リサイクル幻想 (文春新書 131)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166601318

感想・レビュー・書評

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  • 2011年78冊目

  • 86点。最近は原発関連の発言が注目されてる武田センセ。原発以外でも地球環境問題に関しては10年以上前から自らの著書やメディアで世の定説とは異なる自説を主張し続けてきた。なんやかんやで環境バブルの恩恵を一番受けてきたのはこの人なのかもしれない。
    「ペットボトルは分別してはいけない」などは暴論にも聞こえるが、著書を読むと目からウロコ、です。リサイクルに関してセンセの立場は否定論者ではなく懐疑論者だ。限りなく否定論者に近いけど。
    いろいろ批判されてはいるものの、CO2削減だエコだエコだなんだってIPCCはやいやい言うけど、実はこういう意見もあるんだよ。というオルタナティブな道筋・価値観を示そうと敢えてやってる感じが僕は好き。
    なんでもかんでもリサイクルマンセー、っていう何も考えないリサイクル原理主義者を批判してるだけで、詰まるところセンセの主張はスタンダードで「物を大事に使おうぜ」なんだと思います。

  • [ 内容 ]
    リサイクルをはじめ「循環型社会」「持続性のある文明」などの新しいパラダイムは、全体を俯瞰し、統合する理論と思想を伴わなければなりません。
    もし、それらなしに目の前の波だけを見て舵をきれば、航海士と船長を失った船のように大洋をさまようことになるでしょう。
    本著では「来るべき循環型社会とは何なのか」を明らかにし、二一世紀の日本には「環境問題は大切だが、不景気もイヤだ」というジレンマが存在しないことを示します。

    [ 目次 ]
    1 なぜリサイクルが叫ばれるのか
    2 今のリサイクルは矛盾している
    3 リサイクルから循環型社会へ
    4 「分離の科学」から労力を知る
    5 「材料」と「焼却」の意味を知る
    6 来るべき循環型社会を考える

    [ POP ]


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    [ 参考となる書評 ]

  • ちょっと眉唾のこともあるが、きちんと科学的にリサイクルも進めなければならないことは著者の言うとおり。ただ、リユース、リデュースの議論なしにリサイクルのことだけで完結させようとする議論には無理がある。
    広い視点が必要であり、合理的でなければならないし、啓蒙的でもなければならない。地球環境への負荷を最小にする方法はとうやらそう簡単ではない。

  •  遺産型資源を使って紙をリサクルすことは不合理だ。同じ理由で繊維、草木、プラステック、ゴム(使えば劣化するモノ)も不適格だ。これらは焼却し、その熱を利用して発電するのが望ましい。ペットボトルのリサイクルを例に上げている。使用済みボトルを集め、異物を選別し、ラベルをはがし、洗浄したあと、新しいボトルを製造する過程で消費される石油の消費量は通常の4倍以上になる。これではリサイクルとは名ばかりの偽善的行為としかいえない。

     物欲をすてることでモノの使用年数をのばし、モノの材料となる資源の消費を抑えること。大量生産大量消費時代は終わりを告げる。根本的に企業のあり方を変えるこころみが必要なのだ。欧米のモノに囲まれる幸福とは別次元の価値観がそこにはある。

  • 最近自分的にエコブームが到来しています。
    が、たとえ自分のブームであってもブームには乗らない主義なので、相変わらずティッシュは無駄に使っていますし、シャワーは結構流しっぱなしですし、紙は無駄遣いしまくりです。偽善者上等。

    とは言え、少しずつでもなんかやってみれば、心持が変わるかもしれない、と思ってマイ箸を購入して使ってみたり、細かく少しずつやってみています。人間の心など、ちょっとした環境の変化、物質の変化であっさり変わってしまうものです。自分を心を変えるにはまず行動から。

    という感じで動いているのですが、日本のリサイクルのアポっぷりを伝え聞くにつれ、少々興味が出てきましたのでこんな本を読んでみました。
    いかに日本のリサイクルが幻想に基づく空虚なものかを語った本です。

