんの本読んだことない(^^;けど、藤丸さんとのやりとり含めてあの番組は2023/02/10 -
あの番組好きです♪(途中でポチってしまった)
ちなみに上野さんに手を出したのはNHKの100分de名著きっかけでした。あの番組好きです♪(途中でポチってしまった)
ちなみに上野さんに手を出したのはNHKの100分de名著きっかけでした。2023/02/10 -
akikobbさん
わぁ聴いてたんですね‼︎いいですよね〜あのラジオ!小川さんと藤丸さんのコンビで読めてない本も楽しく読んだ気になりますね♪...akikobbさん
わぁ聴いてたんですね‼︎いいですよね〜あのラジオ!小川さんと藤丸さんのコンビで読めてない本も楽しく読んだ気になりますね♪
100分で名著も気になる著者いっぱいですね。
読む読まないはさておき、自分の範疇に無かった読書できるの楽しいですね!2023/02/10
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二篇収録。突っ張った文体は女性ならではという印象。さくっと読めます。
「勤労感謝の日」
とある理由で自己都合退職をした38歳独身失業中の恭子は近所のおばさんの勧めで見合いをする。ここまでヒドイ男を前にすると、苛立ちを通り越して達観するのか。カイコ繭というビックリ例えに慄きつつ、何も解決はしていないけれど読後は不思議とすっきり。人間生きていればどうにかなる。
「沖で待つ」
同期・太っちゃんと「どちらかが先に死んだ場合、相手のHDDを壊す」ように約束する。太っちゃんと主人公は同志のような、すごく良い関係だなと思った。最後のやりとりは切ないはずなのに何故か微笑ましい。読んだ後にタイトルに立ち返ると、笑いながら泣きたくなる。 -
一気読みでした。
「勤労感謝の日」
社会の中で揉みくちゃにされ、でもうまくいかなくて、そんな狂おしい一人の女性の気持ちが、生々しく描かれていました。文章のスピード感がハンパなかったです。
「沖で待つ」
同期採用が同じ職場にいなかったので、「同期」という言葉が、とても新鮮に響きました。男女の友情が羨ましくもありました。
淡々と進む文章の中に、一人の人を想い慕う心があふれていてグッときました。
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ひじょうに好きでした
「勤労感謝の日」は、いろんな怒りや恥を抱えて鬱屈したユーモラスな無職の主人公の一日の話で、最後居酒屋のマスターとの会話がとってもよかった
「沖で待つ」は、恋愛ではなく、友情とも違う、同じ年に同じ仕事を始めた仲間という「同期」の不思議な関係性を描いていました、死んだあとに出てきてくれたのは、自分が死んで、相手のHDD破壊が遂行できなくなったから、やばいことなる前にやめときなというのを言いにきてくれたのかな
どちらの話も好きでした -
この人の文章、好きだなぁ。。。
ずっと前に読んだ数作はそれほどピンとこなかったけど、装丁に惹かれて手に取った近著『北緯14度』が思いのほかぐぐっと心に入り込み、別の作品も読みたくなった。
結果、上記の通り。
特にタイトル作の『沖で待つ』は何とも言えない余韻を残す。
映画でも本でも、"余韻を残す"作品は、私にとっては最上級のものです。-
2014/07/03
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