さよなら、カルト村。 思春期から村を出るまで

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (141ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163905952

作品紹介・あらすじ

「お金の心配しないで、言われたことだけやってれば良いんだもん。楽だし私はずっと村にいるよ」「所有のない社会」を目指す「カルト村」で生まれ、過酷な労働や理不尽な掟に縛られた村の暮らしを受け入れて育ってきた著者は、なぜ自ら村を出たのか? 村で過ごした13歳から19歳までの青春期を描き、当時のマスコミを騒がせた村の実態に迫る、衝撃の実録コミックエッセイ。朝日新聞、毎日新聞、新潮45、TVブロス、アンアンなど、数多くの書評欄で取り上げられ、「その後の話が読みたい!」の声が殺到した話題作『カルト村で生まれました。』の続編。前作よりすごい、驚愕のエピソードが満載!思春期をむかえた村の子の毎日(音楽、男女交際、一般の本を読むことは禁止。男子の部屋も女子が掃除!)。「個別ミーティング」や内容を大人にチェックされる「日記」など、思想をコントロールする村独自の新たなシステムがスタート。結婚相手は年の離れたおじさん!? 村の「調整結婚」とは?高校へは行けず、朝6時から畑仕事や鶏の解体など厳しい労働の毎日。

感想・レビュー・書評

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  • 著者・高田かや氏が、いわゆる"カルト村"で過ごした青春期から、その村を出て自立生活が送れるようになるまでを描いたコミックエッセイ。書名の"カルト村"が気になって手に取ったが、修行や鍛練みたいなものがあるわけではなく、一つの独立したコミュニティでの生活が描かれており、特に嫌悪感みたいなものは感じなかった。いまの日本の状況を見ると、こうした"村"の方が生活しやすいのではないか、と思思ってしまった。

  • 前著『カルト村で生まれました』がたいへん売れ
    講演会やインタビューの依頼がきたし
    あちこちの書評に載ってしまったため
    親にバレてしまったのですが、
    親は喜んでいるのです。

    実は著者も「うーん、別に批判したい訳でもなく」と。
    つまり読者の私たちは「酷すぎる!」と思っていましたが
    著者は「暴露」「内部告発」のつもりではない
    ありのままを語っているだけ
    酷い目にあったとも思っていないんですね。

    そして私も。
    この続編は彼女の中高時代からやめるまでが描かれているのですが、そんなに悪くないのではないかと思いました。
    私は機能不全家族のなかで育ち、当時はそのことを知らなかった。
    だから中高時代に親と離れて寮生活を行うことに賛成です。
    やめるのも自由ですし。
    なんか楽しそうでいいなあと思いました。

    だんなさまとの出会いにはビックリしました。
    良い方と出会えて良かったですね。

  • 著者はとてもしたたかな人だと思う。
    前向きで、自分の意思を守る力があったから、幸せに過ごせているんだろうと思う。自分だったら嫌な思いをする度に、親はなんでこんなとこ入ったんだと恨んでネガティブにうじうじしてしまいそうだから…笑
    カルト村の生活や制度など、著者の分かる範囲でだけど丁寧に書かれてて面白かった。著者は自身の人生や村について中立に描いているが、ただ、私にはどうしても大人が楽するために子どもを搾取しているように見えてしまう。子どもじみた感想なのかもしれないが、両親が無責任すぎるんじゃないか?と何度か怒りが沸き上がって本を閉じてしまった。私だったら子どもが虐待と言えるほどの酷い折檻を受けていると知ったら、うかうかのんびり過ごしてられないけどなぁ…やはり村全体に子どもを軽んじる思考回路があるのか、時代もあるのか…いろいろと制度が改善されたと書かれてるが、その後どのような環境になっているのだろう。 

  • カルト村ってところに興味を持って読んでみた。
    この村って幸福会ヤマギシ会ってとこらしい。
    内容は思ったよりギスギスしてなくて主人公がそこそこ楽しく暮らしていたみたいなのであんまり嫌な気持ちにならずに読み終えたけどやっぱりこんな宗教団体みたいなところ、なくなったほうがいいと思う。
    大人が自分で考えて入っていくのは仕方ないとして、そこで生まれた子供とか自分の意思じゃないし、個人の考えを許さない方針みたいだし、親と一緒に暮らせないとか仕事させられてばっかりとか完全に虐待じゃんって思った。
    同年代の子供と密に生活出来るのはいいことかなー。でもほんとそれだけだよ。やっぱこういう場所は存在しちゃいけない。

