中国停滞の核心 (文春新書)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166609574

作品紹介・あらすじ

米中「G2」論が世界中を席巻したのも今は昔、中国経済が瀬戸際に追い込まれている。財政、投資ともバブル状態のなか、習近平体制が生き残りをかけて選んだ道とは?「7%経済成長」「16億人市場礼賛」「シャドーバンキング」「リコノミクス」をはじめ、「米中サミット」の成否、防空識別圏問題など、難問山積の中国問題、そして日中問題に処方箋はあるのか?『中国台頭の終焉』が話題を集めた当代随一のチャイナ・ウォッチャーが、膨大な統計データを基に読み解いた「中国のこれから10年」! ビジネスマン必読!【目次より】序章 瀬戸際の中国経済第1章 「7%成長」のまやかし第2章 「三中全会」への期待と現実第3章 これが三中全会決定の盲点だ第4章 「中国経済崩壊」は本当か第5章 「経路依存性」との闘い第6章 危機が押し上げた指導者・習近平第7章 米中から見た新たな世界――二冊の本を読んで第8章 「ポスト・中国バブル」期の米中日関係第9章 中国「防空識別圏」問題の出来第10章 安倍総理の靖国参拝第11章 中国「大国アイデンティティ」の向かう先第12章 当面の日中関係に関する提案――尖閣問題に関する私的な提言

感想・レビュー・書評

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  • これまでの本と主義主張は同じ。
    人民元は必ずしも高くならない。

  • たくさんのデータを使っているにも関わらず、非常に読みやすい本です。
    氏は、元官僚、ちょっと前は、会社の社長、今は、中国研究家と、相当な中国通だと感じられる経歴の持ち主です。

    氏の独特のユーモアが効いているのか、難しい中国経済の話しもスラスラ読むことが出来ます。

    日本では、「そろそろ中国経済が崩壊するのではないか?」、「不動産バブル崩壊!」、
    「一党独裁崩壊!」と、中国に関して、ネガティブ報道が主流ですが、どれも、
    根拠に欠ける気がしていました。

    どちらかというと中国の「反日」に対する少なくない日本人の「願望」のような気がしていました。

    氏は、統計データーから、中国経済の現状を解説しています。その語り口はユーモアですが、非常に論理的です。
    説得力が非常にあります。また、中国の統計データーの、「不確かさ」も考慮に入れている所が、
    より、説得力を増しているように思います。

    中国経済の崩壊に関しては、短期的に発生する可能性は非常に低いことがわかります。
    ただ、崩壊しないとは言っても、危機的な情況には変わりないと、分析しています。

    1 08年のリーマンショックに対する、景気刺激策として、4兆元投資したが、結果的にその財源を確保するために、
      金融緩和が行われ、 09年〜12年で「固定資産投資」として、総額110兆元!に膨れ上がった。
    これは、明らかに、過剰投資であり、現況の中国経済(特に 企業の過剰債務、物価上昇)に深刻な影響を起こしている。

    2 2012年11月の代18回党大会で20年までにGDP倍増、収入倍増を計画したが、
    それは、20年までに年率6.9%の成長がないと達成でき ない。
    しかし、現実的には、この目標は達成するのは困難である。それは再度、過剰投資をすることであり、
    新たな負債を増やす原因 になってしまうからである。
    ただ、「公約」と掲げているからには、達成しなければいかない。そのジレンマに中国経済が直面している。
    現実的に、投資を抑え、債務を減らす方向で動いた方がよい。4%の経済成長が現実的だろうと、氏は考えている。

    3 少子高齢化社会の到来。高齢者が増え、若者が減る。社会保障費は増え、労働者数の絶対数が減る。
    それが、急速に訪れる。中国が今 までの歴史で経験したことがない事態である。
    長期的安定のためにも、急務にこの問題を対処しなければいけないが、
    現状中国では「成長維持」に関心が行き、来たる高齢化社会への準備が不足している。

  • 巨龍の苦闘の前の津上さんの本。
    巨龍の苦闘で今の中国の見方のフラームワークを抑えることができたので、こちらは古い情報にもなるが、
    特に気になった考え方として、「経路依存」という考え方。
    国の制度や仕組みはその国がたどってきた歴史に依存するというもの。(第5章)
    中国は、その経路依存から脱却できるのかどうか見守っていきたい。

