網内人

著者 :
  • 文藝春秋
3.89
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本棚登録 : 252
感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163912615

感想・レビュー・書評

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  • 終盤の謎解き、というか真相の説明がなんだか冗長で、驚きもなく、なんだかなーといった感じ。地の文の視点が、章を変えることもなく変わるので少し読みづらかった。

  • 終盤のどんでん返しのせいで、電車2駅乗り過ごした!諸事情を確かめるためページを遡っていたら本の中に没入した!

    舞台は香港。図書館勤務のアイは、中学生の妹シウマンを自殺で失う。アイは人づてに紹介された探偵アニエを頼り、妹を自殺に追い込んだ人物への復讐を誓う…。アニエはネット侵入や盗撮、更に巧みな話術によりシウマンの交友関係を洗い出す。読者の立場はアイと同じ。彼女に明かされないことはわからない。並行して、あるIT企業社員の物語も進んでいく。彼がどんな人物なのかだいたい分かった、と思ったのだが…

    映像化できない作品だと思う。活字だからこそこの醍醐味が味わえるのだ!

    2段組み500余ページには登場人物の情報や場面風景が大量に詰め込まれているものの、アニエ自身の情報は極めて少ない。最後の方で、アニエの「師匠」の話題がちらりと出て、読者としては彼の情報が知りたくてたまらなくなる。続編をにおわせる雰囲気もあるので楽しみに待ちたい。

  • 「自己犠牲を理由とした自殺(自死)」がもたらすものは……。

    「私はみんなには不要なんだ…」「私が死んだ方がみんなのためになる…」
    湊かなえや辻村深月の“本”によく出てくるタイプで、他人から見て自分はどう見えるかばかり意識していること、これは究極のジコチュウ、「他人を思いやる」ことの勘違い。

    この物語では、バットマンのようなダークヒーローが香港の社会問題とITの闇を闇の中で成敗していく。珍しくはないが、描かれた謎解きや登場人物の心理解説、伏線の構成には驚くばかりで、作者がただものではないことはよく分かる。
    ただ…
    法律や公序など無視して次々IT技術や最新機器を駆使して謎を暴き、復讐する姿に、なぜか爽快感はなく、嫌な気持が続いてしまうこと(作者の狙いかも)。
    「社長と秘書の怪しい関係」が語られたり、「汚い部屋に住む偏屈なオタク」「スマートでおしゃれなIT起業家」「デブでチビで唇が分厚く醜い人物」がそのままの役割で登場したり、ちょっと「ステレオタイプ」であることが興ざめすること。
    …少し残念。

    「SNSが絡むいじめ問題」「匿名・その他大勢による他者攻撃」
    これらが「現代社会特有の問題」とされるのは、本質的に人間の持つ醜い“毒”の出方がITによって強化されて“猛毒”となったため。

    無言でスマホを見ている人たちには、今まさに“猛毒”を仕掛けている、または浴びているひとがいる……これは「ホラー」かも。

  • 最初は設定を頭に入れるのが大変でしたが割り切って速読鬼となり、そこからはドライブ感含めて楽しめました。終盤でここに決着するだろうと予測していたところから大きく伸びて、そう来るか。と思いました。シウマンの自撮り写真のシーンで涙。

  • どんでんどんでん返しあり。
    記述が詳細で本が分厚くなった。ヒーロー像としてはありきたりではあるのだが。
    舞台となる香港が中共によって変わってしまったのでシリーズ展開はどうなるのやら。

  • 2段組で542ページだが、別に長くてもいいんです。
    言葉の微妙な綾であったり、心地よくページをくらせてくれるのであれば、名文でなくても、これ見よがしの大げさな仕掛けなんてなくても構わない。
    『13・67』は亡くなられた天野健太郎氏の訳出に依るところが大きかったのかもしれないが、本作はただひたすら無駄に長いだけで、イライラさせられっぱなし。
    題材も古く、いま香港を舞台に読みたいテーマでもない割には、結構無神経に微妙な線を扱っているので、エンターテイメントとしても昇華できてない。
    "ノベルスモッグ"というほど無価値。

