剣樹抄

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910505

作品紹介・あらすじ

捨て子を保護し、諜者として育てる幕府の隠密組織〈拾人衆(じゅうにんしゅう)〉。これを率いる水戸光國は、父を旗本奴に殺されてのち、自我流の剣法を身につけた少年・六維了助に出会う。拾人衆に加わった了助は、様々な能力に長けた仲間と共に各所に潜り込み、江戸を焼いた「明暦の大火」が幕府転覆を目論む者たちによる放火だったのではという疑惑を追うが――江戸城天守閣を炎上させ、町を焦土と化した明暦の大火。そこから復興せんとする江戸を舞台に、新しい諜報絵巻が、いま始まる!

感想・レビュー・書評

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  • やっぱり面白いね冲方さんの時代小説は! 主役たちがガキどもで、一番手は無宿者だった父子の父を無惨に殺された子ムイリョウスケ六維了助だ。独学の闘技を買われて何故か水戸光國が統べる拾人衆の一員に引っ張られる。ここでは6話の構成になっていていずれも面白いけど、一番気に入ったのは「勧進相撲」だった♪ 折しも丁度 初場所中で 大相撲ルーツの一端を知ることも出来て良かった。さて、未完結のカタチで終わっているので又会うのが楽しみですよね。

  • 隠密組織<拾人衆>に加わった六維了助と、目付の水戸光圀。
    “正雪絵図”に絡む、犯罪者と火付の事件を追う、
    謎解き有り、立ち回り有りの時代劇の短編連作。
    深川の鬼河童・・・<拾人衆>の目付になった光圀と、父たちの仇を
       探す了助との出会い。火付の者たちの地図の出自は?
    らかんさん・・・<拾人衆>の一人の死から始まる事件。下手人は
       元・剣術指南の仏師の因縁の相手だが・・・悲劇は続く。
    丹前風呂・・・旗本奴と町奴の抗争。紀伊国屋風呂で仲間たちと
       監視をする了助は勝山と出会う。真相は意外な結末に。
    勧進相撲・・・火付強盗の下手人に相撲取りがいる?勧進相撲と
       その後の、戦いぶりの激しさ。男の悔悟の悲しさも。
    天姿婉順・・・大火で失くしたその刀は盗人蔵に?その場所は?
       頑なな男に真実を語らせたのは、意外な人物だった。
    骨喰藤四郎・・・頻発する辻斬り。一味の名乗りと、刀鍛冶から
       盗まれた名刀五十口。一味との攻防は新たな悲劇へ。
    『光圀伝』は重厚な歴史大作でしたが、
    こちらはエンターテインメントな時代劇の短編連作です。
    初っ端から了助の驚きのくじり剣法の技がさく裂。
    光圀は鉄砲をぶっ放し、暗躍する敵は舞踏のような立ち回り。
    映画や舞台を見ているような、活劇が乱発しています。
    時代は、まだ戦国の気配が残る由井正雪事件や明暦の大火の後。
    この時期の著名人や事件が次々に登場します。
    水戸光圀を筆頭に、阿部忠秋、鬼勘解由、将来の名妓・勝山、
    水野成之、幡随院長兵衛、丹波福知山藩の悲劇、明石志賀之助、
    保科正之、名刀・骨喰藤四郎・・・人物の癖の強さがすごい。
    また、舞台となる江戸の、当時の情景や風俗が詳しい。
    明暦の大火後の復興、湯屋や相撲興行等がよく分かります。
    そして、少年・了助の成長の物語でもあります。
    <拾人衆>の仲間たちの特異な才能と個性、大人たちとの出会いで、
    無宿人だった彼が変わっていく姿が良い。でも自由への想いも。
    彼に関わる光圀の過去の過ちと、解決していない“正雪絵図”の
    事もあり、続編が出るのは必須だな?と信じています。

  • 推し主演でドラマ化されるというので読んでみた。
    無宿者の子了助と水戸徳川家世子光圀の物語。
    了助の父は何者かによって殺され、その後大火で了助をかわいがってくれていた無宿者仲間も亡くす。
    しばらくして、了助は光圀と出会い、みなし子たちの集団「拾人集」に入る。

    光圀や幕府の人間は、江戸に放火し悪事を働く者たちを拾人集の諜報によって捕らえ、江戸の大火に加担した集団を壊滅させようと奮闘している。

    悪人たちと戦いながら、ずっと孤独の中で生きてきた了助の成長や、了助と縁浅からぬ光圀の心持ちが描かれている。
    なお、本作だけでは完結せず、物語は続いてゆく。これからの展開が楽しみである。

  • 『光圀伝』が良かったので、スピンオフ?と思い手に取った。

    若き日の光圀が犯した罪は、『光圀伝』では宮本武蔵と沢庵和尚との出会いと、“見事な殺し方”が活写されていたが、本作では、あの日命を奪われた無宿人の遺児との物語が描かれる。

    自己流の“くじり剣法”に加え、生来の素直さ、根気強さでめきめきと成長してゆく少年・了助の姿と、己が彼の父の仇だという事を隠しつつ可愛がり才を伸ばそうとする光圀の葛藤。
    そして、明暦の大火が、実は幕府転覆を狙った何者かの放火によるものではないかという疑惑に、異能の子供達“拾人衆”による諜報活動を絡めて、忍法帖か捕物帖のような要素もあり、『光圀伝』より面白さに振り切った感じ。

    ラストで、あの日の光圀の罪を知る男との再会があり…
    これは、続編がなきゃ困る!