  • よくある中国本とは一線を画す。著者の情報量と的確な分析力は他を圧倒している。
    要点は、中国は今後急速な高齢化と人口減少で経済が失速し、GDPで米国を追い抜くことはない。ただしこれまでのストックがあるから、経済が一気に破綻することもない。共産党1党支配についても、中流層の現状維持慣性により、喧伝されるほど不安定化しない。
    本当にその通りだと思う。バブルというのはどんな時でもその最中では見えにくいものだが、さすがに今年(2015)に入って失速ぶりが誰の目にも明らかになってきた。中国政府も”新常態”として当の中国人民のセンチメントを変えようと必死である。一方南沙諸島では力で現状を変える動きが加速している。日本もこの厄介な隣国との付き合い方を考えるべきだ。

  • 最近バブル崩壊報道の多い中国ですが、本書は現在の中国の経済状態を解説しており、同国のおかれた状況を把握するに適した一冊と言えます。
    またそれ以外に、経済と言う観点から観た米中関係や両国の狭間にいる日本の姿を解説しており、東アジアにおける国際政治を考える際、大いに役立つのではないでしょうか。

    内容の方は、リーマンショック後に取られた景気刺激策の後遺症に苦しむ中国の現状や、様々な国内問題の解決を目指す習近平改革の内容とその問題点を解説した後、

    「経済に誤魔化しは効かない」、「国の盛衰は経済次第である」との考えに基づき、国際、国内政治における中国政府の事情や思惑、そしてアメリカの事情や思惑等を推測した上で、それらに基づき現在の米中関係は一体どの様な物であるのかと言った分析を行っています。

    また、この関係の実態、つまり米中両国とも今は自国の傷をいやす事に専念したく、相手との対立を引き起こしたいとは思っていない点をうまく把握できていない日本の現状に対して警鐘を鳴らしています。

    本書によれば、アメリカが日本の安全保障政策の変化を支持する理由は、平時は東アジアの勢力均衡を日本に任せ、有事の際に太平洋の向こう側から軍事力を急行させようと考えているからだそうです。
    尚、本書の分析を裏付けるものとしては、アメリカ軍のエア・シー・バトル構想大陸間飛行能力に注目したB-52の改装等が挙げられます。


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    そしてその上で、安部総理の靖国神社参拝が与えた日本の国益への悪影響や、中国が他国と折り合いの付けられる大国になる為の条件を解説し、最後に日中関係の改善策として、両国の間で10年間の冷却期間を設け、その間は互いに相手を政治的に刺激しない様にする事を提案して本書を締めています。


    今、日本ではアメリカの中国に対する態度への疑問、あるいはそれによって引き起こされた同国への不信感が渦巻いていますが、本書を読めば何故アメリカがこの様に行動したのかと言う点を含め、様々な事が把握できるかと思います。
    その為、本書は日本の今後について考える際、大いに役立つのではないでしょうか。

    現在の日米中3か国の関係を客観的に把握したければお勧めの一冊です。

  • 【これでも、まだ中国経済に期待しますか?】二ケタ成長が途絶え、馬脚を現した中国経済。習近平体制下の厳しい現実を、豊富なデータの分析を基に描き出す。ビジネスマン必読!

  • 中国ももはや貧しさからの脱却だけでなく、人権、環境、安全、公正を重視すべき時代に入った。
    水平的なクロスチェックという監督、ガバナンスが働かないのは、中国にそういう伝統がないから。県主義的体制では放棄や政策の厳格な執行を確保する仕組みも上から下への監督が中心となる。

    2008年のリーマンショック後、突然態度が強硬になり、周辺国との領土了解紛争が多発し始めた。

  • 中国の停滞は一過性ではないよ・・・
    中国経済は瀬戸際あるよ・・・
    著名な中国ウォッチャーの新刊・・・
    リーマンショック後、苦しむ先進国を尻目に高成長に返り咲いた中国・・・
    今後も高成長を続け、2030年までにはGDPでアメリカを追い越すとまで見られていたけども・・・
    シャドーバンキングの問題がクローズアップされるなど、ここ最近どうも変調を来たしている・・・
    短期的には下記の後遺症の問題、中期的には国有企業が幅を利かせる非効率な経済による生産性の低下、長期的には日本と同じく少子高齢化から来る人口オーナスの増大・・・
    前著で中国台頭の終焉を予見した著者だけれども、今回はその続き・・・

