我々はどこから来て、今どこにいるのか? 下 民主主義の野蛮な起源

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163916125

作品紹介・あらすじ

 ホモ・サピエンス誕生からトランプ登場までの全人類史を「家族」という視点から書き換える革命の書!
 人類は、「産業革命」よりも「新石器革命」に匹敵する「人類学的な革命」の時代を生きている。「通常の人類学」は、「途上国」を対象とするが、「トッド人類学」は「先進国」を対象としている。世界史の趨勢を決定づけているのは、米国、欧州、日本という「トリアード(三極)」であり、「現在の世界的危機」と「我々の生きづらさ」の正体は、政治学、経済学ではなく、人類学によってこそ捉えられるからだ。
 下巻では、「民主制」が元来、「野蛮」で「排外的」なものであることが明らかにされ、「家族」から主要国の現状とありうる未来が分析される。
 「核家族」――高学歴エリートの「左派」が「体制順応派」となり、先進国の社会は分断されているが、英国のEU離脱、米国のトランプ政権誕生のように、「民主主義」の失地回復は、学歴社会から取り残された「右派」において生じている。
 「共同体家族」――西側諸国は自らの利害から中国経済を過大評価し、ロシア経済を過小評価しているが、人口学的に見れば、少子高齢化が急速に進む中国の未来は暗く、ロシアの未来は明るい。
 「直系家族」――「経済」を優先して「人口」を犠牲にしている日本とドイツ。東欧から人口を吸収し、国力増強を図かるドイツに対し、少子化を放置して移民も拒む日本は、国力の維持を諦め、世界から引きこもろうとしている。

感想・レビュー・書評

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  • 上巻はだいぶ体力の要る読書だったが、そのおかげで下巻はすんなりと理解できた。
    アメリカ、フランス、イギリス、中国、ドイツ、ロシア、日本など、異なる家族形態や宗教、教育がたどってきた歴史をもとに、現在を読み解いている。

    個人的に興味深かったのは、教育、特に高等教育が不平等主義を後押ししているという現象。識字が課題となる初等教育の普及段階では、教育が平等主義とつながっているが、高等教育になればなるほど、当然のことではあるが格差が広がる。民主制は指導者が必要だから、エリートも必要なわけだが、経済格差と教育格差がリンクして議論されている日本でも、まさにこの部分を直視して問題の落としどころをさぐらねばならないのだろうと思う。

    もう一つ面白かったのは、同性婚の法的承認がなされ、女性の社会的ステータスが高い国ほど出生率が高い、という相関関係があるという事実。女性のステータスに関しては、社会的システムの整備など十分想像できる結果だが、同性婚については個人的には新たな視点で勉強になった。

  • 上下で1ヶ月以上読むのにかかってしまった。
    トッドさんの家族の話は、ときおり読んできたけれど、これだけしっかりとした本は初めて。
     権威主義国家のロシア、中国と民主主義国家の対立という見方に対し、共同体社会のロシア、中国と核家族社会の英米という見方。同じ民主主義国家でも直系家族社会のドイツ、日本は少子化という大問題を抱える。
    引用が多く読むのに少し苦労するけれど、図表やデータで楽しめる。

  • 文化人類学から世界経済や社会の動向を捉えようとする意欲作。ところどころ、論理が飛躍しすぎているようにも思ったが、著者の広範な知識には驚嘆させられた。ところどころノーベル経済学賞に批判的なところが面白い。著者がフランス人の視点から記述していることが本書の魅力の一つと思う。とにかく読むのに時間がかかった。。。
    16章の日本の記述は最も興味深かった。少子化は本当に深刻な問題で、その回復のモデルはロシアにあるのかもしれない。移民に頼らず、自国の技術、エンジニアを大切にして、ユニークな日本の伝統・文化・治安が守られることを願いたい。

  • 家族構成から民族の特性を語る!
    日本人に関して、納得します。

  • 2022I201 361.63/To2
    配架書架:C2

  • 362||To||2

  • ●民主制は常に原始的であったが、高等教育に侵食されていく。
    ●ドイツと日本の出生率は低い。父系制。
    ●ゾンビ・カトリシズム

  • いやー難しいけど面白い!
    伝統的な家族形態,初等教育,高等教育が政治システムや国の在り方までの起源となり,様々な「敵」をなぜ作るのか,なぜ必要悪なのか?
    こんなにも説明ができるものなのかと感嘆.
    最終的にどんな国家のシステムも否定しない,かつ変化の途上とするのは,読後の満足感にはつながらないけど,世界を公平に見る,と言う原点に思い至らずにはいられない.

  • ・訳文は上巻と同じく、こなれていなくて、読みにくい。
    ・「アメリカの本当の神秘は、われわれの共通の未来を表現する国として現れてきていながら、われわれの過去をもまた内に含み持っているという点にある。アメリカはわれわれに、進歩の希望と退行の幸せを同時に提供する。」
    ・外婚制か内婚制か、教育の程度、出生率、人口の自然動態と移動動態といった指標はわかりやすい。
    ・教育のメリトクラシー(能力主義的)階層」による社会の分断

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著者プロフィール

1951年フランス生まれ。歴史人口学者。パリ政治学院修了、ケンブリッジ大学歴史学博士。現在はフランス国立人口統計学研究所(INED)所属。家族制度や識字率、出生率などにもとづき、現代政治や国際社会を独自の視点から分析する。おもな著書に、『帝国以後』『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』などがある。

「2020年 『エマニュエル・トッドの思考地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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