ルポ 誰が国語力を殺すのか

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163915753

作品紹介・あらすじ

『ごんぎつね』の読めない小学生、反省文の書けない高校生……
子供たちの言葉を奪う社会の病理と
国語力再生の最前線を描く渾身のルポ!

〈バカの壁〉はここから始まっていたか。子供たちの国語力をめぐる実情から、日本社会の根底に横たわる問題まで掘り起こした必読の書。
ーー養老孟司

注意報ではなく警報レベルだ。子供たちの現状に絶句した。本書の処方箋を、必要なところに届けること。それがこの国の急務であり、希望の道筋となるだろう。
ーー俵万智

・オノマトペでしか自分の罪を説明できない少年たち
・交際相手に恐喝されても被害を認識できない女子生徒
・不登校児たちの〈言葉を取り戻す〉フリースクールの挑戦
・文庫まるごと一冊の精読で画期的な成果をあげる全人的な教育
・〈答えのない問い〉が他者への想像力を鍛える「哲学対話」……etc.

「文春オンライン」200万PV突破の衝撃ルポ「熊本県インスタいじめ自殺事件」を含む、現代のリアルと再生への道筋に迫った瞠目のノンフィクション!

今、子供たちを救えるか? 未来への試金石となる全日本人必読の書

感想・レビュー・書評

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  • 言葉が危ない。想像力が危ない。
    私もずっとそう思っていた。

    家庭環境が国語力に大きな関わりを持つ。
    今の教育現場の問題が拍車をかける。
    ゆとり教育、総合的な学習が理想の空回りで、国語力の低下をもたらす。
    アクティブラーニングを目指す現代。しかし現場ではプログラミング、外国語、ネットリテラシー、キャリア教育と次から次へとおりてきたものに対応するのにアップアップ。それ以前に教員が不足し、教務主任や教頭が担任したり授業をもったりする。国語力どころではない。すべての教科の基礎は国語なのに。
    現代の不登校はゲーム依存、スマホ依存と大いに関係している。麻薬、飲酒、ギャンブル依存同様ゲーム依存を問題視する。ゲーム依存治療のプログラムの大変さが心に残る。これは少年院の更生プログラムとも共通点がある。

    1 子どもを心理的安全性に置く。
    2 五感を刺激しながら言葉と思考のリハビリを行う。
    3 言葉による成功体験を積み重ね、自己肯定感を高める。
    4 実社会での希望や生きがいを見出させる。

    でも、光明がないわけではない。
    五感を働かせる体験から言葉とコミュニケーションを育てることを重視している学校の実践が紹介されている。読書郵便で友達同士で本を紹介し合い、本を読む環境つくりをしている学校。本物の自然、本物の芸術にふれさせることを目指す学校。
    五感を刺激されると子どもは言葉を発し、表現力がアップしていく。

    今、必要なものは
    実感をともなう言葉と想像力
    そんなことを考えるきっかけになるルポだった。

  • この作品のタイトルがまず目を引き、かねてから読んでみたいと思っていました!「国語力」を殺すってどういうこと??この作品はまず現在の小中高校生が直面している現状や問題点を指摘し、それに対して教育現場はどう対応しているかを取材した作品です。

    読んで衝撃を受けました…。「ごんぎつね」を正しく読めない子供達(時代背景もあるかもしれないけど…)、反省文を書くよう指導しても反省文とはほど遠い内容に…。正直、危機感を覚えました。ウチの子は大丈夫か…そう感じ思わずこの反省文のくだりを読ませたりして!そして、短い単語であらゆることを伝えようとすることについて注意を促しました。が、「それ、お母さんもだよ。いつも思うけど、お母さん主語がないから困ることがあるよ。」と言われてしまいました。はい、気をつけます(汗)。

    あと印象的だったのは、国語力を育成するために、文庫本を使った授業をしている学校があるということです。『アンネの日記』『深夜特急』『野火』『風立ちぬ』『仮面の告白』『高野聖』『深い河』など…私もいつか読んでみたいと思いました。そして、「国語力」が身についた子供たちは、自分の意見を自分の言葉で表現できることにも驚かされました!いろいろ、考えさせられる一冊になりました。

  • ◆想像力喪失 ネットが拍車[評]大岡玲(作家・東京経済大教授)
    <書評>『ルポ 誰が国語力を殺すのか』石井光太 著:東京新聞 TOKYO Web
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/201299?rct=book

    『ルポ 誰が国語力を殺すのか』石井光太 | 単行本 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163915753

  • 近年読んだルポルタージュのなかで、最も強い衝撃を受けたと言ってもよい一冊。
    単に「教育」というジャンルの本だと思っていると関係者にしか読まれないと危惧するが、一世を風靡したともいえる『ケーキの切れない非行少年たち』にも通じる話だ。
    人間は、よりよく生きていくために「言葉」が欠かせないということがよくわかる。
    それは、いま恵まれた環境にある人がより充実した生き方を手に入れるという意味ではなく、最底辺にいる人(虐待や犯罪に近いところにいる人)が、「ふつうの」生き方ができるようになるという意味だ。
    これを他人事だと考えている場合ではない。
    「ふつうの」人が「ふつうに」安全な社会で生きていくために、社会全体で考えなければならない喫緊の課題だ。

