幻影の星

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 65
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163810904

作品紹介・あらすじ

郷里の母から送られてきた、バーバリーのレインコート。なぜ?ここにもあるのに…。震災後の生と死を鋭く問う、白石一文の新たな傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。特に「スケーリング」の話は子供の頃からぼんやり抱いていた考えに明快な裏付けを与えてくれた。体の大きさが異なれば時間速度も異なる。犬や猫の短命を嘆くことはヒト時間で彼らの一生を計る愚を犯している。彼らもヒトと同じくちゃんと15億回の拍動を打ち、30億ジュールのエネルギーを使い切って死ぬのである。彼らの目に映る人間の人生はスローモーションなのだ

  • 2012年出版
    のためか東北地震、放射能など
    死生観

    印象的だったのは
    この世界に住む69億の民が百年後には全員死んでいる
    のところ

    最近デパートでの催事
    九州物産展で初めて食べて美味しさを知った
    梅ヶ枝餅のことも出てきて
    タイムリーだった

  • 久しぶりの白石一文先生作品でしたが、ちょっと分かり難かったですかね。いつもながら男女の繋がりや関係性で割とリアルでキツイ描写をフワッとした柔らかさを持った文体で紡いでいく白石節は健在なんですが、なにが言いたいことが伝わって来ませんでしたね。う~ん、この物語が良く分からないまま終わってしまった感が強くて不完全燃焼しています(笑)

  • 未来の出来事の写真が保存されたメモリーチップや携帯電話を、そうとは知らずに受け取った男女のストーリーと要約してしまうと、そこから漏れるものが多過ぎる。この未来から来たチップや携帯という部分以外は極めてリアルな現代の社会や世相を描いた小説と言え、東日本大震災による大量の死や放射能のリスクといったものを強く意識して書かれている。特に、人が外界を認知する方法とか、人にとっての死の意味といった点については、現象学的な観点を含めた哲学的切り口から掘り下げられている。
    しかし、本書は難解な小説ではない。むしろ、さわやかで、真っ直ぐに一生懸命生きる人に対するエールのようなものを感じる。もっとも、一言で説明できるほど単純なものではなく、だからこそ味わい深いのかもしれない。不思議な読後感に浸っている。

  • よかった。
    イリュージョン。
    ありえない話は基本好きじゃないんだけど、これはありそうな?気がしたし、あってもいいような気がしたからかなぁ。
    この人の書く男女は影があるというか、日陰の人が多い気がするけど、確かな愛情を感じるし、納得できる流れ。

    たぶん自分にはあってた本。

  • そうなるようになっていた。

    何故写真を取る必要があったのか、とか、なぜ、それをそのままトレースしようとしたのかとか、謎はたくさんある。
    わざと反発しようとしたらどうなったのか、とか。

    でも、そうしなかった。
    そうならなかった。

    それはきっと、そうなるようになっていたからなんだろう。


    それが運命というものなのかどうかは、よくわからない。

  • 白石さん特有のくどくどとした文章に辟易しつつも、なお読後感は良かった。作者の作品にしては珍しく癖のない爽やかな青年が主人公になっているせいだろうか。東京と長崎を舞台にし震災後の作者の死生観を余すことなく描いている重い作品ではあるけれど、武夫とるり子の恋愛作品として読むこともできる。
    二人が時を超えて再会する展開は、1Q84の天吾と青豆を彷彿とさせると感じたのは私だけだろうか。

  • そんな中でも健ちゃんのことばには救われた。

  • わたしにはちょっとむずかしかったです

  • この作品好き
    白石さんの作品は、好きなのと、んー?てのが、分かれる

  • 有りそで無さそで分かるような分からないような。でも少し納得してる自分がいたりする。

  • また奇天烈現象シリーズでした。
    そして主人公がもやもや考えるところが、よくわかんないけどいいのかもしれない。
    変な恋人堀江さんはなんなのか?確かにイリュージョン。
    途中唐突なルルドの話が何故か良かったけど、最後がまたいい。こういうことある。
    写真の意味に気づいて、るり子が現れるあたりから面白くなった。前半はもやもやとした幻影。後半は幻影がストーリーになって楽しめた。

  • 55頁より
    故郷は、人だけでできてる
    わけじゃない
    海や山や川、風や空気
    木や草や花だって立派な故郷

  • 初めて読んだ作家さん。
    ある日、自分が購入したコートとまったく同じものが母親のもとに届けられた。
    けれどアパートのクローゼットに、コートはある。
    送って貰ったコートのポケットから見つけたメモリにあったのは、自分が持っているデータとまったく同じ。
    ただ、最後のデータだけが違った。

    顧客から届いたのは彼女の携帯。拾ったという。
    携帯に納められたデータは自分のものとまったく同じ。
    ただ、最後の画像は見知らぬ男のものだった。

    ちょっと観念的な作品だ。

  • 帰省してもいないのに母から電話で「こっちに戻ってきてたの?」と聞かれたら??? だったろうな。
    さらに、ネーム入りレインコートを置き忘れている。
    え、自宅に同じレインコートがあるのに!!!
    ポケットに入っていたSDカードから、何か掴めそうなんだけど……。
    そんな夢みたいなことがあったらドキドキしちゃいそう。

