髪結い伊三次捕物余話 擬宝珠のある橋

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163904177

作品紹介・あらすじ

惜しまれつつ亡くなった作家の、人気シリーズ最終巻宇江佐真理氏がデビュー以来書き続け多くのファンを獲得してきた「伊三次シリーズ」最終巻。文庫書下ろしの「月は誰のもの」も収録。

感想・レビュー・書評

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  • 伊三次シリーズ最終作。
    もうこれで、宇江佐版の伊三次は終了。
    グイン・サーガのように、後継者が後を書き継ぐということもないだろうし、それを望んでるわけでもないのだが、やっぱり寂しい気持ちである。
    改めて、作者である宇江佐真理さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

    表題作「擬宝珠のある橋」は市井人情もの理想形と言ってもいいのではないか?江戸前の噺家さんに落語として語ってもらいたような味わい深い1作だと思う。

  • 2015年に「オール讀物」に掲載され絶筆となった3話に、2014年の文庫書き下ろし「月は誰のもの」、2014年のシリーズ10作目の文庫化に当たっての所感を追加した単行本化で、シリーズ15作目の最終巻。

    表題作の第2話「擬宝珠のある橋」はいかにも宇江佐さんらしい、人情味あふれる話。
    伊三次が得意先にしている店の改築を請け負っている大工の棟梁は、幼い子を抱えた者どうしで再婚し仲むつまじい所帯を持っていたが、その連れ合いの”おてつ”が二昔も前の伊三次の得意先にいた女中だった。前の亭主に駆け落ちされ、蕎麦屋を営んでいた義父母に説得されて今の縁を得たが、義母を亡くして店をたたみ気落ちして甥の世話になってなっている義父を案じていた。
    それを知った伊三次が屋台の蕎麦屋をやらせてみたらと勧め、一人前の大工になっている孫たちが屋台を作ってやると、義父は元気になってそばを作りだしたので、伊三次はお文と娘のお吉を連れ祝儀を持って食べに出かけた。愛想のない義父だが、伊三次を見詰める目が違っていたことをお文は見て取っていた。

    著者にとって、デビューから書き続けてきたこのシリーズにはやはり特別な思い入れがあるようで、「髪結い伊三次」を書いただけで満足だという。「人が人として生きていく意味を追求したい」のだと語っていて、つきあい続けてきた読者にとっては、感慨ひとしおの言葉である。

  • L 髪結い伊三次捕物余話

    悲しい。もうこのシリーズの新作を読むことができないのが。
    表題、擬宝珠のある橋。みんないいよ。そして泣ける。不破家よりも伊三次一家が染みるのは何故だろう。不破家もいろいろあって人柄がでてる家族だけど、なんだか思い入れがない。やっぱり伊佐次。月は誰のもの、はすでに既読の文庫書き下ろし作品。こうやってハードカバーで出るなんて粋だなぁ。ファンは嬉しいはず。 私は文庫が出るより前に読んでしまうので文庫のあとがきを読んだことがなかったけど、心に吹く風の文庫刊行時に書いたという宇江佐さんのあとがきが、作品を彷彿とさせる宇江佐節全開でうれしい。

  • 髪結い伊三次シリーズは、『竈河岸』が最後かと思っていたら、本作が出版された。直ちに購入したが、これが最後の最後かと、読んでしまうのが惜しい気持ちのまま、今になった(笑い)
    伊三次やお文他、登場人物たちにもう会えないかと思うと、愛おしい気持ちで一言一句を味わいながら読み終えた。
    「月は誰のもの」は、文庫本で既読だが、これもじっくり再読。
    文中、伊三次の述懐は、著者の思いでもあるだろう。「肝腎なことは苦難に直面しても焦らないこと、騒がないことである。徒に嘆き悲しむだけでは何も始まらないのだ。」
    著者の冥福を祈る。

  • ああ、終わってしまった。
    きちんと収まるところに収まった気もするし、伏線のままになってしまったこともあるのだけど。まるで連れ添った夫が、はたりといなくなったよう。

    いや別に所帯じみているわけじゃないのだが。市井の暮らしを細やかに書いているからか…。ゆれる伊三次さんだけでなく、お文さんの気持ちも私は読みたかった。

    女って。男って。
    人に惚れて添うってなんだろうってことや…。時代小説の面白さを教えてくれたシリーズでした。読めてよかった。

  • この巻で本当に最終なのですね・・。

    伊三次や、その家族、不破家の方々等、彼らの日々をずっと見守ってきたような感があるだけに、寂しい思いでいっぱいです。
    江戸情緒あふれる、このシリーズが大好きでした。
    宇江佐さんに感謝いたします。

  •  江戸で擬宝珠のある橋は、日本橋、京橋、新橋だけだそうです。宇江佐真理「擬宝珠のある橋」、髪結い伊三次捕物余話№16、2016.3発行。2015.11.7にお亡くなりになった後、刊行された作品です。「月夜の蟹」(オール読物2015.6)、「擬宝珠のある橋」(同、2015.8)、「青もみじ」(同、2015.10)、「月は誰のもの」(文庫書下ろし、2014.10)、「私の髪結い伊三次捕物余話」(「本の話」、2014.2)が収録されています。「青もみじ」が遺作になるのでしょうか。

  • 2021/12/24
    以前読んでいた。
    文吉のお父さんに巡り会えた

  • 今まで文庫本で読み続けてきたけれど、前作「竃河岸」と本作は単行本でしか刊行されていない。本作で最後のお話になってしまうとの事、思わず購入してしまいました。この人情味あふれる語り口、最後だと思うと辛い。
    シリーズの主人公、伊佐次と伊佐次を支える人達、特にお文は歳をとるにつれどんどん人情が濃くなってくる。
    子を想う、そして近隣の人たちを想う気持ちは強く伝わってくる。
    近い将来、伊与太と茜が結ばれることを強く願いたい。

  • 今になってこの髪結い伊三次の最終編が出ているのを、、読んでいる。

    「月は誰のもの」は、再読。
    「擬宝珠のある橋」 江戸では、日本橋と新橋だけと。
    頭痛のおまじないの願掛けの話も面白い。
    宇江佐氏の江戸時代の人情話から、色んな知識を得たことを思い出す。
    伊三次の子供伊与太が、お文の父親である海野のご隠居に「月は誰のもの」と、尋ねるシーンで「月は誰のものではない。独り占めしたのでは、世の中の人々がこんがるがるから、、、」と、説明するところなど、、、自然の物との関わり合いを、子供に教えている。
    宇江佐氏の江戸への執着は、この時代の現実を目の前にして、皆仕事や、生活を全うする姿に、努力している人間の精神が、好きであったのだろう。

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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