佐藤優さん、神は本当に存在するのですか? 宗教と科学のガチンコ対談

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163904207

作品紹介・あらすじ

動物行動学VS神学、決着はつくか?キリストと遺伝子から、テロと浮気までわかる異色の対談!竹内:知の巨人の佐藤さんが本気で神を信じるのですか?!佐藤:では竹内さん、世界中に宗教がある理由は何だと思いますか? 竹内久美子さんが、欧米でベストセラーとなったドーキンスの『神は妄想である』も顔負けの、根本からの疑問をつぎつぎと投げかければ、キリスト教神学を思考の基礎とする佐藤優氏も一歩もひかず、近代精神の基本である一神教について解き明かしていきます。 実は年齢も近く、同じころに京都で学んでいた二人が、時にはケンカも辞さず、合計15時間超の対話を繰り広げました。竹内:「汝の隣人を愛せ」ってまさか世界中の人を?「利己的遺伝子」から考えるとありえませんね。佐藤:キリスト教はいい加減な宗教だし、聖書は矛盾がある。だから二千年以上、時代の変化に耐えてきたんです。 宗教と戦争、セックスと戒律、家族と子育て、「死」という概念について。「イスラム国」とイスラム教の整合性、同性愛を認めるか――面白がりつつマジメに学べる対談集です。【目次】第1章 神様はホントにいると思いますか?――宗教と科学のデスマッチ第2章 聖書っていい加減ではないですか?――天才イエスと悪人パウロの合わせ技第3章 愛する隣人って誰のこと?――血縁と非血縁のはざま第4章 人はなぜ浮気をするのですか?――パートナーと愛人の選び方第5章 将来のこと、動物に訊いていいですか?――人間と動物の合わせ鏡

感想・レビュー・書評

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  •  リチャード・ドーキンスの『神は妄想である』を話の入り口に、神学と科学の接点(というか衝突点)を軸に話が展開する対談集である。
     タイトルが示すとおり、竹内久美子はどちらかといえば聞き役に回っており、「近代プロテスタンティズムにおける神概念」について佐藤さんがさまざまな角度から説明するくだりが多い。
     
     「ガチンコ対談」という副題どおり、議論の火花が散る箇所も一部にあるが、全体としてはなごやかな雰囲気の対談だ。

     私のような門外漢から見ると、キリスト教と神のイメージがかなり変わる内容である。たとえば、佐藤さんの次のような発言に驚いた。

    《われら神学をやってきた人間からすると、ドーキンスの議論というのは、二十世紀の神学者カール・バルト以前の議論であって、すでに僕らから見ると解決済みとしか思えない。(中略)人間が自分の願望とか願い事でつくり上げてきた神様は、キリスト教が禁止しているところの偶像だということになった。プロテスタント神学のほうではね。》

     対談の最後にも、ダメ押しのように次のような発言がある。

    《フォイエルバッハが言うように、神学の秘密は人間学なんです。神が人間をつくったんじゃなくて、人間が神をつくった。だから人間の側からしか神について語れない以上、裏返して、人間学を高めて神学にしていくしかない。》

     竹内の話の進め方もうまく、読む前に予想したよりもずっと質の高い対談集だった。

  • 表題の答えや結論は導かれなかったものの、キリスト教の発展や現代の宗教の役割について勉強になった。私は竹内くみこサイドだが、「宗教を無くすとしたら、代替案はなにになるのか」という点は宗教を批判する際には考える必要のある点だと改めて思った。

  • 楽しい本。
    ヨブ記を読もうかと思う。

  • 決して面白くないわけではないのだが、二人とも頭が良すぎて芯を喰わずにその周辺をぐるぐる回りあうことに終始した、そんな読後感だった。狂言回しではないけれどもう一人頭の回転の速い人─頭が良いのとは違う─を入れて鼎談にすれば面白かったのではないか、そう思った。ある人にとっては神は本当に存在するのだろうし、していてもいいのだが、わたしにとっては存在しないし、それを否定されたくはない、その辺りが私個人としての見解である。

