心にナイフをしのばせて

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163683607

感想・レビュー・書評

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  • 犯人は、逆にこの本の著者を 逆恨みしているのでは

    時期的に川崎の事件といえば、中学生殺害が嫌でも浮かんでしまうでしょうが、
    川崎の駅より南部(海側)の人たちとこの本の事件となっている東名高速周辺の
    人たちはもう文化圏が別。

    最近の川崎の事件は女子高生コンクリート詰め殺人事件の方のような
    いわゆるドキュンな集団が盛り上がってタガが外れちゃった犯罪の
    グループに属するとすると、
    この高校生首切り事件はその死体の扱いのショッキングさにおいて
    酒鬼薔薇事件と対比されるのはまあ納得であります。

    表紙のイラストが相まって、ノンフィクションでは変わった手法を使ったのが
    悪目立ちしてしまいもったいない、と思うのですが著者の奥野さんの
    お子さんが描かれたイラストとなると強く言えないですね。

    少年法というものに阻まれて、この本の多くは被害者家族のその後に
    焦点が当てられている。

    被害者の妹が語る

    兄はグループの中では一番いい子に見せようとするところが
    ある弱い人だから殺された
    という見立てはいいところをついているのでは。
    本当は被害者よりもそのグループの友人とされる人たちが悪質で、
    それが表に出てきてない、決して出さないという可能性があるかもなと
    思ってしまった。

    そう考えると被害者生徒はとにかくかわいそう、であるはずだが
    この本を読んでいると、被害者生徒の母親の偏執的なところ、
    お嬢様育ちでストレスを許容できず、被害者に自分の希望を
    全て委ねていたところが、被害者を苦しめ、それが加害者に何らかの
    影響が及んだのではないかと思えてくる。

    犯人は少年法のもと、前科扱いにはならず弁護士になり、
    親が払わなかった示談金のことを
    「金がないなら50万なら貸してやる」と被害者の親に語るほど、
    自分の起こしたことに対して悪いという意識はない。
    犯人の善悪の意識は「父親が了承したことは善、それ以外が悪
    という認識しかなく、一般的な善悪基準がない」と犯行後に診断されており、
    父親が払わなかったものは払わなくてよいと考えているのでは。

    こんな犯罪を犯し、一貫して自分が悪いという意識を持てない
    自己中心的感覚の人間が反省したり、相手の事を忖度することはできないはず。
    それは犯行後の精神鑑定でも言われていた話。

    酒鬼薔薇事件関連で読んだ本で、

    あれだけの事件を起こした人間が、
    正気というものを手に入れ、普通の人間の感情を手に入れたら
    即自殺するか発狂する
    という専門家の意見が印象に残っています。
    自分の犯罪、悪さには気づかず、ぼんやりとした認識で死ぬまで過ごすのでしょう。

    この本がきっかけで弁護士を廃業したという犯人は、逆にこの本の著者を
    逆恨みしているのではと思います。

    自分が相手にしたことは悪くなく、自分にされたことは過大に取るという
    基本構造は、弁護士になろうと変わってはいないでしょう。

    継続的に注意していきたいところです。

    しかし黒い福音でも描かれ(割と悪い組織よ)、こんな事件が起きて
    葬儀もさせてあげなかったこのサレジオに
    今でも子供を入れちゃおうと考える親がいて学校が成り立っている
    っていうのは宗教上の理由を除いたら
    親が両事件のことを知らないんですかね?ですよね?