    リサイクル幻想 (文春新書)/武田 邦彦
    ¥693
    Amazon.co.jp



    矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾・・・・
    これを読むと、地球を滅ぼすか人間社会が滅びるか、どちらかしかないような気がしてきます。

    「消費者の立場では何もできない」というのはよく聞く言葉で、私自身もよく言う言葉でした。しかし、立場を変えて企業から見ると「消費者・社会が望まないものはできない」というのも真実のようです。望まれないものは資本主義下では成立しないからです。

    結局、まずは100年からにわたって作り上げられた「消費者の意識」を変えるというところからやっていくしか手はないんでしょうね。ということであるならば、昨今のリサイクルブームというのは、直接的な環境への貢献という点ではおろかなことでも、消費者意識を変えるという点では大いにやるべきことなんですね。後はその意識を「局地的なリサイクルではなく、地球全体にとって」正しい方向に修正してあげることができればいい。
    もっとも、今の速度で動いてもとても追いつかないのかな、とも思いますが・・・

    さて、この本を読んで、自分の行動範囲内で自分にできること、を下記のように考えました。

    ・なるべくものは買わない。使わない。
    ・買うならなるべく中古品、また循環型の資源でできたものを。
    ・でも使ったものに関してのリサイクルとかはあんまり気にしない。リサイクルで無駄に資源使われちゃたまらない。
    ・上記を気にしつつ、とにかく普通に暮らす。

    ま、そんな感じですかね。上記を守って暮らせていれば、意識というやつも周り含めて多少は変わっていくことでしょう。精神を変えるにはまず行動から、です。


    ※気になるコトバ

    ・宇宙船地球号=地球は宇宙に浮かぶ小さな宇宙船であり、限りある境界条件を持っている存在であるという考え
    ⇒NHKの番組名かと思っていたんですが、違ったみたいです。あまりに地球がでかいものだから忘れがちですが、ありとあらゆるものには限界があり、 NASAのスペースシャトルをでっかくしたものでしかないんですね。限界は必ずある、って普段は忘れています。

    ・下位の用途がない矛盾
    ⇒ものは必ず劣化する。劣化したものをリサイクルするには、元のものより下位のものに転換する必要があるが、下位のものはそんなにたくさんイラナイ。(上位のもの=テレビとか、下位のもの=公園のベンチとか)

    ・リサイクルという行為は「消費する国で再び生産する」
    ⇒国内にものを入れ続け、出て行かないということなので、本来は貿易とリサイクルは矛盾する。じゃぁ、ごみを輸出する?

    ・持続性のある資源を繰り返し使うために、持続性のない資源を消費する行為
    ⇒持続性のある資源=紙、持続性のない資産=石油。これを続ければ石油は必ず無くなる。石油は復活しないから。紙は人の力でも森を育てれば取り戻せる。だったら再生紙ってやらないほうがいいんじゃ?
    ⇒途上国で森が減少する原因のうち、紙が原因のものはたったの3%

    ・ペットボトルをリサイクルしようとすると、かなり理想的にリサイクルが進んでも、・・・四倍近く石油を使うことになります。
    ⇒リサイクル率の計算のときに、運搬に使うトラックのガソリンなどが含まれていないことにより発生する勘違い。結果分別することで無駄に石油を使っている、という根本的な矛盾。


    ・リサイクルは環境を守り資源の枯渇を防ぐことをその目的としているので、環境にやさしいことを標榜する製造メーカーは「製造量、販売量を少なくする。製品の寿命を延ばす」ことに全力を尽くすはずです。 しかし、現実には本音で減産、販売量の減少を目標としている会社はまずありません。
    ⇒資本主義下では解決できない根本的な矛盾。儲けを減らすことが求められる社会。そんなものが実現できるんでしょうか・・・

    ・すべての石油はプラスチックに
    ⇒「石油→プラスチック→燃やす」こういう経路を通って最終的に熱エネルギーにするのが、全体でみると一番効率がいいようです。

    ・「プラスチックは燃やしてよいか」という問いに大してはもちろん「できる限り燃やしてください」と答えるのが正しいのです
    ⇒少し前までプラスチックは燃えないゴミ、でしたよね・・・