  • 「佐藤さんほどの知性ある近代人が、なぜ神の存在を信じられるのですか?」ヨーロッパ人口の1割以上が死んだ第一次大戦は理性の限界を痛感させ、宇宙のダイナミックな大きさ(地球の卑小さ)や遺伝子解析的進化論に「神」の介在する余地は小さい。竹内はドーキンスの『利己的な遺伝子』に沿って〈姦淫するなかれ〉の意義を詰めていく。佐藤はキリスト教の不振は認めつつも、「神は人間の心のなかにある」「神を作った人間を研究することが神学」と開き直る

  • 再読
    人間という複雑な存在を、 多面的に見るから面白い。最後の言葉・文章に納得。

    人間讃歌、この素晴らしき存在。

  • 佐藤さんは神学を通して、竹田さんは動物行動学を通して、結局は『人間』が何なのかを知りたがってる。

    ってとこにストンと腹落ち。

    「それは哲学でいうところの『存在論』」っていう佐藤さんの指摘のおかげで自分が気になる分野が少しクリヤになった感じもするなぁ。

    現代においても「神が存在する」と信じるインテリの方がどう考えているのか、から

    神に似せて作られたとする人間の動物的な側面をどう捉えればいいのか、まで

    対談形式に、浅くではあるけれども読みやすく進めていけるので仕事の合間に2日もあれは読めちゃいます。

  • クリスチャンの佐藤と無神論者の動物行動学者・竹内氏の対談は非常に高度な宗教学・科学の先端知識によるもので奥深さを感じた。ドーキンス「神は妄想である」という著書に影響を受けたという竹内氏が佐藤に挑むが、どちらが勝利という感じでもない。佐藤が「キリスト教はいい加減な宗教」という言葉が何度も登場し、佐藤なりの逆説的表現だとは思うが、キリスト教と縁の少ない人にとっては真に受けてしまうのではないか、と気になった。ダーウィンが娘の死をきっかけに無神論になったということは初めて知った。また米国のキリスト教はユニテリアンが多く、理神論と変わるところがないという佐藤の主張も誤解を招かないのかと気になるところ。「浮気」の章はほとんど下ネタ、猥談と聞こえてしまうようなお話しで、圧倒された!
    佐藤の主張ですごく説得力を感じた部分を引用する。
    「人間が自分の力を超えるものに対して想定する神は、人間の願望や畏れの気持ちが投影された いわば偶像ですよね。そういう神は、キリスト教神学でいう「神」ではない。にもかかわらず、いつの時代もそんな神が登場してくるために、そうした神という名の偶像をいかに排除するかが神学的な課題。世の中の人が考える神と、神学的な訓練を受けた人が考える神は全然違う。だから「そういう神は妄想でしょ」と言われれば、「はい、その通りです」というしかない。」

  • 動物行動学の竹内さんと元外務省主任分析官の佐藤さんとの対談。
    キリスト教の歴史等、いろいろ興味深い話が満載。
    アメリカの先住民族がほとんどO型である理由、アジアにB型が多い理由が病原菌による耐性だったとは!
    キリスト教を世界教団にまで押し上げたのはパウロで、イエスはユダヤ教の改革者だった。隣人愛は案外狭い範囲のことをさしているらしい。

  • 面白い。
    本書は佐藤優氏に科学者である竹内氏が神について対談する形式を取っているが、神学の入門編なのかも知れない。
    ポイントは3点。
    1-神は実体としているかどうかは神学上は問題でない
    2-ドーキンスの議論は既に20世紀に神学的に議論が終わっている
    3-佐藤氏も結局は幼少期の刷り込みによるもの

    本書のブクログの評価が低いので驚いて読んでみたが、好評の論評もある中でそもそも評点をしていない方が多かったと言うことと、ドーキンス未読や動物行動学が興味のない方が評点が低かったのかな、と評論の評論をしました。議論のベースが違うという意見はごもっともで、本書でそこまで到達出来なかったらのは確かにマイナスですが、神学と動物行動学に興味がある方ならば面白く感じれるのではないかと思います。まぁエッセイ感覚でサクッと読んでくださいという姿勢は装丁にも表れており、内容に合致していて非常に好感が持てました。挿絵も可愛いです。

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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