  • 前作の『カルト村で生まれました。』の続編。
    中等部~村を出る19歳までを描く漫画エッセイ。

     「カルト」といっても何か信仰があるわけではなく、社会主義(?)的なきまり(個人では基本、物やお金は持たず、村の共有財産として食品、物の管理を行う等)で運営される共同体(村)で2世として暮らす少女の過去話。
     村は全国各地にあり連携をとりつつ生活しており、時期的に平成初期のようなので、今もまだ運営されているのかなと感じられる。

     前作の幼年期~初等部の村から配置換えされたことと、精神的にも成長して慣れが出てきているので環境的には良く感じられるようになったのだろうとは思うけれど、資本主義的な考えで生活してきた私とは、彼女の夫(作中でいう『一般』)と同じくギャップを感じた。
     分業して共同体全体で物事を見る村側からの利点も確かに分かるけれど、有無を言わせぬ労働や(しかも子どもの頃から!)、男女の役割的区別、精神的にはみ出すことを許さずそれに対する罰など、旧時代的な考え方がそのまま引き継がれており、また、『一般』からの影響を受けないよう、一般の本やTVの禁止、教育機関に通わせない等の村の根回しが、『一般』の各自自由を保障された環境で育った私には気分が悪い。
     村の仕組みとして『考えなくても任されたことをやっていれば全体がうまく回してくれる』という考えが『仕組みを変える(改善を含め)新しいことを許さない』ということにもつながっているのかなと思う。
     もちろん作者個人の性格を踏まえた行動や、彼女からみた村の実態を映したエッセイであり、彼女自身、村を批判する意図はないという発言もあり、別視点から見たら違く見えるところもあるのだろうが、ひもじい思いをしてズルや盗みをしたり、疑問を抱いたりしているところを見ると、村の在り方は見直す必要があると思う。
     衛生的におかしな面やけち臭い面もあり、せめて村がいい在り方として存在しようと思うなら、村人を大切にする努力を怠るなと思う。

  • 原始共産主義的な社会を目指すカルト団体、ヤマギシ会で育った女性の自伝的エッセイ漫画。子供時代から村を出るまでの事が描かれている。

    この漫画に共感する人がたくさんいるのは、村の批判をするでもなく、悲惨さを訴えるでもなく、著者が子供目線で村での思い出を素朴に描いているからだと思う。子供らしさ満開で面白いんだけど、心にチクチク刺さる場面がたくさんある。

    教育は中学校までで、本は村セレクトのもの以外禁止、子供も朝から労働でちゃんとしたお休みは無し、お給料も無し、結婚は村で決められた10歳くらい離れた人とする。

    こんな状況でも、外部の人間が想像するのと村で住んでいる人の気持ちは結構違うみたいで、村の批判がされ始めたとき、「世間が言うほどうちら悲惨じゃないよね」とう感想や「批判をネタにして遊んでいた」という話は、内部の人の証言として貴重な気がする。

    同じヤマギシ会を扱ったルポの『洗脳の楽園―ヤマギシ会という悲劇』を随分前に読んでいて、その中で精神科医の斎藤環氏が言っていた、「痛みの欠如」という話がとても印象に残っている。

    宗教やら思想やらを熱心に信じて、それを実践している人が、痛みを分からなくなってしまっているという話(だったような気がする)

    多分これはそういう話で、理想とか正しさとか色々あるんだろうけど、人間ってそれだけじゃ無くて、色んなもんから出来てるんだよという事だと思う。

  • ①と続けて読んだが、読後の疲労感はこちらのが上だった。

  • 特定の神様を信仰するわけではないが、外界から極力遮断され特定の思想を植え付けられたカルト村で育った著者が思春期から外に出るまでの話。

    彼女は村自体には特に不満はなく、一見して自分の意見をもっているようには見えないが、時々強いこだわりを見せる。そのこだわりと違うことを指示されるととことん反発する。それが村を離れるきっかけになった。
    思ったより簡単に抜けられたようだったのが意外。