    ・真の循環を築くには 「解答の一 ・ 人工の鉱山を作る」
    ⇒再利用するべきもの(石油などの遺産型の資源)を全てごちゃ混ぜにして一箇所に集約して燃やし電力を作った後、灰にしてひとつの鉱山を作ってしまう。ゆくゆくは鉱山から資源を取り出して、製品を作っていく
    ⇒鉱山から出る、ある程度の毒を、日本の国民が許容できるかどうか、それが重要。(結局は誰が毒をかぶるか、という問題になっているのだが、他国に毒をかぶせることに慣れている日本人は、自分が毒をかぶることを受け入れられないのでは・・・?)

    ・真の循環を築くには 「解答の二 ・ 長寿材料を選び長寿設計をする」
    ⇒ものをなるべく作らない、ということ。
    ⇒日本の技術ならできるはずだが、日本の社会ではこれができない。これまた矛盾。

    ・真の循環を築くには 「解答の三 ・ 日本の気候・風土を利用する」
    ・真の循環を築くには 「解答の四 ・ 情報の物質削減効果を利用する」

    ・人類の活動を制限する最終的なものは「太陽の光の量」であること、それ以外のものとしては「遺産(型の資源・石油等)」と「核融合」の2つしかない ・・・ 石油、石炭、鉄鉱石などは、「遺産」である以上「持続性」とは矛盾するので、その使用量を無限小にしなければならない ・・・
    ⇒だから、原子力発電は超重要。人間が自然から得られるもの以上の生活を望むのであれば、自然から得られるエネルギーだけでは足りないのは必然。それでも循環型社会を作るならば、原子力しか使えるものが残っていない。

  • 使える新書 教養インストール
    使える新書21世紀の論点編

    081219より更新

  • 産業の急速な発展に伴い、環境破壊や資源の枯渇などの問題が表面化してきて、リサイクル、循環化社会の重要性がとりあげられるようになった。しかし現在のリサイクルの方法は社会全体を俯瞰する視点に書けているため、環境はより悪化する傾向にある。正しい知識を身につけるべし。

    基本的に材料は劣化する。劣化は自然劣化と循環社会特有の劣化の2種類に分けることができる。
    材料の構造の特性によってリサイクルの方法も変えるべき。
    1、金属  リサイクルに向いている。
    2、ガラス
    3、プラスチック(有機高分子)
    プラスチック←石油(古代生物)の変化でエネルギーはほとんど放出されない。

    現在は石油をそのまま燃焼して熱エネルギーを得ている一方でプラスチックはリサイクルしようとしている。これは非常に非効率。もし全ての石油をプラスチックにして利用した後、燃焼したとしてもほとんど同じ量の熱エネルギーを得ることができる。
    焼却は毒物を発生させるのではなく毒物を分解して浄化する。

    21世紀の循環社会のあるべき姿を考えるための3つのポイント。
    1、資源と活動力の関係を考える。熱力学の法則、すなわち活動するためには物質とエネルギーが必要であり、活動後には廃棄物は必ず出る。
    2、人類の活動を制限するものは最終的には「太陽の光の量」であり、それ以外では地下資源等の「遺産」と「核融合」しかない。遺産は持続性とは矛盾するのでその使用量は極端に制限されるべきだ。
    3、視野の広さを身につける。

    ある系での効率があがるということは系外部に損失が出るということ。

  • 環境については、ダークな部分が多く、あまり深入りしたくありませんね。

  • なんでもかんでもリサイクルと言うのは間違っているのです。よく考えてリサイクルしなきゃダメなのです。

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著者プロフィール

1943年東京都生まれ。工学博士。専攻は資源材料工学。
東京大学教養学部基礎科学科卒業後、旭化成工業に入社。
同社ウラン濃縮研究所所長、芝浦工業大学教授、名古屋大学大学院教授を経て、2007年より中部大学教授。
テレビ番組「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ)、「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日)などに出演。
著書『ナポレオンと東條英機』(KKベストセラーズ)、『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』3部作(洋泉社)他ベストセラー多数。

「2017年 『武田邦彦の科学的人生論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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