    泰姫との再会に思わずにっこり。
    泰姫を亡くした場面はもう読みたくないので、それまでに物語が閉じますように。

    たまたま、本作を自宅で読むのと並行して、通勤の車中では『羽州ぼろ鳶組』シリーズを読んでいたので、ますます火付け憎し!

  • 「光圀伝」では硬派な物語を、本作では大衆受けする剣豪小説である、物語は未だ完結しておらず続編が出るであろう。著者はSF作家とばかり思っていたら、最近はやたらと時代小説が多いようである。SF書いても文庫でしか出ず時代小説ならハードカバーで出るという日本のSF軽視には疑問を感じるが、時代小説でも既存の作家よりも面白いのには感心する。最近見た居眠りしない「居眠り磐音」や他の時代小説を読もうとしたが、はっきり言ってじいさん相手の小説としか思えず読む気も失せたが、冲方丁や宮部みゆきはそれには当たらないようである。

  • 幕府の密偵〈拾人衆〉の目付け役を命じられた、水戸光圀。
    火つけ犯を追うさなか、独自の剣法を身につけた少年と出会う。

    特異な能力を身につけた捨て子たちと、大人たちが、協力して悪事に立ち向かっていく。
    有名な人物も登場し、エンタメ寄りの時代劇。

    六維了助も魅力があり、応援したくなる。

    1話完結の連作短編集ではあるものの、全体としては未解決の問題が残り、やや中途半端な終わり方。
    シリーズ化の予定?

  • 帯に「冲方節炸裂」とあるけど、個人的には頭に "正調" と付けたいところ。
    で、その後にある「開幕」を見逃していて、タイトルにも巻数が付いていないので、シリーズものだとは思わず、読んでいくうちに、これって先があるじゃん、と。
    光圀と中山勘解由のコラボとか、やっぱ池田一朗方面の外連味たっぷりな読み物こそ「冲方節」だわな。
    特に姫様のキャラ立ちが流石にすいの人だなぁ、と。
    続巻(一年半待ち?)への期待大。

  • 捨て子を保護し、諜者として育てる幕府の隠密組織〈拾人衆〉。これを率いることになった水戸光國と、幼い頃に父を旗本奴に殺された無宿人の了助。この二人をメインに物語は展開します。
    そういえば、同著者の「光圀伝」を読んだのが約七年前。 冲方さんは光國がお好きなのですかね。
    この光國に見いだされた了助が、〈拾人衆〉に加わり、様々な人たちと出会い成長をしていく姿は楽しく読めます。
    並行して、殺人を繰り返し“明暦の大火”の首謀者と思われる犯罪集団を追いかける、光圀率いる拾人衆の捜索が大筋のテーマなのですが、個々のエピソードは面白いのに、全体の流れがちょいとぼんやりしている印象です。
    中でも、とんでもなく強くてクレイジーな、錦氷ノ介との対決はその都度手に汗握るものの氷ノ介の悪運の強さと、不死身っぷりにため息がでます。
    ラストも結局決着がついていないのですが、どうもまだ続くようです。
    了助に対する光國の罪も真相を知る時がくるのか等、続きがあるならその辺の展開も気になりますが、いつ読めるのでしょうね。

  • 光圀伝が好きな人は読むべし。
    泰姫は少ししか出てこないけど心が洗われるよう。

  • 光圀の過去の過ちが物語のベースにあって、それが主人公のまっすぐな気性に将来どう影響するか気になるところである。それはまあ置いといて、物語は極上のエンターテインメントに仕上がっている。剣術や火付け野盗との駆け引き、仇討、親子の情など史実虚実入り乱れて面白く、また了助の成長譚としても楽しみだ。

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著者プロフィール

1977年岐阜県生まれ。1996年『黒い季節』で角川スニーカー大賞金賞を受賞しデビュー。2003年『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞、2010年『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞、第4回舟橋聖一文学賞、第7回北東文学賞、2012年『光圀伝』で第3回山田風太郎賞を受賞。主な著書に『十二人の死にたい子どもたち』『戦の国』『剣樹抄』『麒麟児』『アクティベイター』などがある。

「2022年 『骨灰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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