- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163904405
作品紹介・あらすじ
複雑化する経済を見通す鍵は「通貨」にあった。英一流誌の予測から、あなたの未来も見えてくる。この15年間に部数を155万部に倍増させたグローバルエリート誌、英『エコノミスト』編集部と、そのシンクタンク「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット」が、総力をあげて、日本、米国、中国の未来を、通貨を通じて分析・予測。・現在の世界経済の最大の問題は、米国が世銀、IMFへの責任を果たさないなか、オフショアドルの市場が膨らんでいることだ。ここには危機の際の「最後の貸し手」がいない。・世界の市場において人民元が台頭するのは確実だが、少なくともあと5年~10年は、円は重要な国際通貨としての地位を失うことはない。・アベノミクスの評価は総じて失敗。マイナス金利を実施しても融資は増えない。・2016年~2020年の間、日本経済の実質成長率は年平均1%。・TPPによる恩恵は2020年以降にならないとあらわれない。・人民元の国際化は、中国国内の完全自由化とトレードオフである。日本のメディアでは絶対できない徹底予測!【目次】■はじめに あなたの未来も見えてくる〈第一部 ドルの未来 責任を放棄した王者〉■第1章 ドル支配の限界とコストこの70年間、世界の金融・通貨システムに君臨してきた基軸通貨、ドル。だが、その力を支えてきた米国の経済力は、中国の台頭によって次第に弱体化している。この覇権のぐらつきによって、世界経済は急激に不安定化している。■第2章 基軸通貨が交代するときかつてポンドからドルに基軸通貨が移行した際、英国と米国は同盟国だった。一方で、今日、米国と中国は同盟国ではなく、互いの力も未だ拮抗している。世界の資本移動も複雑化している中、ドルから元への交代は起きうるのか。■第3章 ポピュリストたちの台頭米国は、IMF、世界銀行、WTOといったグローバルな経済的枠組みに責任を果たさないようになっている。その原因は、国内の中流層の没落とリンクした国内政治での左右両極のポピュリストの台頭にある。中道のクリントン大統領候補までが、TPP反対を唱える。■第4章 「最後の貸し手」がいないシステム急速に拡大している米国外のドル資産、オフショアドルの世界。米国以外の国は、このドル資産をもとに経済を運営している。だがそこには、危機に陥った際、国家や金融機関を破綻から救う「最後の貸し手」が存在しない。■第5章 ニューヨークを人民元取引のハブにするニューヨークとは、世界の主要金融センターで、人民元取引を支援する仕組みのない唯一の都市だ。しかし、「最後の貸し手」不在の金融システムにおける唯一の解が、米国が人民元もAIIBもとりこんで、再び世界の金融システムの責任を担うことなのだ。■コラム1 ドルに振り回される金相場〈第二部 元の未来 両刃の剣〉■第6章 人民元は基軸通貨になれるか?世界各地に着々と人民元取引のネットワークを築いている中国。人民元が国際化すれば、ドルは経済制裁など政治的影響力を振るう手段としての強みを失う。ドルを迂回する国際決済システムができあがるからだ。鍵は中国政府が国内の自由化をどれだけ受け入れるかにかかる。■第7章 市場全面開放というトレードオフ中国本土の消費者はBMWの自動車やグッチのバッグを買うことはできるが、BMWやグッチの株を買うことは許されていない。元を国際化しようと思えば、そうした国内規制を完全自由化する必要がある。しかしそれはそのまま共産党にとって多くの権限を手放すというトレードオフになる。■第8章 2016年の元安の意味を考える2016年、新年早々に世界を襲った同時株安。その原因は、中国が抱える「三つの問題」にあった。この八年間で10兆ドルもの債務を積み上げた中国企業は、加速する元安に怯えている。中国発のデフレが世界を襲おうとしている。■第9章 習近平のジレンマ民主化を達成せずに高所得国へ移行した国はない。このドグマに公然と挑戦するのが、習近平だ。習のとなえる「中国モデル2・0」は、ナショナリズムに力点をおく改革だ。が、経済の国際化による新貧民層の誕生と、成長の鈍化による中流層の不満が、不吉な影となり習を悩ます。■コラム2 悲願のSDR入りがもたらす思わぬ影響〈第三部 仮想通貨の未来 究極の基軸通貨か?〉■第10章 絶対に改竄できないサイバー上の公開帳簿詐欺の温床となったビットコインを、技術上のブレークスルーが救いつつある。サイバー上におかれる改竄できない公開台帳、「ブロックチェーン」だ。この技術は仮想通貨を、為替リスクのない信頼できる究極の基軸通貨にすることができるのだろうか?■第11章 仮想通貨の帳簿が世界を変えるゴールドマン・サックス、JPモルガンなど、名だたる大企業が導入に乗り出しているビットコインの帳簿「ブロックチェーン」。人類最大の発明とも呼ばれる複式簿記のように、この帳簿にも世界のあり方を変える力が十分にある。〈第四部 円の未来 黄昏の安定通貨〉■第12章 マイナス金利という実験2016年1月29日、日銀はマイナス金利導入を決めた。金融機関が資金をかかえこまず融資に回すよう期待してのことだが、しかし、忘れてはならない。日本で融資が増えていない理由は、融資資金の供給不足ではなく、そもそも融資への需要がないことなのだ。■第13章 アベノミクスを採点するエコノミスト・インテリジェンス・ユニットは、2015年12月、日本の経済成長率と消費者物価上昇率の予測を大きく引き下げた。それはなぜなのか。そして、アベノミクスやTPPは、私たちの未来に一体何をもたらすのか。