  •  いわゆる「華文ミステリー」が一躍注目されることとなる流れを拓いた立役者のひとり、陳浩基(ちん・こうき)。2014年に刊行した『13・67』が、翌年の台北国際ブックフェア大賞といった賞を複数受賞。世界12カ国から翻訳オファーを受け、さらにはウォン・カーウァイが映画化権を取得。日本でも2017年に邦訳が刊行され、各種年間ランキングを大いに賑わせました。
     ただし、中華圏という意味では間違っていないものの、彼は正確には香港出身の作家であり、『13・67』も現在から過去へと歴史を遡行していく「逆年代記(リバース・クロノロジー)形式」でもって、国家ではない香港という社会の政治や生活、アイデンティティを辿る内容。そんな著者が現代の――正確には2015年当時の――情報化が進みながらも混沌とした香港を舞台に描いた第二長編が今作なのですが……これが凄まじく面白かった!

     図書館で嘱託の派遣司書として働くアイは、中学生の妹シウマンが住居の窓から投身自殺したことに納得できないでいた。シウマンは約半年前、地下鉄での痴漢被害に遭い、その後、犯人として逮捕された男の甥と名乗る人物により、インターネット掲示板に「叔父は冤罪で、不良の女に陥れられたのだ」という過激な告発文が書き込まれて以来、ネット民からの中傷に晒されていた。この人物を突き止めるため、ハイテク調査の専門家である「アニエ」という探偵を訪ねるのだが……。
     インターネットの闇がモチーフとなっている本作。実はアルセーヌ・ルパンが大好きだという著者が、「現代の怪盗」として生み出したしたのが、天才ハッカーであるアニエです。染みのついたTシャツの上にしわだらけのジャージ、七分丈のパンツ、鳥の巣のように乱れた髪。正義という言葉を嫌い、しかし妙な誠実さで筋は貫き通し、非道には非道をもって制裁する。このキャラクターが恐ろしく魅力的であることはもちろん言を俟たないけれども。
     実は個人的にひたすら感心してしまったのが、主人公であるアイの造形と、彼女が「知って」いく道程の描写でした。
     決して幸福とはいえない環境に育ち、香港社会の時代のうねりや容赦ない格差に振り回されながらも、強い意志を保って妹を守り生きようとしていた姉のアイ。アニエに「原始人」と称されるほど技術音痴でネットにも疎く、時に独りよがりでズレた発言をしてしまっても、アニエの言葉や指摘に目を開かされ、自身の無知と思い込みを知り、学んでいく。
     そうしてアニエとともに妹を追い詰めた人物を追う中で、少しずつ明らかになる14歳の妹の、姉には見せていなかった姿と、その心の内。「知って」は取り乱し、大きく踏み外し、それでもなお逃げずにまた前を向き、時にはアニエも舌を巻くほどの洞察を示してみせたりして、ひたむきに歩んでは「知って」いく。
     そんなアイとともに進んだ先ですべてを――著者とアニエが張り巡らしていた企みを読者が「知った」とき、それまで見えていた景色は大きく反転します。その時、アイが迫られる深い葛藤と、あるひとつの選択。その向こうに待つエピローグ。
     と、最後まで驚きと味わいに満ちた、至高の華文サイバーミステリです。

  • 今のネット社会の闇問題をテーマにした今作品。主人公を助けてくれるスーパーハッカー登場し、ン?シリーズ化するのかな?とゆう期待を持たせて物語は終る。本格ミステリとはまた違った味わいアリ。

  • タイトルは「ネット民」であってるかな。香港のお話。

  • 後半で突然岡田将生と浜辺美波をキャスティング。シリーズになるらしく、続きが大変楽しみです。

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著者プロフィール

●著者紹介
1975年生まれ。香港中文大学計算機学科卒。台湾推理作家協会の海外会員。2008年、短篇「ジャックと豆の木殺人事件」が台湾推理作家協会賞の最終候補となり、翌年「青髭公の密室」で同賞受賞。2011年『世界を売った男』で第2回島田荘司推理小説賞を受賞。2014年の連作中篇集『13・67』は台北国際ブックフェア大賞など複数の文学賞を受賞し、十数ヵ国で翻訳が進められ国際的な評価を受ける。2017年刊行の邦訳版(文藝春秋)も複数の賞に選ばれ、2020年刊行の邦訳の『網内人』(文藝春秋)とならび各ミステリランキングにランクインした。ほかの邦訳書に自選短篇集『ディオゲネス変奏曲』(早川書房)がある。

「2021年 『島田荘司選 日華ミステリーアンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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