極夜行

著者 :
  • 文藝春秋
4.13
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本棚登録 : 1516
感想 : 175
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163907987

作品紹介・あらすじ

探検家にとっていまや、世界中どこを探しても”未知の空間“を見つけることは難しい。大学時代から、様々な未知の空間を追い求めて旅をしてきた角幡唯介は、この数年冬になると北極に出かけていた。そこには、極夜という暗闇に閉ざされた未知の空間があるからだ。極夜――「それは太陽が地平線の下に沈んで姿を見せない、長い、長い漆黒の夜である。そして、その漆黒の夜は場所によっては3カ月から4カ月、極端な場所では半年も続くところもある」(本文より)。彼は、そこに行って、太陽を見ない数カ月を過ごした時、自分が何を思い、どのように変化するのかを知りたかった。その行為はまだ誰も成し遂げていない”未知“の探検といってよかった。シオラパルクという世界最北の小さな村に暮らす人々と交流し、力を貸してもらい、氷が張るとひとりで数十キロの橇を引いて探検に出た。相棒となる犬を一匹連れて。本番の「極夜の探検」をするには周到な準備が必要だった。それに3年を費やした。この文明の時代に、GPSを持たないと決めた探検家は、六分儀という天測により自分の位置を計る道具を用いたため、その実験や犬と自分の食料をあらかじめ数カ所に運んでおくデポ作業など、一年ずつ準備を積み上げていく必要があった。そしていよいよ迎えた本番。2016年~2017年の冬。ひたすら暗闇の中、ブリザードと戦い、食料が不足し、迷子になり……、アクシデントは続いた。果たして4カ月後、極夜が明けた時、彼はひとり太陽を目にして何を感じたのか。足かけ4年にわたるプロジェクトはどういう結末を迎えたのか。読む者も暗闇世界に引き込まれ、太陽を渇望するような不思議な体験ができるのは、ノンフィクション界のトップランナーである筆者だからこそのなせる業である。

感想・レビュー・書評

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  • 探険家、、、
    ここまでの極限の世界での描写は、実際に体験できた彼にしかできない。

    相棒である犬との命の交換

    様々な描写のリアル、正直、汚かったりえげつなかったり、奥さんが読んだらどう思うんだろうというキャバ嬢とのやりとりなど、、、
    でも、本当にストレートに彼が思ったこと、感じたことが描写されていて、興味深かった

  • 圧巻!一緒に探検している気分だった。経験したことないがブリザードをくらったり暗闇に月を見るようだった。

  • 読みたかった本。
    しかし、読みながら心に葛藤が起こる。

    感動を描く。赤ちゃんの出産シーン。1818年初めて集落以外の人間と出会ったイヌイット「太陽から来たのか、月から来たのか」グリーンランド最北のシオラパルク。社会や日常におけるシステムから脱却し、挑む極夜行。北緯80度だと4ヶ月ほど極夜の時期は続く。一匹の犬と共に、ブリザードに立ち向かい、闇を進む。

    違和感の正体は何か。著者自らも記す、客観的な証明が不可能だから、物語はフィクションだろうと疑われそうだと。それくらい良く描けている。概ね計画通りの進路で、飽きさせないトラブル。天候や食糧問題。冒険とは脱システムと言いながら、衛生電話。モーターボートを使わずカヤック。デポ配備。潤沢な装備。自らではなく、犬の飢餓の心配。自分は最後、犬を食えば良い。その保険は確保し続けて旅をする。

    生存能力の自己確認。ある程度自分でルールを決め、ハードモードとイージーモードのちょうど良いラインでゲームスタート。ギリギリだぜ、生きてるぜ。これは、人工的なスリルだ。一緒にするのは誤りだが、設定された遊泳ライン、スキーコースを自ら逸脱したり、イスラム国支配地域に渡航して誘拐されるか否かに触れる行為に近い。

    そんな読み方をすると冷めてしまうではないか。自らを諌めるが止まらない。サバイバル本と迫力が違う。極夜行を追体験できるのは嬉しい。だが、筆力が高すぎて、旅も記録も、チラチラ見える裏の仕込みに気が散ってしまった。読み手との相性だが、演出も良し悪しか。

  • 読み終えて真っ先に思ったのが、人の一生はあくまでその人自身の所有物であり他人にどうこう言う資格はないということ。
    これほど極限の探検を求めるのであれば妻子は持つべきではないし、本書で筆者自身が述べているように「脱システム」し切れていない(電話や天気予報の仕様もそうだが、そもそも装備品もシオラパルクに至る道中もシステムによって生み出された文明の産物なのではないか)と個人的には思うけれど、その生き方を追求しているのは角幡氏であって私ではない。何を求め、何を主義とし、例えそれを貫けず妥協する場面が出てきたとしても本人以外にどうこう言う資格はないのだし、自分の生を深く探究したい人間にしか見られない景色があるんだろうとも思う。また、今の世界において未踏の地はほぼ存在せず、未知を求めるのであれば極限環境に自分を置いた上での自己探究しかない、というのもわかる。
    ただ、描写が冗長気味なのが気になってあまりのめり込めなかった。もっと削ぎ落としても良かったような……。極限の描写なら少し前に読んだ「死に山」の方がより臨場感迫っていたような気がする。

  • なかなかすごい話だった。リハックで知って読んでみた。地球を宇宙のなかの惑星の一つとして捉える感覚面白い、私も思わず今日沈みゆく太陽と月を眺めて宇宙と地球を感じた。
    システムの外側に飛び出すのはなんと難しいことか、GPSや携帯があるだけで飛び出せない。さらに家族というシステムからは更に抜け出せない。
    極限の体験をして、この人は死ぬ時にも全く後悔しなさそうだなあ。
    リハックのインタビューでは、自分の人生に他人の価値観を持ち込ませないって言ってて強い意志を感じたなあ。早稲田の冒険部はすごいな。ワンチャンとの絆も良かったなあ。
    死に近づくことで生を感じるんだなあ。なかなかネジが三本くらい飛んでるな。読者として疑似体験ができて面白かった。
    極夜の太陽が生命の誕生なら、死は母なる大地の安穏の子宮に戻っていく行為なのかもしれない。

  • 2023/2/28購入
    2023/3/27読了

  • 知識・経験不足で、極寒の様子が想像できない。しかし、人を極限の冒険に惹きつける何かの一端は感じとれた。読みごたえある一冊です。

  • 文章がユーモラス。

  • 面白かった。80日間も日が出ず暗いと気もおかしくなるよな。

  • ずっと読みたかった本。旅行で白夜は経験したけど、極夜とは…。犬とのやりとり(特に、ウンチ関係)などは思わず笑ってしまった。

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著者プロフィール

角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)
 1976(昭和51)年北海道生まれ。早稲田大学卒業。同大探検部OB。新聞記者を経て探検家・作家に。
 チベット奥地にあるツアンポー峡谷を探検した記録『空白の五マイル』で開高健ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞。その後、北極で全滅した英国フランクリン探検隊の足跡を追った『アグルーカの行方』や、行方不明になった沖縄のマグロ漁船を追った『漂流』など、自身の冒険旅行と取材調査を融合した作品を発表する。2018年には、太陽が昇らない北極の極夜を探検した『極夜行』でYahoo!ニュース | 本屋大賞 ノンフィクション本大賞、大佛次郎賞を受賞し話題となった。翌年、『極夜行』の準備活動をつづった『極夜行前』を刊行。2019年1月からグリーンランド最北の村シオラパルクで犬橇を開始し、毎年二カ月近くの長期旅行を継続している。

「2021年 『狩りの思考法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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