    日本の高等教育が、理系偏重、人文学軽視をしてきたツケがここにある。

  •  以前新聞で、この本が取り上げられていた。

     小学校での『ごんぎつね』の授業で…

    兵十の家で、母親の葬儀が行われる日、村人たちが集まり大きな鍋で料理をしている。この鍋で何を煮ているのか?の問いに、子供たちが大真面目で、お母さんの死体を煮ていると答えたというのだ。どうしてもふざけてるとしか思えなかったが、気になり、この本を手に取った。

     さすが石井光太さん。緻密な取材と、構成力で今の日本の国語教育が実際にどのような問題点があり、どのような方向にこれから進んででいけば良いのか、しっかりと述べられている。
     特に序章と第1.2.6.7.8章は必読だ。日頃本を買うとき、内容にしては値段が高いな、とよく思うのだが、この方に限っては、こんなに安くていいのだろうか?と思ったほどだ。

    序章 『ごんぎつね』を読めない小学生たち

    ○今の子供たちは大量の情報に取り囲まれ、それを取捨選択する必要性に迫られている。情報を整理したり処理したりする力はあるのかもしれない。しかし、そうした力と、一つの物事の前に立ってじっくりと向き合いそこから何かを感じたり感じ取ったり、背景を想像したりして自分の思考を磨き上げていく力は全く別のものだ。(ある校長の言葉)
    ○語彙を増やすのと同時に育てていきたいのが、情緒力や想像力。情緒力とは、他者や自然から美しさ、悲しみ、もののあわれを感じ取り、理解する能力。想像力は、未知のものをイメージしたり、他者の表情や動きから言外の感情を読み取ったりする能力。

    第一章 誰が殺されているのか 格差と国語力について

    第二章 誰が殺したのか 教育崩壊について

    ○国語力の中核をなすのは「考える力」「感じる力」「想像する力」「表す力」の4つの力だ。これらが一体となって成長することで、人は社会で生きていく上で必要となる全人的な力を得ることになる。
    ○学校司書ついての言及…司書教諭が十分な仕事をできる制度づくりができていない。
    ○元文部科学大臣の遠山敦子が語る、現代国語教育の問題点。ゆとり教育の完全なる失敗。

    第三章 ネットが悪いのか SNS言語の侵略
    第四章 19万人の不登校児を救え フリースクールでの再生
    第五章 ゲーム世界から子供を奪還する
    第六章 非行少年の心に色彩を与える

    ○悲しいと言う感情を切ないくらいのものだと理解できれば自殺する事は無いよね。むくれるくらいなら人を責めたり殴ったりしないと思う。感情を細かく分けると言うのは、それに合った行動を取れるようになるってことなんだ。それが感情をコントロールするということだと覚えて欲しい。感情を細かく捉えるだけで、生き方が随分楽になるものなんだよ。

    第七章 小学校はいかに子供を救うのか〜国語力育成の最前線1

    ○ガラス張りの教室の外には、教室と同じ位の広さの廊下スペースが広がっていて、展示パネル、生徒の絵画、書道、俳句、自由研究、手紙、将来の夢また、本棚、ピアノや木琴、図画工作などが並び、教室の外は美術室や音楽室になっているので、休み時間には好奇心を刺激された生徒たちがそれらで遊ぶ。

    第八章 中学校はいかに子供を救うのか〜国語力育成の最前線2

    文庫本を丸ごと一冊使った授業を紹介『アンネの日記』『深夜特急』。
    高校では…『野火』『風立ちぬ』『仮面の告白』『高野聖』『深い河』
    終章

    気持ちにフィットする言葉を見つけて、表現できた時、私は少し嬉しくなる。日本語は繊細で表現が多岐に渡り、微妙な心情の心情を表す言葉が多く存在する。なので、豊富で基盤がしっかりした国語力を養えば、その言語のように日本人も、自国を愛し、個々の意見をしっかり持ってグローバルに発信出来るようになるはずなのだ。学校の先生を始めとして、1人でも多くの人に読んでもらいたい1冊でした。

  • 石井光太さんの本と知らずに購入。
    「格差と分断の社会地図」がとても好著だったので、期待大!
    ルポなので、国語力のない子たちの悲惨な現状や、恵まれた子どもたちの実例が挙げられている。
    「誰が国語力を殺すのか」ということにもうすこし鋭く切り込んで欲しかった。

    途中、ゆとり教育について、やや批判的なのが気になった。これに関しても、世論の多くが批判的ではあるのだが、そのなんとなくの流れに乗らずに、「誰がゆとり教育を殺したか」「本当にゆとり教育は殺されたのか」「ゆとり教育は子どもを殺したのか」などなど深掘りできるのではないかなと。

