現代筆跡学序論 (文春新書 149)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166601493

作品紹介・あらすじ

書かれた文字から、書き手の人柄や書いた時の状態まで連想してしまう-そんな経験は誰もがあるだろう。機械による字とは異なり、手で書かれた文字は、単なる意味以上の何かを伝えてしまうのだ。しかし、本当に筆跡は人間性を表わすのか、書き手の時代やお国ぶりまで判るのか、筆跡は偽装できるのか、手筋は遺伝するのか、きれいな字を書くには、等々、「書く」ことをめぐる根本的な問いに、自由な考察を加え、「筆跡学」なる新しい学問を提唱する。

感想・レビュー・書評

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  • いわゆる筆跡鑑定の話は少なく、筆記文字の歴史を振返り現代に活かそうというもの。歴史言語学の色味が強い。
    題の「序論」に、筆者の一種の配慮を感じる。学会はおろか筆跡学そのものが学問として確立されていないためだと思う。

    文字の成立ちを知るヒントがたくさんあり、満足の一冊でした。

  • わけわかめ

  • さまざま示唆を与えられる良書。明朝活字が毛筆を元にしているという当たり前の事を忘れていた。また北朝の筆跡の厳しさと南朝のおおらかさの比較、ひいては関東関西の比較はすこぶる面白い。マークシート試験の導入による筆記機会の変化という指摘も大切だ。科挙に支えられた楷書の威厳が我が国では1000年前には忌避され行書中心に変わり、そこに筆脈の妙に重きを置く流儀が盛衰する。中国の格を意識した書法といわば個性重視の書道との対比。さらには、現代書家と称する者に対する「書表現が自己の内面を打ち出すものではなく、自己から離れて仮想する場になっている」指摘は適切である。また、楷書はその本質として遅く書くことが要請されるものであり、それを早く書けというのは「時代錯誤の模範性」であり、良く書きこなれている筆跡とは筆脈、気脈があり、筆者独特のバランスがあるものだという指摘も大変参考になった。新書としてはかなり進んだ記述で、書に関する総合的入門書としてすばらしいできばえ。

  • 著者の本はこれまでにも読んだことがあったけれど、この人があの酒鬼薔薇事件の時の筆跡鑑定をした一人だったとは!
    そして、筆跡鑑定なんて言葉も時々聞くから、さぞかしちゃんと成果が蓄積されているのか…と思っていたら、そうでもないとは!
    意外なことがたくさんあった。

    現代(といっても十年以上前)の学生でも、字が綺麗なことと人格を結びつける発想が残っていたりするなんていうアンケートも興味深かった。

    書に対する日中の意識の違い(「書道」と「書法」)の話は興味深かった。
    が、読み方が浅いのか、すっきり理解できた気がしない。
    日本人は書に関しては昔から字に人格を見てしまう発想が強いということか?
    中国があくまでも「書法」の習得に重きを置いているのが科挙の伝統の影響だとしているのだが…。

  • タイトルからは犯罪捜査なんかの筆跡鑑定の話かと思ったら、そうでもなかった。
    「酒鬼薔薇聖斗」の事件の筆跡を鑑定した著者による本だが、筆跡鑑定の話は最後の1/5程度。しかも古文書の肉筆の真偽調査などが多いようだ。ページの大部分は所謂「書」の話。歴史的・時代的な流行りのようなものから、現代人若者の筆跡についてまでの、著者の思いが綴られる。「序論」と銘打った割には、随筆に近い印象。王羲之や弘法大師の書を審美した直後に、「手書き文化が廃れた」「年賀状までワープロ」と、頑固おやじの嘆きが聞こえてくる。
    筆跡鑑定の重要性を述べてはいるものの、手書きの文字が極端に減ってきている中で、筆跡鑑定が今後どれだけ有効になっていくのかは微妙な気もする。

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著者プロフィール

魚住和晃(うおずみ・かずあき):1946年生まれ。神戸大学名誉教授。孫文記念館長。きび美ミュージアム副館長。日中の書道史を研究。筆跡鑑定でも知られる。東京教育大学芸術学科卒業。同大学院教育学研究科修士課程修了。文学博士。著書『「書」と漢字』(講談社学術文庫)、『現代筆跡学序論』(文春新書)、『書を楽しもう』(岩波ジュニア新書)、『書の十二則』(NHK出版・生活人新書)、『張廉卿の書法と碑学』(研文出版)、『書聖 王羲之』(岩波現代文庫)、『書道史 謎解き三十話』(岩波書店)、『マンガ書の歴史【殷~唐】』『マンガ書の歴史【宋~民国】』『マンガ「日本」書の歴史』(以上編著、講談社)など多数。

「2024年 『日本書道史新論 書の多様性と深みを探る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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