    小さな村で育ち中学からは一番大きな村へ配置されたり、両親が村を出るタイミングと重なったり、出会い系サイトで出会った人がいい人だったりと、彼女自身の気質に加え運の強さがあるのではないかと思ってしまった。

    旦那さんのツッコミが疑問を代弁してくれているのでモヤモヤ感は前作より少なかった。
    年頃の子供たちが集団で暮らす楽しさはわかるが、それは親に甘えられた子供時代があってこそだと思う。
    全てがおかしいことではないだろうが、やはり理解できない部分は多い。
    それでも知らない世界を垣間見れたのは良かったと思う。

  • 暴露本のような過激さや、「私の青春を返して!」的な激しい主張はないので、「へー」くらいの感じで読めます。絵もほのぼのとしていて可愛らしいし。

    カルト村での暮らしは、想像していたよりはまともというか・・・長所もあるんだなぁ、と思いました。
    子供の時から働いていたり(しかも休日らしい休日もなく)、個人の意見や自由が認められないのは異常だけど、自分で決めなくてもいい=楽、と思う人にとっては意外と生きやすい環境なのかもしれないですね。実際、著者も違和感の正体に気づくまでは「ずっと村にいる」と公言していたようだし。

    でも、カルト村で育った子供たちは妙に聞き分けがよくて個性が弱そう。
    こういう人間を増やしていくことが平和や幸福への道、と言うなら、やっぱり違う気がする。

  • 続いてこちらも読了。

    相変わらずすごい仕組みの村に驚愕。
    このやり方って、作者は何だかのほほんとしてるけど、完全に洗脳だよなあってのがいっぱい。
    やっぱり生まれた時から村にいる子だと、それが当たり前だから違和感ないのかなあ。

    ミーティングだかいうのがすごく気持ち悪い。うちの親はそんなとこ入んなくて本当によかった。

    男子の部屋も女子が掃除、おひつのそばには必ず女子が座って給仕とか、その教えが古臭くてむかつく。
    批判されたらすぐに休日取り入れたりするのも「柔軟」っていうかさあ……。

    すっごくモヤモヤしながら読んでました。

    • くんたろうさん
      私も気になってました。やっぱりそんな感じなんですね。それにしてもこの本少し話題になったようだけど、一瞬で消えたように思えるし、マスコミ系はま...
      私も気になってました。やっぱりそんな感じなんですね。それにしてもこの本少し話題になったようだけど、一瞬で消えたように思えるし、マスコミ系はまったく触れてないようだし、何か大きな力(圧力)でもあるんですかねえ。そう思えばこの出版自体がものすごい挑戦だったのかもしれないですね。
      2017/03/19
    • oyumyさん
      くんくんさん、コメントありがとうございます。
      子供だった著者目線だから仕方ないのかもしれませんが、この村の根本的なところが語られてない気が...
      くんくんさん、コメントありがとうございます。
      子供だった著者目線だから仕方ないのかもしれませんが、この村の根本的なところが語られてない気がして、どうしてもモヤモヤしてしまいます。
      これを読んだ人によっては「いいなあ」と思っちゃう人もいそうで……。
      2017/03/29
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著者プロフィール

唐戸俊一郎(からと・しゅんいちろう)。1949年、福岡県生まれ。1968年、東京大学入学、1977年、東京大学理学博士。1989年、アメリカに移住。ミネソタ大学教授を経て、現在イェール大学教授。地球惑星物質の研究を通して地球や惑星の起源やダイナミクスを理解することを目指し、ミクロとマクロを結ぶ学際的な研究を続けている。専門論文の他に『レオロジーと地球科学』(東京大学出版会)、“Rheology of Solids and of the Earth”(Oxford University Press)、“Deformation of Earth Materials”(Cambridge University Press)など編著書多数。日本学士院賞、ラブ・メダル(ヨーロッパ地球科学連合)、レーマン・メダル(アメリカ地球物理学連合)などを受賞。

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