ショートショート美術館 名作絵画の光と闇

  • 文藝春秋
3.62
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本棚登録 : 249
感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163909240

作品紹介・あらすじ

ショートショートから作家としてのキャリアをスタートした太田忠司と新世代ショートショート作家として人気を集める田丸雅智の二人がゴッホ、ムンク、マグリットなどの名画をテーマに競作。絵画の世界に引き込まれる一作です。=================まえがき 田丸雅智何か一緒に、おもしろい連載をしてみませんか。太田さんに誘っていただいたのは、2015年の春のことでした。同じ題材で二人が別々の作品を書く「競作」なんてどうでしょう。そんなことを言っていただいたときには畏れ多くもあったのですが、とても嬉しく、新たな挑戦にワクワクしたのを覚えています。 その競作の題材を考える打ち合わせで、絵をお題にするのはどうだろうかと提案したのはぼくでした。もともと絵画が大好きで、実際に絵から作品を書いたこともあり、絵の持つ力を日頃から強く感じていたことから出た案だったのですが、それに太田さんも快く乗ってくださり企画が動きだしました。 ですがこの連載、一筋縄ではいきませんでした。 対峙しなければならないのは、題材となる絵。そして太田さんの存在を意識せずにはいられません。おまけに連載時は誌面に掲載されるまでお互いの作品を読むことができず、いっそう緊張感は高まりました。太田さんの作品が気になって、毎回飛びつくように誌面を開いたものでした。 そんな絵にまつわる競作作品をまとめたものが、この本です。楽しみ方は、十人十色だと思います。二人の作家の視点の違いや共通性を楽しむもよし、純粋に勝ち負けをつけていくもよし。あるいは我々の作品から刺激を受けて、同じ絵から自分の作品を書いてしまうもよし――。 この本を通して、何らかの形でみなさんの日常を少しでも彩ることができればいいなと思っています。さあ、想像力という名の絵筆を手にしていただき。あなたの最後の一筆で、ぜひこの競作本を完成へと導いてもらえればうれしいです。

感想・レビュー・書評

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  • 古今東西の絵画を題材に2名の作家がショート・ショートを「競作」する。つまり一枚の絵に付き、2名それぞれが物語を作る。

    これを作家ならではの特権に留めず、ペアを作ってチャレンジしてみるのもありかも笑 田丸氏・太田氏どちらの話がタイプか各章探っていくのも良いけど、それらを参考に「自分ならどんな物語にするか…」と思索にふけるのもまた違った楽しみ方になる。
    各話の感想を書きたいが、ショート・ショート故に踏み込むと即ネタバレになっちゃうから、いつも通り掻い摘んでいく。

    フランティシェク・クプカ「静寂の道」:元から不思議な構図やから、話を考えるのも楽しそう。『収穫される者』ではコズミックホラーっていう世界観に惹かれた。後半は少しぶっ飛んでいたけど、その辺の描写を丁寧にして尺を伸ばせばもっと面白くなり得る…はず!

    ムンク「吸血鬼」: 自分みたいに血液が苦手な人は2作とも注意した方が良い、何ならこの章だけスキップしても良いかも。『吸わせ屋』に関しては鳥肌と悪寒が止まらなかったが、視点はユニークだったと思う。人って何かに魅入っちゃう(/魅入られちゃう)と、こんなにもどっぷりハマって沼化していくのかー。(素知らぬ顔)

    月岡芳年「猫鼠合戦」:絵画自体は「鳥獣戯画」を想起させる。そのせいか2作ともコミカルな仕上がりだった。太田氏の『戦の始末』は、昔話みたいでオチもしっかりしている。せっかくだから田丸氏の『猫の悩み』と一緒に歌舞伎化してくれないかな笑 『猫の悩み』は落語テイストが入っており、トリに持ってきたら絶対ウケる笑

    ルネ・マグリット「光の帝国Ⅱ」:太田氏の話はシリアスな面持ちのものが多い印象だったけど、『夜の町』は不思議な程に馴染んだ。あんな風に捉えたら、死も恐いものでなくなるのかも。不覚にもホロリと来た。
    元ネタの絵が「光の帝国」なのに、両氏は夜と暗黒で絵の街を書き表している。それらのどこに光を見出すのかを、"鑑賞"する上でのTIPSとしておきたい。

    上記の他にも絵画6作品が登場する。(↑も含め、全体的にSF・ファンタジー要素が強かった)

    あとこれは巻末で判明したことだが…
    実際ショート・ショートコンテストなるものが開催されていたようで、受賞作品も本書に掲載されていた。
    一枚の絵からも十人十色の解釈が生じると、より確実に立証されている。

  • 一つの名画から触発された短編を二人の作家(太田忠司、田丸雅智)が競作するという面白い趣向だ。同じ絵から、こんなに違う物語を紡ぎだし、どちらもきらりと光る小さな宝石のように、こちらの心をくすぐる。人生の深淵という程、大げさではないけれど、ちょっぴり何かを感じさせる。作家というのは大したものだ。取り上げられた名画は、ゴッホ、クプカ、ムンク、俵屋宗達、モネ、シャガール、月岡芳年、エッシャー、マグリット、平山郁夫のもの。マグリットはあの「光の帝国」ですぞ!