  • ちょっとよく分からない本だった・・。
    数年後、またチャレンジしてみたい。

    共感した部分メモ。
    P145「大震災と共に何もかもが流動化してしまったのかもしれない。福島の原発はいまだに放射能を放出し続けているし、日本列島のいたるところで地震が頻発し火山活動が活発化している。これで人心が安定するわけも無く、案の定この国の政治や経済もふらふらしっぱなしである。」

    P148「確かに現在の福島第一原発の状況を見れば、赤ん坊や小さい子供たちを関東圏で育てるというのはなかなか厳しい判断だ。」

    P155「女性が見る生命と、男性が見る生命とは似て非なるものだ」

    P203「(低線量の放射線)どちらにしろ、そのような理不尽なリスクを僕たちが進んで背負う必要があるとは思えない。」

  • 混乱している。地に足が着いていない。当時はそんな時期だったのかもしれないと3年前を思い出す。

  • 時間と生死(生命)に対する固定観念を揺さぶる一冊。日常と思索の往来、堪能しました。白石さんの作品を読むと、誰かと語り合いたくなります。

  • 本の引用や解説めいた部分が多い。登場人物の独白ではなく、著者その人の考えだ。一応、女性が語り手になるときはそんな引用や解説は一箇所もない。それぞれの引用に意味はあるだろうが、軽く読み飛ばしてしまった。それでも、十分だと思う。
    未来からカメラのメモリーカードが届くところこら物語は始まる。今回は過去と未来の関わりがテーマで、根底には東日本大震災が横たわる。著者が一環して訴える「一瞬を生きる」というテーマに、あとは家族の大切さをはかとなく忍ばせる。ただ、途中から登場する2人目の主人公の意図がよくわからない。父が作った借金を払うために変態の経営者に囲われている。最終的にはきっぱりと決別する。「必要とされないことが怖かった」というのが、理由だろうが、過去ときっぱり決別し、新たに歩き出そうとするこの2人目の主人公の位置づけはどんなものなのかな。

  • これは何とも不出来なSF的ストーリー作品。
    途中までのパラレルワールド的世界がどう収束していくのか思いきや、あまりにいい加減な言葉「イリュージョン」の連発で誤魔化されてしまってはひど過ぎる。

    掲載された雑誌が雑誌なだけに、適当に力を抜いたのかもしれないけれど、竜頭蛇尾もいいところ。得意の性的描写も、極端に特殊な方向に走ると興味が薄れていく、、、

  • 自分のクローゼットにあるレインコート。それが郷里で見つかり、母親から送られて来る。なんともミステリアスな始まり方。

  • 東日本大震災を扱っていてとても不思議な設定を使ったとりわけ冷静な文章が頭に染みこんだ。

  • 難しかった、
    けれど風景や映像はやけに見えた。

  •  ちょっと期待しすぎた……?と思いながら読み進めるにつれて
    盛り下がる気持ちをなだめた。

  • 永遠のループ

    この世界は無限にループしている
    本書を読み終えてそんな感覚を覚えた

    白石さんの描く人物はどこか達観していて、
    世の中を斜に見ている
    こんな言い方をするとおこがましいが
    自分もそういう生き方をしているので、そんな登場人物たちとシンクロしながら
    読み進めることができる

    今回の主人公 武夫も達観しているにはいるのだが
    酒屋の老夫婦の人生を「素敵だ」と感じれるところに
    なんだかほっとする

    武夫とるり子の未来を見守りたい

  • 白石一文の震災後の作品。誰もがいつか死を迎えるこの世の中だが、時に思いもかけず予想より早く死を迎えてしまう人がいる。それを怖がったとたん世の中がイリュージョンとでも思わないとやりきれなくなる。死こそ不滅で厳然としてある事実だと思い知ったとき人との出会い、関係をどう捉えるかといったことがテーマになっている小説。自分はどう思っているんだろう。流されていないか?逃げていないか?ゆっくり考えてみよう。

  • 震災後に白石氏が考えたことを作品にしたという。未来のSDカードと携帯が表れ、男女の出会いを再現させる。ファンタージなところもあるがよく分からなかった。

  • 白石さんの作品は、時間があるときにじっくり読まないと、すんなり入ってこない。震災後に発表された今作は、多分にその影響を受けている。というか、この作品の背景に、震災についての白石さんの想いみたいなのがぎゅっと詰まっている気がしました。

    永遠に続く命。
    過去も現在も未来も(それは死後も)
    果てしなく続く幻の中の一コマに自分がただ存在している
    ということを実感。ありがちでいて、有り難い、白石さんらしい、
    深く考えさせられるお話でした。

  • 好きな作者のひとり。
    震災後に作家は何を考えるのか知りたかった。

  • タイムスリップ的な時間の織りなす不思議な出来事。結果的にはボーイ・ミーツ・ガールになるのだろうが、なるかも、で物語は終わっている。
    途中で出てくる白石一流の緻密な数字を並べた考察や、時空についての捉え方が面白いが、ややキツイ。
    物語の展開が面白そうだったのに終わり方があっさりしているので、何となく物足りない気分になった。いろいろ展開は自分で考えろということだろうが、もう少しベタでもよかったかも。

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著者プロフィール

1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋に勤務していた2000年、『一瞬の光』を刊行。各紙誌で絶賛され、鮮烈なデビューを飾る。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、翌10年には『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。巧みなストーリーテリングと生きる意味を真摯に問いかける思索的な作風で、現代日本文学シーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』など著作多数。

「2023年 『松雪先生は空を飛んだ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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