網内人

著者 :
  • 文藝春秋 (2020年9月28日発売)
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本棚登録 : 252
感想 : 40
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「自己犠牲を理由とした自殺(自死)」がもたらすものは……。

「私はみんなには不要なんだ…」「私が死んだ方がみんなのためになる…」
湊かなえや辻村深月の“本”によく出てくるタイプで、他人から見て自分はどう見えるかばかり意識していること、これは究極のジコチュウ、「他人を思いやる」ことの勘違い。

この物語では、バットマンのようなダークヒーローが香港の社会問題とITの闇を闇の中で成敗していく。珍しくはないが、描かれた謎解きや登場人物の心理解説、伏線の構成には驚くばかりで、作者がただものではないことはよく分かる。
ただ…
法律や公序など無視して次々IT技術や最新機器を駆使して謎を暴き、復讐する姿に、なぜか爽快感はなく、嫌な気持が続いてしまうこと(作者の狙いかも)。
「社長と秘書の怪しい関係」が語られたり、「汚い部屋に住む偏屈なオタク」「スマートでおしゃれなIT起業家」「デブでチビで唇が分厚く醜い人物」がそのままの役割で登場したり、ちょっと「ステレオタイプ」であることが興ざめすること。
…少し残念。

「SNSが絡むいじめ問題」「匿名・その他大勢による他者攻撃」
これらが「現代社会特有の問題」とされるのは、本質的に人間の持つ醜い“毒”の出方がITによって強化されて“猛毒”となったため。

無言でスマホを見ている人たちには、今まさに“猛毒”を仕掛けている、または浴びているひとがいる……これは「ホラー」かも。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外ミステリー小説
感想投稿日 : 2021年11月17日
読了日 : 2021年11月17日
本棚登録日 : 2020年10月9日

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