  • 同じ絵画をモチーフに、太田忠司さんと田丸雅智さんがショートショートを書くという、おもしろいスタイル。
    全く違うスタイルになることもあれば、どこか同じ匂いを感じる作品になることもある。
    趣向も作品自体も楽しめるものだった。

  • ゴッホ、モネなどの10の名画をテーマにし、二人の作家がショートショートを競作。

    ショートショートと美術ものという好きなものが組み合わさった一冊で、面白くないわけがない。お二人の物語も面白いし、もとになった名画にも興味がわく。

    太田さんのほうは、ゾワッとしたり、ほっこりしたり。好きなのは、クプカ「静寂の道」の「収穫される者」、ルネ・マグリット「光の帝国Ⅱ」の「夜の町」。
    田丸さんのほうはユニークでクスクスと笑えるものが多い。好きなのは、シャガール「サーカス」の「鉄の曲芸師」、ルネ・マグリット「光の帝国Ⅱ」の「闇の住人」。

    ショートショート熱が再燃しそう。

    • goya626さん
      うん、この本は最高に面白かったです。絵にも惹かれます。
      うん、この本は最高に面白かったです。絵にも惹かれます。
      2020/06/16
  • ショートショートということで読みやすく、それでいて絵から醸し出される不思議な雰囲気の話が素晴らしかった。
    いい美術館巡りになりました。

  • +++
    ショートショートから作家としてのキャリアをスタートした太田忠司と
    新世代ショートショート作家として人気を集める田丸雅智の二人が
    ゴッホ、ムンク、マグリットなどの名画をテーマに競作。
    絵画の世界に引き込まれる一作です。
    +++

    10の絵画作品を題材に、田丸雅智氏と太田忠司氏がそれぞれの感性で物語を創っている。同じ絵を見ても、それぞれ受け取るものが微妙に違っているのが興味深く、その表し方もそれぞれで愉しめる。太田氏の方が、どちらかというと想像力を遠くまで飛ばしているような印象であるが、それも含めて愉しめる一冊になっている。

  • ショート・ショート。競作。絵画。
    絵をモチーフにした作品集。
    全体的には太田さんの作品が好み。
    自分の好きなミステリとSFの要素が、やや多いからだと思われる。
    一番好きだった作品は、太田さんのSF「収穫される者」。
    巻末の田辺ふみさん(一般の方?)「復元師」が隠れた傑作。

  • 1枚の絵画から紡がれる小気味良い物語に心を奪われた。

    自分も1枚の絵を題材に何か書いてみたいなぁなんてふと思った。

    特に気に入った絵画はルネ・マグリットの「光の帝国II」とそれをもとに書かれた2つの作品。どちらも暗闇の街を巧みに利用した話だった。

    特に太田忠司さんの「夜の町」にはひかれた。知らない道、知らない方向へと足を向ければ、自分もいつか、暖炉の前に揺り椅子のある家に辿り着けるかもしれない。そんな微かな希望を抱きつつ、この辛く世知辛い人生をなんとか生き抜いていく。その先にいる、老婆といつか出会えることを夢見て。

  • 絵を題材にショートショートを書き合うという面白い企画。作者によって視点が全く違うので、なるほどじゃあ次は?とわくわくしながら読めた。第二段にも期待したい。

  •  結果はお読みのとおりである。読者それぞれが優劣を決めていただいても善し、ただ素直に書き手が違うと一枚の絵でもこうまで違う物語が生まれるものかと楽しんでいただくのも一興である。僕はとても楽しんだ。

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著者プロフィール

1959年名古屋市生まれ。名古屋工業大学電気工学科卒業。81年「星新一ショート・ショートコンテスト」で「帰郷」が優秀作に選ばれる。その後、会社勤めをしながら「ショートショートランド」「IN★POCKET」にショートショートを掲載。1990年、長編ミステリー『僕の殺人』を上梓してデビュー。2022年『麻倉玲一は信頼できない語り手』が徳間文庫大賞2022に選ばれる。

「2022年 『喪を明ける』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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