薔薇色に染まる頃 紅雲町珈琲屋こよみ

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 248
感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163916033

作品紹介・あらすじ

一度は売ったものの手放したことを後悔していた帯留めが戻ってきたと、旧知の東京のアンティークショップから連絡をもらったお草。早速その店に向かうが、そこで耳にしたのは顔なじみのバーの雇われ店長が殺されたらしいという話だった。生前に彼と約束を交わしていたお草はそれを実行に移すが、その後、新幹線で何者かに追われている様子の母親と少年と隣り合わせる。そして、その少年を預かることになるが――。
殺された知人、生前の約束と怪しげな現金、最凶の男……。事件の全貌もわからぬまま少年と逃避行を続けるお草は、どこへ行くのか?

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりのレビューです。今後もペースはボチボチですが、よろしければお付き合い下さい。


    〈紅雲町珈琲屋こよみ〉シリーズ最新作。もう何作目になるのだろうか。

    今回はシリーズ中、最もサスペンスな話だった。
    何しろお草さんが新幹線で出会った少年と逃避行をすることになるのだ。
    お草さんとしては人助け、だが報道では高齢女性による少年連れ去り事件として扱われている。
    少年の味方であろう関係者たちが次々と姿を消す中で、お草さんは少年を追う者や警察から逃れて少年を救うことが出来るのか。

    これまでもちょっとした立ち回りや冒険はあったが、今回はその比ではない。
    だが一方でお草さんの味方もまた沢山いて、小蔵屋の久実とその彼氏・一ノ瀬、配送業者の寺田にお草さんの親友・由紀乃、器作家の丹山。
    また古い伝手を辿れば大物もいるらしい。お草さんの人脈の広さに改めて驚く。
    お草さんだけでなく、一ノ瀬の人脈もなかなかハードだ。探偵事務所を営む辺見なる人物は、彼の物語だけでも一冊出来上がりそうなほどハードボイルドだ。

    これだけの味方があって彼らがどんな活躍をするのかと思えば、意外な顛末。
    それもそうだ、これは〈紅雲町珈琲屋こよみ〉でありハードボイルドやサスペンスではない。

    冒頭と最後に出てきた〈牛亭〉『夫婦』の関係、久実と一ノ瀬の関係、辺見のアレコレ、そして少年ジュンとキョウカ、ユージンの境遇。
    この作品で描かれたのは、様々な人間関係や人生。
    一見平凡で幸せそうな家庭や家族にも様々な物語があり、さすがのお草さんでも踏み込めない親子関係もある。
    大人たちに愛され守られて安心して伸び伸び育つ年頃のジュンが、お草さんが想像もつかない人生を送りお草さんが知らないことを沢山知っている。

    自分が一生関わることがないだろうこんなハードなことが、実はごく身近にあったりする。
    取り戻した帯留を持って、アンティークショップから真っ直ぐ帰れば良いものを、いつものお節介で寄り道をしたがために巻き込まれたお草さんはともかく、本来行くべき道を一本間違えただけでそういうこともあるかも知れない。

    ただシリーズとしてはあまりに異質だったのと、結末がああだったので、読後感としては拍子抜けだったのが残念。
    今後も辺見は出てくるのだろうか。彼もまた紅雲町シリーズとしては異質だけど。

  • 【目次】第一章 長い約束/第二章 メジャーと竹尺/第三章 湖に降る/第四章 神様の羅針盤、くまの寝息/第五章 
    薔薇色に染まる頃

    小蔵屋シリーズ10作目。

    このシリーズは、登場人物や設定のわりには、ブラックな話が多いように思うのだが、本作はもう一段降りた感じ。裏社会との接点はささいなところにあるようで、怖い。小説なら探偵や警察官の知り合いがいる仲間の存在に助けられるわけだが、現実はそう都合よくは運ばない。

    草さんが年を取るにつれ、経験することがハードになっていくような…… 
    手放しでハッピーエンドとはいえないけれど、ベターな結末ではある。ほろ苦い読後感。

  • 吉永南央『紅雲町珈琲屋こよみ』シリーズ | 特設サイト - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/sp/osou?sp_banner

    『薔薇色に染まる頃 紅雲町珈琲屋こよみ』吉永南央 | 単行本 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163916033

