- Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163752006
感想・レビュー・書評
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「罪の声」を読んで興味を持ったので。
警察が犯人を捕まえられなかった言い訳ばっかりしてるなあ、とも読めるし、でもあの時代と、警察組織の仕組みを考えたら仕方がないのかなあ、とも読める。
職務質問手どのくらいの権限があるのかわからないけど(対象者が拒否できるのかとか)、キツネ目の男にはやっぱり職質かけとくべきじゃなかったかと……。
実際にその目で見た捜査員たちの後悔が切ない。
最後の方に当時の警察が「戦時中の軍部みたい」という感想があるけど、私も全く同じことを思っていました。
海軍の本を読んだ時と同じ気持ちになりました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
何よりも感じたのは、その後の科学操作や無線機器の進歩。
これがあったら、この事件の様相も、きっと大きく変わったはず。 -
〈図書館本〉
約30年前の未解決事件を当時の捜査員の証言から立体的に検証したNHKのTV番組の完全版。広域捜査の難しさや組織捜査の歯がゆさがリアルに綴られている。『あの時、職質していれば…』というが、誰の判断も間違いではないと思う。 -
警察庁広域重要指定114号。捜査対象は12万5千人、関わった捜査員は
述べ130万1千人。
1984年の江崎グリコ社長の誘拐から始まった一連の食品会社恐喝事件で
あるグリコ・森永事件。犯人の逮捕に至らぬまま、2000年2月13日に
すべての公訴時効が成立した。
2011年7月にNHKスペシャルで2夜連続で放送された番組は、当時の
捜査員たちの話を元にした再現ドラマの部分が好きになれなかった。
本書のように生の声を収録した方がいいな。取材者の「苦労しました」
みたいなところは興醒めだけれど。
非常に特異な事件であった。企業やマスコミに送り付けられる犯人からの
脅迫状や挑戦状。女性や子供の声を録音した電話。そして突然の終結
宣言。
警察関係者のほとんどが無念の思いを語っている。犯人がごく近くにいた
時が何度かあった。もう少しで事件の核心に迫れる場面もあった。それが
ことごとく微妙なずれの為に失敗に終わっている。
私は今でもこの事件には興味をかき立てられる。このテレビ番組の為に
電話での女性と子供の声を新たに音声分析をした結果には驚きだ。
30~40代とされていた女性の声は中学生くらいの女の子。同一人物と
されていた男の子は、学齢前の複数の男の子との結果が出ている。
犯人は複数。しかも現金受け渡し場所の指示の電話に子供さえも使って
いる。なのに犯人たちは仲間内のほころびも見せず、一方的に終結を
宣言して闇に消えた。
かい人21面相。そしてキツネ目の男。元捜査員のなかにはキツネ目の
男を今でも夢に見る人もいる。
全日本国民を人質に取り、「劇場型犯罪」という言葉を生み、人々の
興味を引きつけたまま彼らはどこへ行ってしまったのか。
この事件に着想を得て書かれた高村薫の小説「レディ・ジョーカー」も
面白く読んだ。もしかしたら、この小説のような結末が現実に起こって
いるのかもしれない。
な~んてね。笑。 -
こんな読み応えのある内容だったのに、番組化したあれは一体なんだったんだろう。
無駄な談合記者クラブ目線のドラマ、新事実に割く時間の少なさ、捜査員へのインタビューシーンの短さ…どうすればあんな散漫な内容になったんだと思いたくなるくらいこちらの本はまことに興味深い構成でできている。番組を見て物足りないと思った方はぜひ読んでいただきたい。または番組をスルーした方はこちらを読んだ方が全然良いと思う。 -
未解決に終わらせた原因はどこにあったのか?
当時の捜査関係者に取材し、
追って行くうちに新たな事実が判明する。
放送も見ていたが、本になってより整理され理解しやすくなった。
当時まだ未体験だった広域捜査に直面しつつ、
結局、組織のヒエラルキーに逆らう事が出来なかった現実。
あの当時の捜査手法に間違いはなかったと言い切る幹部、
間違いだったと悔やむ現場。
関係者各々が、未だにグリコ・森永を引きずっているのがよく分かる。
未解決は、その事件の澱をずっと溜め続けてしまう
非常に厄介なものである。