鵤工舎の仕事 長泉寺建立記

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163706108

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  • いわゆる「職人の仕事」ぶりを読むことができる本。鵤(いかるが)工舎が東北にある長泉寺の本堂建立でどのような仕事をしたのかについて、建物の大枠を建てた鵤工舎だけでなく、瓦職人や建具職人、壁職人、果ては建物の素材となる材木の職人にまで視野を広げ、著者によるインタビュー形式でその仕事の様子、どのような点に配慮したのか、どんな思いで取り組んだのかなどが記されている。

    個人的に興味深かったのが、壁の塗り方と建具の作り。このぐらいの建物になると、壁には江戸時代などに本として使われていた、文字の書かれた古紙を貼り付けているようで、そのほうが和紙の水分が抜けていて適しているとのこと。さらにその上に貼っていく紙と糊にも丁寧なこだわりがあり、まさに職人の世界、という感があった。
    建具も、障子の合わせや見栄えを考え、ごくわずかな木材の色や風合いの違いを考慮して、正面の庄司として使うもの、脇のほうで使うものをきちんと区別して作っているという記述があり、職人はそこまで拘っているのか、と驚かされた。

    他にも、瓦職人のこだわり、鵤工舎の建物のデザインのこだわり、材木職人の木への思い入れなど、見どころはたくさん。これまで、観光でいろいろな寺社仏閣をなんとなく見てきたが、その一つ一つに数多の職人のこだわりと技術の粋が詰まっていたんだな、ということを再認識させられた。

  • 素材である木の良しあしや基礎、瓦など各プロフェッショナルへのインタビュー。
    表具師や左官、建具などの方の話も聞ける、貴重な経験だった。
    建築の構造・各名称を調べながら読み進め、建築について興味をもつことができた。初心者向きではないものの、調べながらであれば何とか読み進めることができ、かつ教養が深まると思う。
    特に瓦の章では、高温で焼き上げた瓦は一枚いちまい形が微妙に違い、その組み合わせで遠目から模様を作り出すのは凄い技術だと感じた。今後、寺院に訪れた際は屋根にも注目したい。
    また目の錯覚を利用し、屋根や柱に微妙な傾斜をつけ、きちんと真っすぐに見える工夫もしており、建築の奥深さも読み取れた。

    また建築の知識がある程度身についたら、是非再読したい。

  • 長泉寺本堂建立を具体例として鵤工舎の仕事を協力職人や仕入先も含めて聞き書きしたインタビュー集。

  • 宮大工がお寺の本堂を建てる話なんだろう、と漠然と考えて手に取ったが、その通りの内容である。
    棟梁に始まり、材木屋、基礎工事屋、表具師、左官、建具、屋根瓦とそれぞれの職人に対するインタビュー形式で話は進む。
    鵤工舎というのは、初めて聞いたのだが、どうも法隆寺最後の宮大工の後継者が率いる職人集団のようだ。

    基礎屋さんである森さんの話にでてきた、
    『コンクリートの寿命はだいたい百年かな。<略>ただ地中海のコンクリートは、ものすごい昔から使われてきたんです。』
    っていうところは、以前読んだ「古代世界の超技術」にでてきたローマン・コンクリートのことであろう。
    木造の本堂の寿命が数百年であることを考えると、やはり現在の技術である鉄筋コンクリートも、昔の技術にはかなわないようだ。

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著者プロフィール

1947年秋田県角館町(現仙北市)生まれ。作家。東京理科大学理学部応用化学科卒業。アウトドア雑誌の編集に携わるかたわら執筆活動に入る。小説で芥川賞候補4回ノミネート。『木のいのち木のこころ』『失われた手仕事の思想』『手業に学べ』『大黒柱に刻まれた家族の百年』など、聞き書きによる著書を多く著す。2003年に絵本『なつのいけ』(絵・村上康成)で日本絵本賞大賞受賞。1950~60年頃の子どもたちの生活を描いた絵本『おじいちゃんの小さかったとき』(絵・松岡達英)がある。他に『正吉とやぎ』など。

「2022年 『少年時代 飛行機雲はるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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