    リーマンショック後の4兆元投資&金融緩和で製造業、インフラ、不動産といたるところで爆発的な投資ブームが起こり、経済が劇的に持ち直したけれども、今度はその後遺症が・・・
    後遺症としては・・・
    まず過剰投資問題。過剰設備、製品価格の値崩れ、ゴーストタウン現象、地方政府のインフラ投資を一気に先食い。
    次に過剰債務問題。先進国は政府債務が急増したけど、中国では民間債務が急増しているのが特徴。企業と地方政府がキてる。
    さらに(賃金上昇したけど)物価も不動産価格も上昇。公式統計以上に国民生活を圧迫している。
    そしてシャドーバンキング問題。社会融資総量のかなりの部分をシャドーバンキングが占めてきている。物価上昇に比べて銀行金利が規制のせいで低く抑えられているので、シャドーバンキング経由の資金調達、理財商品として投資が急拡大。借り手の方は何とか高利で資金繰りしているけれど、破綻企業も出てきたようで、投資家が理財商品を嫌って資金が集まらなくなったら・・・信用縮小?
    がある・・・
    こういった後遺症があるなかで、経済が高い成長率を維持するのが難しくなってきた・・・
    中国の生産年齢人口は既に減少期を迎え始め・・・
    しかもルイスの転換点を迎えたことで、人手不足が拡大し、人件費の高騰は止まらない・・・
    もはや潜在成長率は7%を下回っているんじゃないか、と著者は言う・・・
    高い経済成長率の半分以上は投資の伸びで支えられており・・・
    つまり投資を拡大していけば潜在成長率以上の高い成長率を(無理やり)維持できるけども、先ほどの後遺症がさらに悪化するばかり・・・
    これ以上の悪化は恐怖・・・
    でも高い成長率は続けたい・・・
    でも・・・
    おお、なんというジレンマ・・・
    中国さん、追い込まれているよ!!!

    それに対して、習近平政権もまずは李克強のリコノミクスを経て、去年の秋に開催された三中全会でかなり大胆な改革が謳われた・・・
    この習近平の改革が成功すれば中国も安定成長に移行できると思われるが、できなければ・・・
    これに対して著者の解説、見立てが書いてあるので興味があればゼヒ・・・

    そして巷でよくある中国経済崩壊についても書かれている・・・
    著者の予測では短期の中国経済崩壊はない・・・
    債務は先進国に比べるとまだまだかなり少なく健全・・・
    噂のシャドーバンキングを含めても全然マシな方・・・
    ただ、もちろん家計や企業、地方政府で急増しているのは問題だけど・・・
    でもとにかく中央財政が他国と比べてバツグンに良いというのは強い・・・
    何かあっても中央財政でカバーできる・・・
    そして政府の経済のグリップ力も強い・・・
    これらから考えると短期的に崩壊というのは考えにくい・・・
    『ブラックスワン』さえ現れなければ・・・

    あとは・・・
    習近平についてや・・・
    米中日関係や・・・
    昨年騒がれた防空識別圏や・・・
    安倍総理の靖国参拝や・・・
    尖閣問題なんかについても書かれております・・・

    今の中国経済について知りたいなら・・・
    中国について考えるなら・・・
    この本はオススメちゃん・・・
    さすが津上さん・・・

  • タイトルだけ見ると嫌中論のような印象を受けるかもしれませんが違います。むしろきわめて建設的な日中関係を描いている本だと思います。両国民、現在は頭に血が上っているかもしれませんが、こういう本を読んでちょっとクールダウンさせるのも必要ではないでしょうか?

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著者プロフィール

日本国際問題研究所客員研究員、現代中国研究家
1958年生まれ。1980年、東京大学法学部卒業、通商産業省入省。通商政策局公正貿易推進室長、在中国日本大使館 経済部参事官、通商政策局北東アジア課長を歴任。2002年、経済産業研究所上席研究員。東亜キャピタル取締役社長を経て、2012年より津上工作室代表。2018年より現職。

「2022年 『米中対立の先に待つもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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