感想・レビュー・書評
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この本も年末(2016)の大掃除で部屋の片隅で見つけたモノです。私は日本人として、毎日のように「円」を使っていますが、私が社会人になったころと比較してみると以下のことに気づきます。
まず、円と他の通貨とのレートに大きな動きがあったこと。一番大きな影響を私に与えたのは、米ドルですが、始めて米ドルを意識したときは、120円でしたが、その後円高となり、80円となりました。その後、一瞬ですが140円を超えたこともありましたね。昨年は120円から始まって、一時期は100円を切りました。これに伴って、ほかの通貨(シンガポールドル、中国元)も影響していますね。
為替がどのように変化しても、私は日本人なので、どうしても「円」で換算してしまいます。円安になるならば、外貨建ての資産のほうが良いのだろうか等、悩ましいです。
さらに、これらとは一見関係のないような通貨、仮想通貨というのでしょうか。仮想通貨というものを昨年初めて、認識しました。これからは、国が発行するものではない通貨も使われていくことになるのでしょうか、これからの動きが気になりますね。
以下は気になったポイントです。
・アメリカの経済力の実力と金融面の影響力のギャップが広がりつつあることは、ほかの国にとっても問題を生み出す、ドル支配のコストがドル支配の恩恵よりも大きくなり始めている(p15)
・新しいテクノロジーが登場するたびに、アメリカがその王者になっている。クラウドコンピューティング、e-コマース、ソーシャルメディア、シェアリングエコノミーを土台として新時代にアメリカは堂々と君臨している(p31)
・IMFは新興諸国から十分に受け入れられていない、IMFは方針を変更して、極めて堅調と評価した国に融資枠を与えることにしたが、その対象は、メキシコ・コロンビア・ポーランドのみ(p51)
・多くの国は、いざというときに備えて、アメリカ国債を購入するという形で、莫大なドル建ての準備資産を積み上げている(p59)
・投資家の選択肢が、ゴールド以外にも格段に増えたのが、金が精彩を欠いている理由の一つ。株式、仮想通貨などに投資できる時代となった(p92)
・国境を越える取引の45%はドル建てで行われている、国際業務にかかわる金融機関は、決済・現金管理のためにアメリカの金融システムにアクセスする必要がある(p97)
・ドルが基軸通貨を続けられるのは、厚みのある金融市場、強力な法制度、透明な政治プロセスである。これらの制度に対する信頼が強いので、アメリカとその通貨が安全な投資先とみなされている(p101)
・中国の貿易取引と、対外直接投資のおよそ4分の1は、人民元建てに移行したといわれるが、この数字には、本土と香港の間の貿易も含まれる。本土・香港間の取引では、決済の半分が人民元建て、これを除くと、中国の貿易取引に占める割合は、10%に満たない。世界の金融機関の、用いているSWIFTの決済システムでは1%(p117)
・共産党は、2014年に、国家公務員の就任時に、憲法への忠誠を宣誓することを義務付け、学校で子供たちに憲法を学ばせ、毎年12月4日を「国家憲法日」とすることを決めた(p145)
・仮想通貨のブロックチェーンは、高度な数学と膨大なコンピューティング能力に裏付けられており、オープンであると同時に信頼性と安全性がある。どの時点で誰が台帳を更新することになるかは事前に予測不能、暗号技術を活用することで改ざんを防ぐ(p192)
・2018年までには数年間の円安時代は終わり、円高に進行しはじめて、輸入品の価格上昇に歯止めがかかる(p206)
2017年1月3日作成 -
2016/07/15:読了
アメリカは工業大国ではなくなったが、サービス業態こくであり続ける。ネットワークを使った新しいサービスは、すべてアメリカがトップである。
イギリスからアメリカに基軸通貨が移ったようには、元とドルの関係はいかない。潜在的な敵国であるから。
日本は黄昏の安定通貨である。
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という内容であるが、日本を再び日が昇る国にするにはどうしたら良いか... -
★2016年7月10日読了『通貨の未来 円・ドル・元』英国エコノミスト編集部著 評価A
イギリスのエコノミスト誌の編集部がまとめるドル、元、ビットコイン、円の将来に向けての課題と将来像を描く。
邦題は、円・ドル・元だが、章立ては、ドル、元、ビットコイン+付録で円という構成。
無理やり、円を付け加えた感じだが、最終章の円の予測はかなり確率が高いと思われる。
目次
1.ドルの未来 責任を放棄した王者
①ドル支配の限界とコスト
②基軸通貨が交代するとき
③プピュリストたちの台頭
④最後の貸し手がいないシステム
⑤ニューヨークを人民元の取引ハブにする
2.元の未来 両刃の剣
⑥人民元は基軸通貨になれるか?