    それにしても、ゲーム依存症や虐待の実例はきつかった。これが紛うことなき現実だ。
    この子たちに「ゲーム」を与えているのは誰なのか、この親たちをこんな親にしたのは誰なのか、ということこそが、追求されるべきことなのではないか。
    それが「誰が国語力を殺すのか」の答えなのではないか。

  • 最初は本の厚さに面食らいましたが、文章は読みやすいし何より面白いです。
    読む前は国語力がこれほど大切な力だとは思いませんでした。これからは積極的に甥や姪の国語力を育てる手助けをし、自分自身の国語力も伸ばしていきたいです。

  • 近年、問題になっている若者や子供の国語力の低下。文章の意味が読み取れないだけでなく、コミュニケーション上でのトラブルに発展したり、自分の感情を言語化できずに塞ぎ込んだりする子供が増えているとのこと。

    たくさんの事例から分かりやすく問題点が書かれ、後半では国語力を重視した教育現場の様子が紹介されていた。「アンネの日記」を一冊一学期かけて読み込むなどの授業内容は面白そうだった。

    親が子供に向き合う大切さ、表現力を養うために本を読む大切さなど改めて感じた。将来、自分の子供に色々な表現を使ってお話ししたいので、自分自身の語彙力を増やすことも意識しようと思う。

  • 新聞に書籍広告で紹介されていた。昨今の子供たちの国語力や精神面に関する深刻な実情を取った本。帯にもあるように衝撃的な内容がある。
    子供たちの国語力や精神面に関する深刻な実情を紹介されている。
    しかし、本当は子供が問題なのではない。子供の親世代からの積み重ねのように思えてならない。親世代が経済的にも文化的にも身体的精神的にも余裕がない分、しわよせが子どもに表れている。
    先日、「識字調査、全国実施へ始動 岡山の夜間中学生2割、生活に支障も 国語研、1948年以来」(共同通信社)2/18(土)
    の記事を読んだ。
    「国立国語研究所(東京)が識字調査の1948年以来の全国実施を目指している。既に岡山などで、義務教育を受けられなかった人たちが通う夜間中学の生徒らを対象に実施。約2割が十分に読み書きができず「日常生活に支障の恐れ」との結果も出ている。」以下略
    識字率の実態把握は学び直しの促進につながりそうだ。とあったが、学びなおす機会ややる気をどのように設けるのか、難しいと思った。
    「国語力」考える力、感じる力、想像する力、表す力、大人でもきちんと身についている人がいないこともあるのはこういう実態があるのだな。と感じることがあったので、現状を認識し、よき方向にすすむためには、かなり「国力」が必要だと思った。政治家のみなさんにもぜひ実態を知ってもらいたいと思った。『ケーキの切れない非行少年たち』宮口 幸治著(新潮社)を読んだ時にも思ったが、この本は、とりあえず、学校の先生方、保護者のみなさん、余力?のある人(ここが一番大きいけれど)、興味のある人はこの本を読んでほしい1冊かもしれない。

    追伸 一度書いて投稿する前に誤字脱字を確認すればよかったです。すいません。だから国語力が足りないんです。(^◇^;)反省。

  • センセーショナルな題名で引き寄せ、根拠の乏しい持論をただ書き連ねる本が多い中、この本は内容がしっかりしていました。
    出所のきちんとしたデータや専門家等の意見を引用しながら、論理立てて書かれています。1つの事案に関して、肯定と否定の両意見を紹介しているのも良かったです。
    学校図書館など、もう少し掘り下げて欲しい部分もありました。国語力を失うことは日本の未来を失うこと…日本が抱える様々な問題点が浮き彫りにされています。

    • かなさん
      ブラリーさん、こんにちは!
      私は、この作品、石井光太さんが手掛けた作品で一番好きなんです。
      国語力って、誰でも身につけられているようで
      ...
      ブラリーさん、こんにちは!
      私は、この作品、石井光太さんが手掛けた作品で一番好きなんです。
      国語力って、誰でも身につけられているようで
      決してそうではない…それは私でも…そう感じ愕然としました。
      でも決してそれだけでは済ませずに、
      きちんと身につけていきたと改めて感じました。

      この度は私の拙いレビューにいいねと
      フォローまでしていただきありがとうございます。
      こちらからもフォローさせて頂きますので
      これからよろしくお願いします。
      2023/05/08
    • ブラリーさん
      かなさんこんにちは!
      コメントありがとうございました!
      私は石井光太さんの作品は今回初読でした。
      他の作品も読みたくなりました。

      かなさん...
      かなさんこんにちは!
      コメントありがとうございました!
      私は石井光太さんの作品は今回初読でした。
      他の作品も読みたくなりました。

      かなさんのレビューはどれも丁寧に書かれていて、いつも楽しく読ませていただいています。
      こちらこそこれからもよろしくお願いいたします
      2023/05/08
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著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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