- Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163906652
感想・レビュー・書評
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本編を読む前に巻末の著者略歴をみて欲しい。そこにあるのは3行だけのシンプルな経歴だ。成果も栄光も語られていない。村上世彰氏が本書を刊行した理由は言い訳でも正当化でもなく未だ為らぬ日本へのコーポレート・ガバナンスの定着であった点に説得力を感じる。
私自身は村上氏に対して悪い印象を持っていないが、「ハゲタカファンド」のイメージがつきまとい本人も不本意であったろう。しかし魅力なき者をオリックス宮内氏や西武G堤氏、ISSモンクス氏など超大物たちが可愛がり支援するはずもなかろうから、やはり村上氏は相当魅力的な人物であったことが窺える。
村上氏は父親が投資家で、自身も小学3年生の時分から投資に慣れ親しんだという恐ろしい経歴の持ち主だが、「期待値」という表現で彼の天才的投資センスが随所に見受けられる。一方で経営センスに乏しい点は自身も認めるところだが、重要判断について語るとき著名人の名をスケープゴートにしたり、株主提案が投資先企業の本業強化とGoing Concernに貢献しているのかというと疑問があったりと、彼自身の狡猾さも感じられるので、その点は割り引いて評価する必要はある。
彼の行動は賛否両論あろうが、東京スタイルやニッポン放送、ユーシンなど株主統治の意識が低い経営陣らに一石を投じた意味合いは大きい。数々の派手な事件の裏で彼が何を思っていたか、彼が目指していたものは何だったのか、なかなか興味深く面白い本であった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
出る杭は打たれた。日本企業にコーポレートガバナンスを浸透させるため、今日も投資を行う
●感想
なぜ村上氏は逮捕されるに至ったのか。知りたくて読んだ。やはり、「出過ぎた杭は打たれる」のだな、という感想を持った。本書に書かれている村上氏の理念には共感するし、おかしいことは特にない。逮捕されたことに関する詳しい考察、分析はかかれていないが、「村上氏は『想い』が強すぎる」のだ、と本を読んで思った。ここまで日本全体の発展を考え、ファンド運営や投資を行ってきたとは知らなかった。
村上氏の投資の目的は「日本企業へのコーポレートガバナンスを浸透させる」ことである。企業を自分のモノかのように勘違いしている経営陣をただすべく、投資を行ってきた。株主を無視し、企業価値を高めない経営者が、日本の成長の足かせになっていると考えての行動である。官僚として働く中で、自分がプレイヤーとなって変えていくほうが効果的であると考えてとのことだった。
だが、変革者はいつの世も忌み嫌われるものだ。村上氏は、良い意味でも悪い意味でも正直すぎて、敵を作ってしまう場面も多かったのだろう。「声高に理想を叫ぶだけでは社会を変えられない。むしろ敵としてみなされる」というのは歴史を振り返るとよくある事象だ。惜しむらくは、2014年に正式に伊藤レポートとして「コーポレートガバナンス」「ROI」を重要視して経営を行うように、公に話がなされたことだ。村上氏の提言は8年早かったし、日本は遅すぎたのだ。「正論で人は変えられない」ことが分かる名著。
●本書を読みながら気になった記述・コト
*東日本大震災の際に即座に救援に向かったことには感服した。それ以前に、震災のための予防を行うNPOに資金提供も行っていた。村上氏はかなり社会奉仕のマインドに溢れている
*「私にとっては短期投資も長期投資も同じである」。株主市場では、未来への成長期待も織り込まれた価格がつく。したがって、短期投資か、長期投資か、という区分けは無意味。伸びる企業に投資をすればよいのだ -
「村上ファンド」の村上さんの本。彼がこれまでに行ってきた投資の実例を交え、投資家と企業がコーポレートガバナンスを通してどのような関係を築いていくべきかについての持論を展開していく。個人的に企業は投資家と二人三脚で世の中に価値を生み出していくべきという意見であるため村上氏には賛成なのだが、それに加え、豊富な事例のドキュメンタリー的な読み物としても、投資がどのように動いているかを学ぶ基礎テキストとしても、優れた本。村上氏の情熱的で誠実な人柄が伝わってくる。
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村上さんもメディアに悪者に仕立て上げられた被害者の一人だったんですね…
まぁホリエモンと世間を騒がせた当時は、ネットも情報リテラシーも貧弱でしたからメディアによるフェイクニュースや吊し上げにあうと反論の余地何てありませんもんね…
