鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163917009

感想・レビュー・書評

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  • 最近、昭和30〜40年代の日本映画を追いかけている。橋本忍の作品もいくつか観たが、力作揃いだった。この本が話題になると、さらに回顧上映の機会が増えるだろう。楽しみである。

    「八甲田山」「幻の湖」の舞台裏を興味深く読んだ。

  • 面白くて、500ページ近い大著を一気読みした。

    生前の橋本忍自身にも計9回/20時間に及ぶインタビューを行い、周辺取材・調査を重ね、完成までに10年以上を費やした労作・力作である。

    橋本忍には『複眼の映像』という、黒澤明作品の思い出を中心に綴った回顧録がある(同書の拙レビューはこちら→ https://booklog.jp/users/gethigh316/archives/1/4167773546

    『鬼の筆』は『複眼の映像』を主要參考文献としつつ、その中にある橋本の錯覚や“話を盛ってる”部分まで、詳細に検証して明らかにしている。

    そのことが象徴するとおり、#橋本忍 の言葉を鵜呑みにするのではなく、他の証言などと比較検証して真実を浮き彫りにしていく手際が鮮やかである。

    戦後日本の代表的脚本家の全体像に迫ったという意味では、『昭和の劇――映画脚本家笠原和夫』の類書だが、同書と甲乙つけ難い面白さだ。

  • 春日太一さんの12年間に及び橋本忍というストーリーテーラーに春日太一が苦心して対峙していく様子が痛いほど感じられる大著。

    後追いで橋本忍脚本映画を観てきた自分には浅い映画歴にどんどん線が引かれていく感覚で一日で500頁級の本書を読み切りました。

    ただ読後感として、映画脚本・ビジネスマン両面の才能に恵まれた人物の栄光と挫折ではまとまらない、描かれていない余白があるのではないか、まだ橋本忍はわからないのではないかという感覚も残りました。

    春日さんには迷惑な期待かもしれませんが『続・鬼の筆』というより『鬼の筆・ビヨンド』があるのではないかと読者としては期待せざるを得ないです。

  • 【「全身脚本家」の生涯】「七人の侍」「砂の器」「八甲田山」など、歴史的名作の脚本家・橋本忍。生前に長期間取材をし、未公開資料を読み解いた決定的評伝。

  • 何ともの読み応え満点。
    どうしてどうした幻の湖、との長年の疑問がわかったような。

  • 『七人の侍』『私は貝になりたい』『白い巨塔』『日本のいちばん長い日』『砂の器』など歴史に残るような映画の脚本家である橋本忍さんの評伝。権力に抗うような作品が多いので社会派かと思いきや、ご本人は売れる作品を生み出すことが目的だったとのこと。作品の本質を見抜くことにとても長けていると思う。『八甲田山』では、多くの死者を出した青森第五連隊は自然を征服しようとして、死者を出さなかった弘前三十一連隊は自然には逆らわず折り合いを付けようとした、と的確に捉えている。また、脚本の内容もまるで小説を読んでいるかのように場面が思い浮かぶ詳述ぶりだった。映画の利潤は自身の会社の資本の蓄積にせず、みんなで分配したというエピソードも凄いなと思う。これらのことがbackboneにあって上記のような作品が生み出されたという事実は、いわゆる社会派という考え方にもいろんなアプローチがあるんだと気づかされた。

  • 脚本家橋本忍のドキュメンタリー。
    『砂の器』『八甲田山』という栄光、対照的な『幻の湖』という挫折。

  • 『羅生門』、『七人の侍』、『日本のいちばん長い日』、『八つ墓村』など、橋本忍が脚本担当した作品は何本か観ており、強く記憶に残っている
    その評伝を春日太一先生がまとめたということで、まあ面白い
    各作品の制作過程や裏話が山ほど出てきて、映画史としても貴重な記録
    "全身脚本家"の評伝としてあっという間の470ページでした
    表紙になってる『砂の器』は未見
    観たくなりました

  • すごい人物の生き方は、やはりすごかった。

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著者プロフィール

映画史・時代劇研究家。1977年東京都生まれ。日本大学大学院博士後期課程修了。映画界を彩った俳優とスタッフたちのインタビューをライフワークにしている。著書に『時代劇聖地巡礼』(ミシマ社)、『天才 勝新太郎』(文春新書)、『ドラマ「鬼平犯科帳」ができるまで』(文春文庫)、『すべての道は役者に通ず』(小学館)、『時代劇は死なず! 完全版』(河出文庫)、『大河ドラマの黄金時代』(NHK出版新書)、『忠臣蔵入門 映像で読み解く物語の魅力』(角川新書)など多数。

「2023年 『時代劇聖地巡礼 関西ディープ編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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