  • 2022年10月文藝春秋刊。書き下ろし。シリーズ10作目。今回は紅雲町を離れて、傷害、殺人、逃避行と草さんらしくない非日常な話の展開で、あ然となりました。ちょっとしたアクションサスペンスです。でまぁそういうとんでもな話だけどうまくまとめたというか、出来過ぎの感もある流麗な展開は、まるでパスティーシュのよう。ラストで、いつもの日常に帰着してしまうというアクロバチックな展開は、しかし、とても疲れました。

  • コーヒー豆と和食器の店「小蔵屋(こくらや)」を営む、お草さんの周りで起きるあれこれの、第10弾。

    周りで起きる、というか、お草さんが自ら事件に首を突っ込むというか・・・
    今回は巻き込まれたのかも知れないが、その発端となり、彼らと関わりを持つに至った出来事は、やはりお草さんのお節介が原因だったと思う。

    杉浦草(すぎうら そう)、多分70代。
    老女が巻き込まれていい事件じゃない。全く、心配かけすぎ!
    今回はすこぶる犯罪性が高く、本当にヒヤヒヤものでした。
    2時間ドラマになりそうなサスペンス。
    非道な父親の元に生まれてなんとか生き抜いてきた男の、これは報復なのかな。
    壮絶でした。

    それと並行して描かれる、牛亭さんや、久実と一ノ瀬のカップル。
    人と人の関わり方は一対一ではなく、人はそれぞれ家族や事情や係累を抱えている。
    個人だけではなく、その背景とどのくらい関わるのか、関わらないのか。
    簡単には語り尽くせないことである。

  • 本を手にして、えっ?お草さんが少年と逃亡?何で?
    と、疑問を解決すべく読み始めたら、止まりませんでした。そりゃあ、お草さんの周りでは何時も何かしらが起こりますが、ここまで来ると単なる事件ではありません。何でこんなことに巻き込まれるの?どうやって、無事に逃げ切るの?
    お草さんの仲間と知り合いとその知り合いと、と繋がって助けられて、何とか逃げ切って。ホッとしたのもつかの間、えっ?こんな結末?
    まぁ全て丸く収まった?から良かったけど、お草さんも友達なくさなくて済んだし。
    それにしても、みんな無事で良かった。
    次は何が起きるのでしょうか?出たばかり、読んだばかりなのに、次がとても楽しみです。

  • シリーズ10

    一度は売ったものの手放したことを後悔していた帯留が戻ってきたと東京のアンティークショップから連絡をもらったお草さん

    さっそく京都へ商談に行く前に東京に寄り、買い戻すがそこからの展開があまりにもぶっ飛びすぎ、現実離れしすぎていて、???
    いくら物語といっても、80近いお婆さんが巻き込まれる事件じゃないだろうと、気持ちが冷めてしまった

    雑居ビルが立ち並ぶ一角のバーの雇われ店長が殺されたらしい
    その店長とは、アンティークショップによる度に何回か口をきいたことがある顔見知り
    ー俺が死んだら運んで欲しいものがある・・・ー
    と以前に渡されたメモ書きを頼りに、怪しげなバーが立ち並ぶ雑居ビル街、暴力や薬物の売買が日常茶飯事の裏社会へ首を突っ込んでいくお草さん
    挙げ句の果ては、小さい少年を連れての逃走劇

    いやはやこれはないでしょう

    いつもの穏やかなちょっとスパイスの効いた紅雲町の日常はどこへ行ったんだ

    最後、久実ちゃんや由紀乃さんが出てきた時はほっとした

  • いつも曇り空…という感じですが
    今回はスゴかった…

  • いつもの珈琲と和食器の小蔵屋のお草さんが、スーパーアクティブお婆さんになってる。
    キョウカさんとジュンの姿がいまいちイメージできず、最後まで感情移入できないままに終わってしまった。

  • 紅雲町珈琲屋こよみ シリーズ10作目

    曰く付きの帯留めを買い戻した先で事件
    幾重にも張り巡らせられた糸を辿る内に
    過去と今と未来に思いは行き来し

    薔薇色に映る景色で良かった

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著者プロフィール

1964年、埼玉県生まれ。群馬県立女子大学文学部美学美術史学科卒業。2004年、「紅雲町のお草」で第43回オール讀物推理小説新人賞を受賞。著書に「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズ『誘う森』『蒼い翅』『キッズ・タクシー』がある。

「2018年 『Fの記憶 ―中谷君と私― 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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