でも、それは今でもあまり変わらないのかもしれないですね。ネット環境整備が整ったこととそれを使いこなす技量が一般人にも広く伝わるようになってネットの世界がある種の嘘やデマを淘汰する公平な場であることが分かり始めたのって最近ですもんね。もちろん既存メディアが如何に偏向してたのか、如何に恣意的な情報を流していたのか…が分かってきたのもホント最近ですもんね。
著者がどういった信念や信条をもって投資というものに携わってきたのかものすごく伝わってきました。昨今の日本の大企業のトップや教育機関、政界、官僚などこの国を動かしているような面々が自己保身や自己都合ばっかりでこの国を停滞させているってことが、本書読んでいて通ずる部分があるなぁって良く分かりました。
自分の仕事に熱意や矜持をもってこの国を変えていこうという姿勢は本当に素晴らしくて尊敬します。古いものがすべて悪いとは思いませんが、本来あるべき姿や形に正すことや新しい手法や取り組みをどんどん取り入れてトライ&エラーを繰り返していくことは本当に素晴らしいし必要なことだと思います。著者のような日本の未来を変えたいと懸命に力を尽くされた方を知れたことはとても有意義でした。
いい本でした。おススメします。 -
日本でもコーポレートガバナンスを広め、停滞している資金を回し市場を活性化させるべきという村上氏の持論がよくわかる本。村上ファンドで世間を騒がせていた頃は、金の亡者、乗っ取り屋の様なイメージの人だったが、実はこんな信念があったのだね。無借金経営=堅実で良い経営だと思ってたけどそれは間違いで、体力のある企業こそが融資を受けどんどん投資することで経済を回していくという。なるほどなー。記憶にある過去のニュースの裏側も分かり、経済の勉強のとっかかりとして◎。ホリエモンの本も読んでみたくなった。
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【狭懐】
村上さんもホリエモンも論理的で好きですが、なぜか度量の大きさを感じません。
自分を主張し過ぎるからかもしれません。
ただ、言いたくなるのもわかります。だって、世の中のみんなの考え方がおかしいのだから。。。
しかし、わざわざ声を上げて言う必要はありません。正しければ何も言わなくても自然にそうなるものです。 -
村上氏は決して信念を曲げない人なのだろう。氏が目指したのは上場企業のコーポレートガバナンスの浸透と徹底である。変えようのない哲学のある人は強い。
以下私見。
また現在でも投資が金儲けのように言われるが、投資家は基本的に適正な利益を得て再投資を繰り返すのであり、無報酬ならば誰も投資を行わないのである(報酬はマネーだけとは限らない)
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村上ファンドの村上さんの考えが分かる本。様々な投資案件が紹介されており、コーポレートガバナンスの浸透と徹底という理念が通底していておもしろい。会社法の理解にも役立つ。
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久々に出会った名著。
村上ファンドを率いた村上氏が、自伝を交えつつ投資に対する考え方を説いた一冊。
投資家としてリターンを得ることは当然であるが、株主としてガバナンス体制の強化というあるべき姿を目指した姿勢は素晴らしい。
逮捕の経緯、その真実には心を打たれた。
文章力があり、合理的な展開で読みやすい。 -
ヘッジファンドを経営していた村上世彰の、半生をまとめた本である。
実際に社会を騒がせた話の裏話が記されている。とてもロジカルに説明しているし、金融実務者からすると、彼のやり方は理に適っている。
当時は誰もやりたがらない、メディアに注目されながら会社に変革を迫るやり方は、過去にも未来にも村上さんくらいだろう。そういった意味では、革命的な人物であったと思う。
ただ一点、行政の中枢にいて、有力者にも多く認められている人が、なぜメディア対応や世論に対する印象操作をしっかり行っていなかったのか、には疑問が残る。
この本から導かれる答えは「注目されてでも日本を変えていきたい」ということなのだろうが、コーポレートガバナンスが盛り上がってきたアベノミクス近辺まで、ファンドを維持できればもっと日本の成長に寄与できたハズだ。その意味では、村上ファンドが当時のまま残っていないのはとても残念である。 -
非常に面白く、一気に読んでしまった。
こういう投資家は世間から顰蹙を買いやすい。たとえ自分が成し得たい理想像が正しい形であるとしても。
ニッポン放送の一件については当時の記憶はあるものの、ここまで村上氏が熱い想いを持って進めていた案件とは知らなかった。 -
生涯投資家 村上世彰
一時期騒動であった 村上ファンドの村上世彰さん
この人を 悪としてみてた感が
変わった 本となりました
物事を俯瞰していろんな角度からみると
いう視点を自分に感じた
事件としては 逮捕される という出来事
どうしても 犯罪者として 私利私欲のために
投資家をしていた と見ていた
