第三次世界大戦はもう始まっている (文春新書 1367)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166613670

作品紹介・あらすじ

 ロシアによるウクライナ侵攻を受けての緊急出版。
 戦争を仕掛けたのは、プーチンでなく、米国とNATOだ。
 「プーチンは、かつてのソ連やロシア帝国の復活を目論んでいて、東欧全体を支配しようとしている。ウクライナで終わりではない。その後は、ポーランドやバルト三国に侵攻する。ゆえにウクライナ問題でプーチンと交渉し、妥協することは、融和的態度で結局ヒトラーの暴走を許した1938年のミュンヘン会議の二の舞になる」――西側メディアでは、日々こう語られているが、「ウクライナのNATO入りは絶対に許さない」とロシアは明確な警告を発してきたのにもかかわらず、西側がこれを無視したことが、今回の戦争の要因だ。
 ウクライナは正式にはNATOに加盟していないが、ロシアの侵攻が始まる前の段階で、ウクライナは「NATOの〝事実上〟の加盟国」になっていた。米英が、高性能の兵器を大量に送り、軍事顧問団も派遣して、ウクライナを「武装化」していたからだ。現在、ロシア軍の攻勢を止めるほどの力を見せているのは、米英によって効果的に増強されていたからだ。
 ロシアが看過できなかったのは、この「武装化」がクリミアとドンバス地方の奪還を目指すものだったからだ。「我々はスターリンの誤りを繰り返してはいけない。手遅れになる前に行動しなければならない」とプーチンは発言していた。つまり、軍事上、今回のロシアの侵攻の目的は、何よりも日増しに強くなるウクライナ軍を手遅れになる前に破壊することにあった。
 ウクライナ問題は、元来は、国境の修正という「ローカルな問題」だったが、米国はウクライナを「武装化」して「NATOの事実上の加盟国」としていたわけで、この米国の政策によって、ウクライナ問題は「グローバル化=世界戦争化」した。
 いま人々は「世界は第三次世界大戦に向かっている」と話しているが、むしろ「すでに第三次世界大戦は始まった」。ウクライナ軍は米英によってつくられ、米国の軍事衛星に支えられた軍隊で、その意味で、ロシアと米国はすでに軍事的に衝突しているからだ。ただ、米国は、自国民の死者を出したくないだけだ。
 ウクライナ人は、「米国や英国が自分たちを守ってくれる」と思っていたのに、そこまでではなかったことに驚いているはずだ。ロシアの侵攻が始まると、米英の軍事顧問団は、大量の武器だけ置いてポーランドに逃げてしまった。米国はウクライナ人を〝人間の盾〟にしてロシアと戦っているのだ。

感想・レビュー・書評

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  • 約1年半前に書かれた、ロシアウクライナ戦争を中心に世界の動向を考察した本です。
    そもそもこの戦争の経緯とは何なのか、ロシアがウクライナに侵攻した理由とは。
    ミアシャイマーの見解も時折交えており、現実的観点から俯瞰して世界の構造を理解できる本です。
    最近発売された、エマニュエル・トッドの「西側の敗北」も日本語翻訳本が発売されたら読みたいと思いました。

  • 小国のウクライナがロシア相手に長期戦を展開できているのは、アメリカとイギリスが軍事支援を続けてきたからである。両国は開戦前からウクライナに軍事的なテコ入れをしてきた。アングロサクソンこそ、世界を不安定にする最大の要因だろう。
    https://sessendo.hatenablog.jp/entry/2024/02/24/140549

  • 面白かった。中国のニュースの合点が行った。

  • 筆者の指摘する情報の偏りはボンヤリと認識してニュースを見てきたが、その向こう側を考察している本書の指摘は非常に興味深い。
    その上で、ポストウクライナ戦争を考えた行動がこれから必要だ。特にアメリカの行方は、結局無視できないという事。大統領選挙だけでなく、アメリカによる経済や世界政治への影響を常にモニタリングして、欧州を考えていきたい。
    ロシア上空を飛べずに大きく迂回して長時間のフライトする機中で読了したのも、何かの縁だろう。

  • なるほどな〜 こういう見方をする人もいるのか〜と、新鮮な発見があった

    筆者は言わずとしれたエマニュエル・トッドさん
    フランス人の政治学者

    本書では、ウクライナとロシアの戦争について。すでに第三次世界大戦は始まっている!と筆者は説く。

    たしかに、ウクライナのバックにはアメリカとイギリスがいる。
    兵士訓練と武器供与を行っているのだから、これはちょっとした世界大戦と言っても良いのかもしれない

    そもそも、私たち日本人は西側の人間だ
    ウクライナに関するニュースというのは、基本的には西側からの観点で伝えられる

    ロシアにはロシアの言い分がある
    戦後から世界秩序のためにコストを払い続けてきた 本来はロシアなりのプランがあった それが果たせずに、侵攻を開始した…というのが筆者の持論なんだけど、ちょっと世界をフェアに見すぎている気はする
    つまり、戦争犯罪を軽んじている
    さすが、本国フランスでは出版できない内容…

    アメリカは世界で戦争をしていてほしい 軍事大国として君臨し続けるため
    その視点は確かに… と思わざるをえない
    さらに筆者が言う、日本が核保有すべきとの主張は、納得感がある
    核保有は戦争をするためではなく、戦争ゲームから逃れるため

    さすがのエマニュエル・トッドさん
    サラッとカジュアルに、地政学的な現況を解説する
    ロシア寄りと感じる読者もいるかも知れないけれど、国際政治の書籍としてオススメと言えばオススメ

  • 中国のロシアバックアップ。アメリカがウクライナを利用し、欧州の弱体化を行います。
    世界の安定化が崩れています。

  • 私はトッドさんが好きである。
    だからこそ盲信したくないし、崇め奉りたくない。

    読んでて違和感あるな、ってところは違和感のまま残したいし、素人ながらも自分で調べて考えたい、と思っている。

    以下、書きかけ

    ロシアを擁護する気は無いけれど、ロシアにも言い分があるし、反ロシアの国って意外に少ないんだね…という現実を直視できた。

    そしてウクライナにもネオナチな側面がたしかにあったんだな、とも思った。

    ホロドモールの悲劇についてちろっと記述があったので、ネット検索してみた。
    スターリンが外貨を得るために、ウクライナ(ソ連時代)から農作物を過剰に収めさせて輸出したことで、また天候不良も相まって、国民は大飢饉に陥った。子殺し、食人も起こった、というショッキングな事が書いてあった。
    この話題に関しては、ウクライナが核家族型だから〜というのを織り交ぜて書くのは、違うかなと思った。

    ウクライナについてはやはりよくわからなってない部分が多いなと思う。

  • 巻末のウクライナ人の、アメリカに対する主観が的をいてる。

    西側からの考察として、面白い。

  • 本来避けられたウクライナ戦争の原因と責任はプーチンではなく米国とNATOにある。事実上、米露の軍事衝突が始まり「世界大戦化」した−。歴史家エマニュエル・トッドがウクライナ戦争と米露欧の状況を冷静に読み解く。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40288729

  • 西側からでない貴重な見方
    その昔、荻野先生が湾岸戦争時に物事は両面から見るべきと言っていたのを思い出す

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著者プロフィール

1951年フランス生まれ。歴史人口学者。パリ政治学院修了、ケンブリッジ大学歴史学博士。現在はフランス国立人口統計学研究所(INED)所属。家族制度や識字率、出生率などにもとづき、現代政治や国際社会を独自の視点から分析する。おもな著書に、『帝国以後』『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』などがある。

「2020年 『エマニュエル・トッドの思考地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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