1976年のアントニオ猪木

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163689609

感想・レビュー・書評

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  • アントニオ猪木にリアルもフェイクもない

  • そうだったのか。

  • 2月ルスカ戦、6月アリ戦、10月パク戦、12月ペールワン戦。1976年に猪木が戦った異常ともいえる4つの試合は、格闘技を変えた。世界各地に試合の当事者を訪ね歩くことで見えた、猪木の開けた巨大なパンドラの箱。

    アントニオ猪木の天才ぶりと出鱈目ぶりがよく描かれている。世紀の凡戦と言われたモハメド・アリ戦についてはこれまでも他の本で読んだことがあったけど、本作がいちばん真相に近いのではないか?いずれにしても1976年のこの4つの試合が今日までのプロレスに与えた影響の大きさに驚く。
    (B)

  • 50-6-2

  • プロレスの目的は観客を熱狂させ満足させることにあり、
    総合格闘技の目的は勝利にある。
    はっきりと境界線が引かれている業界なのにもかかわらず、
    日本では総合格闘技のプロデューサーに
    前田日明や高田延彦など元プロレスラーが名を連ねる。
    このあいまいさは何故だろうと著者は問う。

    それは著者曰く、1976年に行われた4つの異種格闘技戦によって、
    プロレスファンがアントニオ猪木の魔法にかかったからだと主張する。
    その狂気の年である1976年にスポットを当てたノンフィクション。

    編集者を経てるだけあって構成が素晴らしかったし、
    なにより面白かった。
    随所に相手を突き放すような
    ノンフィクション作家ならではの視線があり、
    プロレス業界の中にいる人間では描けない文章だと思った。

    猪木はモハメド・アリになりたいんだな。
    外交にしか興味がなさそうだし。

  • この本の作者の柳澤さんに原稿を依頼する機会が最近あったので、久しぶりに読み返してみるが、面白すぎて夜を徹して一気に読み終えてしまった。これは文句なし五ツ星のノンフィクション。

    いまや世界的に普及した異種格闘技、総合格闘技、ないしバーリトゥドという格闘技のジャンルは、1970年代のアントニオ猪木による一連の異種格闘技路線と、明治初期に講道館の前田光世がブラジルに渡りエリオ・グレイシーに柔術を伝授した2系統が系譜であり、どちらにしても日本が発祥である。そして、猪木の路線が"大きな物語"であり、グレイシーの系譜が"地下水脈"となって、90年代~2000年代にそれらが合流して、とてつもない大河に変化する。

    この本は、天才プロレスラーであった猪木が日本や世界を巨大な幻想に巻き込んだ一連の話を、1976年というたった1年に凝縮して取材しぬいた渾身のノンフィクションである。

    何かおもろいかといえば、なぜ猪木がその路線を取るに至ったのかという理由。結局、ジャイアント馬場に対するコンプレックスの克服のため、プロレスのジャンルを超える必要があったということ、そして超えるための最大のアイコンがモハメッドアリであり、アリが猪木以外のプロレスラーと二度とやらないためにガチンコを仕掛け、結果として、当時のプロレス、格闘技ファンでは到底理解できない異様な試合となった為、興行的には大失敗、借金を背負ってしまった猪木は破れかぶれの思いの中で、韓国のパクソナン、アクラムペールワンに対して、めちゃくちゃな試合を展開して両者の目に指を入れ、腕をヘシ折り、その地におけるプロレス興行を崩壊させてしまった。。

    のちに猪木が取る一連の破壊的行動の萌芽がそこには見て取れるし、当時まったく評価されなかったアリ戦は20数年後にUFC、グレイシー柔術の登場により伝説の試合として昇華していく。このあたりの経緯が実にスリリングかつリアルに描かれている。

    この本では、特に後半においては、猪木のめちゃくちゃさ、悪さをあげつらいまくるわけだが、結局のところ、読めば読むほど猪木の天才さ、妖艶さが伝わり、読者を魅了して止まない。

    そして、本の終わりは、以下の文章で閉められる。

    「巨大なる幻想を出現させ、観客の興奮を生み出すのがプロレスラーであるならば、アントニオ猪木こそが世界最高のプロレスラーであった」

    いまでは、「元気ですかー?」の変なジイさんになってしまった猪木だが、そこには我々が魅了されて止まなかったアントニオ猪木が描かれています。

    プロレス好きでなくても、エンタメが好きな人であれば、超オススメの本。

  • プロレスに興味もなく、アントニオ猪木は名前と顔を知っている程度の知識しかありませんが、おススメされて読んでみました。
    プロレスに関してろくに知識のない私ですが、時々はてなマークを頭に浮かべつつも、面白く読むことができました。

    この本をきっかけに格闘技やプロレスに興味を持ったかと言えば、うーんとあいまいに頷くばかりですが、著者の客観的な視点や入念な取材などの努力が伝わってくる内容で、この著者は素晴らしいと感嘆。
    興味本位の暴露本ではなく、質の高いルポタージュだと思います。

  • アリを含む猪木の異種格闘技戦の内幕を描いたノンフィクションです。編集者出身だけあって、非常に読みやすい文章です。今年のベストワンは確定です。プロレスは、シナリオのあるショーであるという構図のもと描いています。多分、そうなんでしょう。ただし、ときどき、偶然や感情のもつれにより、リアルファイトがあるそうです。アントニオ猪木の異種格闘技は、当初は、フィックス・マッチだったそうです。感情のもつれから、意図せざるリアルファイトになったと指摘しています。真実はわかりませんが、そうだったかもしれないと思わせる説得力があります。また、前田、高田は、リアルファイトにひとかけらも興味がないそうです。本当でしょうか。そうだとすると、残念です。タイガーマスクに対する評価が高すぎるきがします。

  • プロレスとは?が良く分かる渾身のノンフィクション。
    プロレスに少しでも嵌ったことがある人間なら間違いなく楽しめる。

  • 題名から1976年ちょっと後くらいに書かれた本だと思い込んでて、後付け見たら2006年初版と最近で吃驚。最近書かれただけあって凄くよくまとまっている。アントニオ猪木の凄さ、破天荒さ、カリスマ、天才を知るには、この本は欠かせないかも。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒。文藝春秋に入社し、「週刊文春」「Sports Graphic Number」編集部等に在籍。2003年に退社後、フリーとして活動を開始。デビュー作『1976年のアントニオ猪木』が話題を呼ぶ。他著に『1993年の女子プロレス』『1985年のクラッシュ・ギャルズ』『日本レスリングの物語』『1964年のジャイアント馬場』『1974年のサマークリスマス』『1984年のUWF』がある。

「2017年 『アリ対猪木』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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