- Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163907352
作品紹介・あらすじ
80年代の上野界隈でネオンを輝かせていたフィリピン・パブ。父親の経営する店の人気者だった姉は、AV女優として成功したけれど……。麻美ゆまから子供時代の体験を聞いてインスパイアされた表題作の他、「午前零時の同窓会」「月夜の群飛」「鶯の鳴く夜」「吉原浄土」を収録。石井光太は『物乞う仏陀』や『遺体――震災、津波の果てに』など、この世界の非情なる現実を見つめて、われわれの振舞うべきスタンスを、真摯に問い続けています。ここ十数年で風俗業界も大きく変わりました。かつて女性が生きるための最終手段だったものが、いまや〝普通の貧困〟によって、生活費を得るために体を売るようになっているのです。過酷さの質が変わったのかもしれません。『世界で一番のクリスマス』で、石井光太が描いているのは、東京・上野界隈にある風俗業界で必死に生きようとする女と男たち。女性用デートクラブ、無許可営業のデリバリーヘルス、廃墟と化したラブホテル、風俗嬢の駆け込み寺となるクリニックなどを舞台に、男女のせつない心情の遍歴を、丹念にたどりながら見つめています。表題作の主人公は、AV女優の姉を持つシングルマザー。上野駅ホームで撮影した本書のカバー写真にも協力してくれた伝説の元AV女優・麻美ゆまに、石井光太が子供時代の話を直に聞いたことから生まれた作品です。クリスマスの夜の奇跡を、お楽しみください。
感想・レビュー・書評
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石井光太さんの小説、東京上野の風俗業界を題材にした5編のストーリーが収録されています。
『午前零時の同窓会』女性用デートクラブの依頼は、高校時代の同級生、彼女は事故により車椅子生活になっていた…。
『月夜の群飛』韓国デリヘルの進出により、営業が立ちゆかなくなる上野界隈のデリヘルは営業形態を見直すのか…。
『鶯の鳴く家』ラブホテル営業の裏側、従業員同士のつながりとそれがもとで起きた悲しい事件とは…。
『吉原浄土』風俗嬢行きつけのクリニック、性病の他妊娠中絶などの診察にもあたる…。
『世界で一番のクリスマス』元AV女優の姉と脳性麻痺の子供を出産したシングルマザーの妹…。
この時期にぴったりな表題の『世界で一番のクリスマス』(そうちょっと前に八月、で、次に読もうとしているのは三月だったりします(汗))より、読んでみてぞっとしたのは『吉原浄土』でしたね…。誰もしたくて妊娠中絶するわけではないのに…ラストはゾッとしました。この業界に縁があるわけではもちろんないけれど、悲しくも切ない、そしてちょっとたくましさも感じるストーリーでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
石井光太といえばノンフィクション、と思って借りたら小説だった。「世界で一番のクリスマス」はいやが上にも麻美ゆまを想起させるよね。
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1980年代にネオンを輝かせていた上野界隈のフィリピンパブ。
父親の経営する店の人気者だった姉は、AV女優として成功したけれど…風俗という“闇の世界”に生きて、それでも光を求める女や男たちの物語。
(アマゾンより引用)
短編集。
表題作は面白かった。 -
小説という形を取っているが、石井氏が取材したことを元に書いているのだろう。
現実に起こっているかもしれないということを踏まえて読むと興味深く引き込まれる。
しかし、普段のルポの本を読んだことがあると比較的希望がある話が多い。やるせない現実を描写しながらも、希望がある。反面、やはりルポに比べると心に残るものは少ない。
やはり、ルポあっての小説だと思う。現実に起こっていることだという背景を知らずに読むと余りにもあっさりと読めてしまう。 -
上野に生きる男と女の物語を『物乞う仏陀』の石井光太が描いた5つの掌編
出張ホストの誠一にかかってきた電話は高校時代につきあった彼女だった──「午前零時の同窓会」
医師圭介の勤める吉原のレディースクリニックが中絶手術を行うようになり──「吉原浄土」
AV女優の姉に反発して施設を出たアンが産んだ子に脳性麻痺があって──「世界で一番のクリスマス」
社会の底辺に生きる人たちに注ぐ著者の目があたたかいルポのような小説
初出は『オール讀物』2014~2017年 -
風俗をテーマにした短編集。期待していただけに残念。
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上野鶯谷近辺を舞台に風俗嬢たちを主人公に据えた短編集。
いわゆる「聖と俗」の対比が、プロトタイプではあるもののくっきりと描き出されている。 -
うーん。なんとも微妙な作品。綺麗に仕上げようと思っているのだろうが、なんともチープ。
5つの短篇からなる作品集。全て風俗に関係する題材。しかし、残念ながら全てが中途半端に感じられた。