投資そのものの持論を持ってないから
同じ土壌で彼のしたことの意義はわからない
でも、それをやりたい信念
そう生きてきた 今 に繋がってきたものがあって
彼の中の理由は あるんだなと思った
ファンドを紡ぐにあたって
理路整然に物事を語るのがたけてるとは思うので
(他者に、お金を投資してもらうならば
納得させることが必要だから
彼が全面的に 善 とはいわないけれど
がらっと イメージが変わった
投資の世界も いろんな考えがせめぎあって
均衡が保たれてて ルールの中
企業が社会的に正常に 貢献できるように
するために 必要ということなのかなと
私は受け止めました
相手の企業にとって 驚異になり
悪者 敵になりうるだろうが
けっして 絶対悪でもないのか
自分がグレー を苦手としている部分が
ありありとでてきて
試行錯誤の読書になったけれども
知らないより すこしは垣間見れてよかったな
専門的になることは 一般的にはいれないのかもなあ -
「ガバナンスの効いていないところでは、必ず資金循環に滞りが生まれる。資金は循環しなければ、何も生み出さない。上場企業であれ非営利団体であれ、その仕組みは全く変わらない。」(P.234)。
著者のメッセージはこれに尽きる。
公正なルールの下で個々のステークホルダーが下す判断の集積が結局は豊かさを増大させる。ある意味では我々全員がその当事者と言えるだろう。 -
物言う株主としておそれられた村上氏の著作。
表面的なところしか見ていなかったが、日本・会社のことを見据えたうえでの行動であったこと。生粋の投資家であったことが手に取るようにわかった。
できればもう一度表舞台に立って日本を立て直してほしいと思った。 -
投資の目的をお金儲けだと思っていた。
彼は違った。企業を正しい価値にすることが投資だということ、期待値で考えながら投資を行うということ。
投資の今まで見ていた側面とは違う側面を見られる一冊。 -
村上ファンド舞台裏。コーポレートガバナンスの浸透に生涯をかけた物語。個が持つ正義が社会と激突するときに起こる理不尽と軋轢。日本が持つ独自の社会論理の分厚さに溜息が出る。過去に飲み込まれることなく、現在を生涯投資家として生きる村上さんの姿に胸打たれる。
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『逮捕されていなければ日本を変える可能性があった・・・』
■読了時間 4時間14分
■この本をオススメする人
・「村上ファンド」について詳しく知らない方
・投資家のマインドを学びたい方
■感想
2000年代に世間を騒がせた村上ファンドの村上世彰氏の自叙伝です。オリラジ中田氏のYouTube大学でも取り上げられており、投資家マインドにも興味があったので読んでみました。
まずこの本を読むと、村上氏が投資家として、一体何をしたかったのかが良くわかります。上場することの意義を理解していない。自社の財務状況を知らない。既得権益を守ることに必死。日本にはこのような経営者が多く、コーポレートガバナンスという考え方が浸透していないあの時代に、株主の立場から企業のあるべき姿を追求した結果、その異常な正義感によって逮捕されてしまったのは非常に残念です。『日本の戦後を知るための12人』(文藝春秋)という本でも池上彰氏が、罪名はインサイダーではなく「けしからん罪」だったと言及しています。
企業の内部留保が多く、家計でも貯蓄が多い。コロナで政府が全国民に10万円配っても貯め込んでしまう人が多い日本で、いち投資家の立場から日本市場全体の資金を循環させて、経済を活性化させることの重要性を説いている姿勢は投資家の鏡です。
出る杭は打たれる日本の文化で、あのときマスコミに潰されなければ、日本経済はもっといい方向に向かっていたかもしれませんし、逮捕されたという断片的な情報だけでなく、事実の裏に隠された物事の本質を理解することの重要性を教えてくれる良書です。 -
身を挺してガバナンス改革の土壌を耕した超一流の人物であるということは大前提とした上でだが、
ご本人も書かれている通り、色々と正論ではあるもののやり方が直截的すぎた。…というご愛嬌的な要素もあるが、逮捕の件に関してはそれに留まらず、脇が甘かったと言わざるを得ないように思う。
「自分ばかりアンフェアに目を付けられたのでは」というのは率直に言ってその通りだろうが、本気でこれだけの社会のしがらみを変えたいなら、そこはリアリティとして織り込んで人一倍脇を締める必要があったはず。
とはいえ、CGコードやSSコードが(まだまだ道半ばとはいえ)活発に議論・改訂されている今の日本から見ると、当時の経営者の「常識」にはまさに隔世の感がある。本意な形ではないにしろ、間違いなく時代を切り拓いた人だ。 -
ニュースで見てた程度の事しか知らず、村上氏は何を目指していたのか考えを知り見方が変わった。何事も本質は何なのか知らずにうわべだけの情報に踊らされては危険。志し高くありたい。