  • 期待していた内容とは全く違った。というか少年法がある限り、未成年者が起こした事件の真相はわかりようがないし加害者側から書く事はできないって言うのがほんとのところなんだろうな。

    結局のところ、被害者の家族の事ばかりで。家族はこの本が出された事に納得できているのだろうかと思ってしまった。

  • 結局、大地震と同じくらいの頻度では起るものなんだな~って思っちゃった。
    だとしたら、未然に防ぐ方法はもちろん、きちんと被害者家族のケアについても、もう少し考えてもいんじゃないだろぉか。いろんなことが手厚くなってるんだしね。

    もちろん、加害少年の更生ってことで考えたら「被害者家族に謝罪が出来る人に」ってのが最低ラインなんだって思うんだけど、…でも、もし私がこの加害少年Aの友人だったら「ちゃんと償って、法的にも真っ白になったのに、自分が苦しくなったからって思いだしたようにタカるような真似するなよ」って、彼の為に怒ったかもしれない。

    「一方聴いて沙汰するな」で言えば、これは完全に被害者家族の側に立っての現実なんだってことは心に留めときたい。

  • 佐世保の同級生殺害事件をきっかけに読んだ。酒鬼薔薇事件の28年前に起きた、高校生首切り殺人事件を追った一冊。本書では加害者の生い立ちを探るのではなく遺族のそれからを追っているのだが、遺された人々の告白を読み進めるのは本当に辛い。後半には少年Aの現在の姿が暴かれており、その暮らしぶりと態度に驚きと怒りが込み上げる。
    もちろんこうして単純に怒りという感情を持つことが出来るのは、私が第三者で事件と何の関係もない立場だからというのは分かっているのだが、しかしながら現在の少年法や遺族への対応には違和感しかない。

  • ある日突然家族が残忍な方法で同級生に殺される。その後残された家族がどんな事を思い、どう過ごしてきたのかを描いている。これはノンフィクションと聞いて背筋が寒くなった。のちに更生(?)して地位を築いたA君。私は君を許す事が出来ない。少年法って何なんだろう。更生って何なんだろう。残された家族のケアは?色々と考えさせられた。

  • 図書館で借りました。

    レビューはブログにて。
    http://ameblo.jp/minori-0325/theme3-10032961603.html

  • 被害者家族の苦しみの過程を綴っています。結局、殺人の理由はわからないまま。今も被害者家族が苦しんでいると思うと、やりきれない。色々な罪があり、償いがあると思うけど、殺人の償いは一生続かないといけないんじゃないのかなと。
    あと、地元の話なのでたやすく思い描けてしまって怖かったです。

  • 加害者には心があると思えなかった。。被害者家族は心が破壊され、やりきれない。。こんな事件が過去にあったなんて。。

  •  被害者の妹目線で、被害者のその後の人生が描かれている。酒餓鬼薔薇事件の28年前に、高校生が同じような事件をおこしたもの。加害者は刑期を終え、弁護士になっており、被害者家族はいつまでも苦しんでいることと対照的。

  • 加害者Aが何を考えてるのかさっぱり理解出来なくてびっくりした。でも、この世界にはそういうさっぱり理解出来ない人が山ほどいて、いつそういう人から、自分や家族を傷つけられてもおかしくない、ということだけは忘れないでおこうと思う。

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著者プロフィール

奥野 修司(おくの しゅうじ)
大阪府出身。立命館大学経済学部卒業。
1978年より移民史研究者で評論家の藤崎康夫に師事して南米で日系移民調査を行う。
帰国後、フリージャーナリストとして女性誌などに執筆。
1998年「28年前の『酒鬼薔薇』は今」(文藝春秋1997年12月号)で、第4回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞受賞。
2006年『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で、第27回講談社ノンフィクション賞・第37回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
同年発行の『心にナイフをしのばせて』は高校生首切り殺人事件を取り上げ、8万部を超えるベストセラーとなった。
「ねじれた絆―赤ちゃん取り違え事件の十七年」は25年、「ナツコ 沖縄密貿易の女王」は12年と、長期間取材を行った作品が多い。
2011年3月11日の東北太平洋沖地震の取材過程で、被災児童のメンタルケアの必要性を感じ取り、支援金を募って、児童達の学期休みに
沖縄のホームステイへ招くティーダキッズプロジェクトを推進している。
2014年度より大宅壮一ノンフィクション賞選考委員(雑誌部門)。

「2023年 『102歳の医師が教えてくれた満足な生と死』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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