五つ数えれば三日月が

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (134ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910871

作品紹介・あらすじ

日本で働く台湾人の私。
台湾人と結婚し、台湾に移り住んだ友人の実桜。
平成最後の夏、二人は5年ぶりに東京で再会する。

話す言葉、住む国――選び取ってきたその先に、
今だから伝えたい思いがある。

第161回芥川賞候補作。

感想・レビュー・書評

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  • 日本で働く台湾人の林妤梅と、台湾人と結婚した浅羽実桜が5年ぶりに東京で再会し、現状を語り合い、過去を追憶しながら過ごす一日の物語。実桜への密かな想いに揺れる妤梅の心の情景が淡く描かれる。ただ物語から分流する中華料理や台湾の風習の説明が長く、早く本流にもどりたい読者には余剰に感じられた。

  • 国籍、言語、文化、性別…他人と自分は絶対にイコールになることはないのに、愛する人と繋がりたくて、私たちは数多の違いを、窒息しそうになりながら、乗り越えようとする。愛なんて実体がないものなのだから、空虚で、嘘っぽくて、何の意味も持たないのかもしれない。でもいつだって、自分を一番突き動かすのは、やっぱり愛なんだ。

  • 【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • 想いを寄せていた友人と何年振りかに再会し近況報告しながら昔の想いにひたる。狭い世界観に思うが台湾や日本で暮らしているので狭い訳ではないと思うが、狭い空間と人間関係で生活しているような雰囲気で余計な情報がないので落ち着いて読める。叶う事のない恋を大切に伝えることのできなかった胸のうち。切ない話だった。

  • 中国に留学経験があり、今は台湾人と結婚して台湾で暮らす日本人の実桜と、台湾人で日本で働く私。

    池袋の中華屋さんで再会の食事をしながら
    実桜の台湾での生活の話を聞きつつ
    かつて彼女に思いを寄せていたこと、外国人として、日本で働くことの大変さや、台湾で過ごした日々に思いを馳せながら。

    中国語と台湾語は少し違い、生活の文化も少し違う。
    同じ国かと思ったら、違うみたい。

  • 大学を卒業すると、それぞれとんでもなく違う人生を歩むことになる。あの頃の私たちはそれを想像できない。
    ステージが進むごとに、自分が自分で無くなっていく。
    大勢の仲間の輪に入って、違和感を与えない様に、小さく笑いながら頷く…この作家さんの文章はいつもそんな感覚を思い出させる。
    その中で、美しく物語の中心にある料理たち。誰にでも平等に、メニューを選んで好きなものを食べて味わい、評価する自由があることが救いだと思った。
    いつか羊肉泡莫を食べてみたい。

  • 夏の暑さ。目線。気まずさ。中国料理の香り。家族。文化の交差。漢詩。ぱっと汲みとれない言葉も多くて、きちんと理解できたかというとそうでもないけれど。中国語と日本語が入り混じる文章が綺麗で新鮮だった。短編も含めて、2人の出会いが穏やかにドラマチックで素敵。(2021.2.21読了)

  • 台湾にルーツを持つ女性と、台湾に嫁いだ日本人女性のお話がメイン。会話よりも情景描写が豊かな小説で、所々漢文が出てくるのが今までにない小説だと感じました。自分が何者なのかわからなくなり、溶けていくような感覚と焦燥感を覚えるお話でした。

  • 初めて読む 李琴峰(り・ことみ)氏の本である。
    台湾生まれの方である。
    もう、お年寄りの人は、日本語の上手な方もいらっしゃる。
    そして、毛筆が、達筆で、みんなこんなに字を綺麗に書くのか?と、思われるほど、整った漢字を書く。

    この本では、2話描かれているのだが、その中でも、七言絶句の詩が、とても綺麗であった。
    2話共、同性愛なのだろうか?
    ちょっと複雑な関係であり、台湾と日本に住む友人に5年ぶりに再会するこの題名の小説に、最後は、5秒のカウントダウンと、・・・・
    英語に返還しているような最後の言葉である。
    難しい漢字が、本の中に書かれており、そして、料理の話も今まで食した事の無い食べものが、描かれていて、どんな味がするのだろうか?と、空想して見たりして、読んだ。

    セイナイト、裸体姿の男性モデルを描く絵舞と月。
    日本語の漢字と台湾の漢字の意味が、異なることが、描かれていたりして、面白い。
    ちょっとした、言い方が、まぜこぜの新語になったりしても、手を触れあうのには言葉が、要らないという所は、なるほど!と、思ってしまった。

    しかし、やはり、私には、この本の意図するものが、わからないで、読み終えてしまった。

  • 芥川賞候補作品。
    今回もこの作者の作品が候補に上がっているらしい。
    日本語が綺麗だと思った。
    日本語の美しさを再認識させてもらったかも。
    物語はストイックで少しヒリヒリする。
    女性同士の関係が薄いガラスのような脆さを感じた。

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著者プロフィール

1989年生まれ。中国語を第一言語としながら、15歳より日本語を学習。また、その頃から中国語で小説創作を試みる。2013年、台湾大学卒業後に来日。15年に早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程を修了。17年、「独舞」にて第60回群像新人文学賞優秀作を受賞しデビュー(『独り舞』と改題し18年に刊行)。20年に刊行した『ポラリスが降り注ぐ夜』で第71回芸術選奨新人賞(文学部門)を受賞。21年、「彼岸花が咲く島」で第165回芥川賞を受賞。その他の作品に『五つ数えれば三日月が』『星月夜』『生を祝う』などがある。

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