- Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163723402
作品紹介・あらすじ
精神分析、生物学、文学、哲学をめぐって、第一線と語りつくす。川上未映子の思考の軌跡。
感想・レビュー・書評
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川上未映子さんの対談集。
すごく面白かった。
対談を読むといつも感動するのは、向かい合って(きっと)話している2人が同じ言葉を共有して通じ合っていることの不思議。
そして、いつも話しているはずの日本語なのに、私にはその言葉のほんの一部しか分かった気にもなれないということ。
それにも関わらず、交わされる言葉にドキドキする不思議。
本当に面白いなぁと思う。
特に、福岡伸一さんと穂村弘さんとの対談が良かった。
人間は蚊柱に過ぎないという話。
神様の初期設定に抗いたいという話。
考えたこともないような新しい視点を覗けたような気がした。
残念だったのは『ヘブン』が未読だったので、永井均さんとの2つめの対談がちゃんと楽しめなかったこと。
『ヘブン』を読んでからもう一度読みたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
川上未映子の対談集 7年程度の前のものなので現状とは異なり(出産した?)現況の気持ちは変化したのでは?感あるが、作品創作のこと、目指すもの等が彼女なりの個性(感性」に基づいていることがよくわかる。特にひらがなの使用が目での印象によるとの指摘(音ではなく)はその感性に興味(好感?)が持てた。できれば今時点での対談時との感性の異なった部分(変化した部分)を書いてほしい。
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作家・川上未映子の対話集。精神分析、生物学、文学、哲学などをめぐり、6人と語り尽くす。
川上未映子の感受性と知性にどうしようもなく憧れてしまう一冊。
・女性について、その身体性
川上未映子の文体、文学的主題にある種の身体性が含まれているために、この対話集の中でもそれについて繰り返し語られています。
生物としての構造的に、女性は男性よりも自分の身体に対して他者性を感じるし、身体を描くことができる。だから女性の方がヘテロセクシズムから自由である、と。女性は「他者から欲望される主体であるための知識を身につける」ことを要求されている。ふうん。
ていうか、松浦理英子の話を聞いて(読んで)、性を超越したいという願望の女性一般に対する普遍性を改めて思い知った。これも女性が身体性を持つが故なのかな?女性とか男性とかに意味を与えすぎないでいたいというその気持ち、本当にわかる。
・主語の無い世界へ
上記に関連して、性別はもちろん、もう個体と個体との間に差異があるのさえ嫌だと。主語の無い世界。
・絶対性を希求する
これで個別ではなく全員の全表現で、っていう、川上未映子が全体性を感じてて、それにもびっくりしちゃったんですけど、なんかほむほむの表現があまりにも素敵で。宇宙人がやってきた時のために、っていう。こんな風に愛らしく物事を表現出来る人がいるなんて本当に素敵だと思った。
・「ヘヴン」の解釈
すっきりした。コジマが僧侶のようになってくこと、「僕」の友情だとか、あの小説から感じ取られることがはっきり言語化されて、なおかつあの小説がその言語化に絡めとられないものをわたしに残しているからこその「すっきり」であれる、その喜びたるや。
この本から得たものはまだまだたくさんありますがまあこのへんで。最初から死ぬってわかってて生きるって、暴力的なシステムだなあと思った、という、その感受性。こんな風にあらゆることをするどく感じ取って、考えて、生きている川上未映子はほんとうにすごいなー。 -
「からだ・ことば・はざま」と題された、多和田葉子との対談が面白い。漢字の「以」を初めて見たときに、ものすごい力の間に何かが浮かんでいるイメージ、たまらなく運動中みたいな感じがあって、この字を好きになった、というところや、「身体と頭のふたつに分けたくない気持ち、形而上、形而下と分けるのではなく、その真ん中の混ぜ混ぜになった形而中を私たちはどうやっても生きているんじゃないかという思いがあるんですね」というところ。言葉、文字、読み、リズム、意味、いろいろなものを組み合わせて、あれこれ実験しているようなところが、川上未映子の書くものの魅力。
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自分が今この形になっているのが心地よい、自分の編成が話している相手によって変わる、でも変わりきれない余りがある話が好きだった。
うれぱみん。 -
六つの星星
(和書)2010年06月06日 22:51
川上 未映子 文藝春秋 2010年3月25日
言葉のやりとりが興味深く感じた。
対話者もいい。
読んでみたい本が増えた。特に多和田葉子の作品は読んでいないので是非読みたい。
『ヘブン』は予約してあるから楽しみ。 -
p.2010/4/8
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「方言には身体性がそなわっている」や、
p141-142の
「読書は自分の知らないうちに出来上がってしまっている遠近感を捨てて、
更新する力を持つものだと思います」の一文に深くうなづく。
著者の「蚊柱」のたとえがとても秀逸。
人間は細胞の集合体であり、
言ってみれば蚊(細胞)が集まってできた蚊柱みたいなものだとしたら、
その蚊柱には蚊柱としての意識があるのか。
人間の細胞は日々生まれ変わる。
一説には人間は60兆個の細胞で形成されていて、
人間の血液は120日、肌は28日、
筋肉や肝臓は60日、骨細胞で90日など。
見た目には変わらない人間の体は、
細胞レベルでは約5~7年で
ほとんど入れ替わっているという事実。
変わらないようでありながら、ほぼすべてが変わっている。
それでは、過去の記憶はどこにいったのだろう、
と不思議な気持ちになる。
福岡伸一さん曰く、
人間の記憶とは、脳のどこかにビデオテープのようなものが
古い順に並んでいるのではなく、
想起した瞬間に作り出されている何ものか。
つまり過去とは現在のことであり、懐かしいものがあるとすれば、
それは過去が懐かしいのではなく、
今、懐かしいという状態にあるにすぎない、とのこと。