⑦市場全面開放というトレードオフ
⑧2016年の元安の意味を考える
⑨習近平のジレンマ
3.仮想通貨の未来 究極の基軸通貨か?
⑩絶対に改鼠できないサイバー上の公開帳簿
⑪仮想通貨が帳簿の世界を変える
4.円の未来 黄昏の安定通貨
⑫マイナス金利という実験
⑬アベノミクスを採点する
<備忘メモ>
■現在の経済危機発生時には「最後の貸し手」が存在しない。
ニューヨークドル決済システム(CHIPS);加盟行5-6行を通しての歪んだドル取引
⇒オフショアドルの拡大=危機発生時には対応できない可能性が高い
・現在アメリカでは党派対立激化し、ポピュリストが台頭
・グローバリゼーションへの反感が高まっている
・金融界への不信からウオール街から政府要職への移動が困難に
■アメリカが金融面の影響力を政治的な武器に使う傾向が強まる
■いまだにドルのライバルはない。 ユーロ:将来に渉る存続の保証なし
元:金融市場の全面開放がなく、法の支配なし
■対策
米国主導の国際機関:国際通貨基金(IMF)、世界銀行、世界貿易機関(WTO)=改革必要
IMF:融資能力を3倍に引き上げ3兆ドル、自国拒否権の放棄(米国)
FRB:外国中央銀行への流動性供給を上限なしとする。 通貨スワップ交渉実施対インド・中国
■ビットコイン
ブロックチェーン=ビットコインの取引履歴をすべて記した分散型データベース(台帳)のこと
すなわちそれが信用を作り出すシステム⇒将来、企業や政府のあり方をも変化させる、世の中の作りを根本から変える可能性をもつ
通貨としてだけでなく、土地の登記、貴重品や美術品の権利登録などにも応用可能
■円
・2016-2020年の日本経済の実質成長率は年平均1%
同消費者物価上昇率は年平均1.1%
・自民党政権は盤石。ただしアベノミクスの全面的成功はない。
・金融政策では、需要不足が原因のため、マイナス金利でも資金の借り手は現れず。
・2%の物価安定目標は軌道修正の上、結局放棄となる
・財政政策では、消費税アップに踏みきれず、2020年の公的債務残高は対GDP比246.5%になる
・国民一人あたりGDPは近々に 米国と並ぶが、インフレ率、賃金上昇率は低く、経済停滞感は拭えない。
・2017年に貿易収支は黒字化し、為替は円高へ。2019年以降インフレ後退 -
エコノミストという経済誌は自分も読んでます。
非常に的を得て、的確であり、参考になります。
この本も非常にわかりやすく、
主要通貨の今後が書かれていますので、
中長期的な投資を行う上で非常に参考になりました。
為替の移動は大きな視点で行うことが大切です。
日々の動きに一喜一憂することが為替投資ではないのです。 -
ミルトン・フリードマン「貨幣の悪戯」
ドルが基軸通貨であることの恩恵=低利で借り入れができる。すべての地域で自国通貨建てで起債ができる。年間1000億ドルの恩恵。
欠点=最後の貸し手である必要があること。ドル相場が押し上げられる。
ジョンソン的伝統=ポピュリズム的な伝統。
ワシントン・コンセンサス=IMF、世界銀行の伝統的な手法。
2035年には米国債が不足する。
ドルは世界の所有物になる。
民主化なしに高所得国へ移行できた専制国家はない。
習近平の中国2.0による挑戦。
ブロックチェーンによるビットコイン。金融機関のコスト削減。
ブロックを更新すると7500ドル相当(25ビットコイン)。
アメリカの好景気と株高=金利高=ドル高要因。
世界の不安定=安全資産へ逃避=円高要因。 -
【日本経済とあなたの未来も見えてくる】英一流誌エコノミストが、世界経済・金融の未来を徹底分析。日本のために書き下ろす「円の未来」で二〇二〇年までの日本経済を予測。