ルポ 食が壊れる 私たちは何を食べさせられるのか? (文春新書)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166613854

作品紹介・あらすじ

ワクチンレタス、人工肉、ゲノム編集、デジタル農業……
あなたの食べ物は知らぬ間に入れ替わっている!

ベストセラー『デジタル・ファシズム』の著者が暴く〈フードテック・ファシズム〉

・もう牛は殺さない「人工肉バーガー」
・粉ミルクはもう古い! 赤ちゃんは培養母乳で
・「ふるさと納税」デビューしたゲノム編集魚
・〈原子力ムラ〉の次は〈ゲノム編集ムラ〉!?
・〈デジタル農業アプリ〉の真の目的とは
・食が〈特許〉で支配されるディストピア
・地球の砂漠化を防ぐにはバッファローを見よ!
…etc.

巨大資本が仕掛ける強欲マネーゲームーー〈食の文明史的危機〉を描き出す衝撃作!

感想・レビュー・書評

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  • 何気なく食べている食品に危険が迫る。

    人工肉バーガー、培養母乳、ゲノム編集魚、デジタル農業。人工肉は動物も殺さず環境にも優しいと思っていたが添加物たっぷりで人体には良くないという説明に驚愕。三方よし!の成立は難しい。コストの問題もある。

    裁判沙汰になったグリホサート系除草剤やミツバチの大量死との関係が指摘されるネオニコチノイド系農薬を減らす代わりに、今後、RNA農薬やゲノム編集、デジタル農業が浮上してくる。

    ゲノム編集により光合成の効率を高め、取り込む炭素量を30%増量する新種の植物を作るプロジェクト。おいおい、これは大丈夫かと心配になる。

    日本政府は2050年までに有機農業の面積を今の50倍に増やす「みどりの食料システム戦略」。これは、政府が農薬と化学肥料を禁止したため収量が激減し経済破綻に繋がったスリランカを思い出す。読めば読むほど不安が高まる。

    食のトリアージ。富裕層のみ健全な食事にありつける未来は避けて欲しい。正しい知識と法整備を。

  • フードテック・ファシズム

    デジタルテクノロジーが、これまでの伝統的な食は破壊し、世界の少数の大資本が農業を支配していくことに警告をならしていく。

    農民がいなくても、AIがデジタル農業を営み、土がなくても、野菜は育ち、鶏や、豚や牛や乳製品をうみだしていく。

    牛肉を作るためには、環境破壊につながるために畜産をゼロにしろ。肉は人工に合成すればよい。
    培養肉については、世界ですでに研究が始められていて、日本は遅れている。

    遺伝子組み換えやゲノム編集を施された食は、可能性も未知数だが、安全だという確証もまた存在しない。

    日本のトレーサビリティは海外でも高く評価されている。

    ゲノム編集された食品についての表示義務はない、だから、多くの日本人に知らされていない。
    精密発酵、遺伝子操作といった文字は、いっさい表示にはない

    零細農家が大資本によって追いやられている。

    農に多様性がない地域ほど、紛争や、異常気象などの有事に弱いという現実は、新型コロナやウクライナ紛争で明らかにされた

    外資のアグリビジネスばからが利益を得る一方で、大規模化によって経費が増えた農家の収益は減っていて、結局飢餓は解決していない

    ビルゲイツや、ウォーレン・パフェット、ジェフ・ベソスら億万長者たちが、農地を買いあさっている。

    全米の農地の半分以上は、超富裕層の投資家が所有していて、生産しているのは、雇われの農家や農業スタッフになっている。

    ウクライナのアグリビジネス、オリガルヒによる土地の買い占めや、外資の農業ビジネスへの参入には、ゼレンスキーがかかわっていた。

    日本も、TPPの中に、「外国人にも日本人と同等の権利を与える」というルールがあり、外国人の土地所有に対する規制を架けられなくなっている。

    モンサントらが、火薬に割り当てるべき窒素酸化物を、肥料として農業に投入することを考え出した。

    投入した肥料はやがて、土地を痩せさせ、微生物のいなくなった農地は打ち捨てられることになっていく。

    牛を育てることが悪いのではなく、悪いのは、一か所で集中的に育てることだ。放牧し、群れで移動しながら育てれば、土壌再生が行われ善い結果ができることがわかってきた。

    SDGsには土壌ということばはでてこない

    目先の利便性と引き換えに、何百万もの、小規模農家が、中央で管理された巨大なデジタルネットワークの傘下に統合されていく、新しい食システムは、植民地的な性質をもっている。

    多国籍企業群による、国連食料システムサミットの乗っ取りは、その序章であった。

    農業改良の鍵は、土壌と微生物にある。その土地の風土に一番ぴったり合った微生物を育てる。

    キーワードは日本人の誇る<発酵文化>だ

    農薬を使わずに、微生物で土壌を肥沃にする。

    日本の土の多様性は世界一なんです。

    土地で輪作をする、雑草でもいいから、休耕地には何かを植えて養分を蓄積させる

    アグロエコロジーでは、近代農法とはちがって、画一のマニュアルは用意できない

    韓国は世界5位の種子の貯蔵国、10万種の種子を保存している。

    結論:
    世界的に問題のある気候変動の最大の原因が、現代人の「食べ方」にあり、土壌機能を蘇生させ、自然状態に戻すことが再生の鍵だということが腑に落ちるようになった。

    目次

    はじめに
    第1章 「人工肉」は地球を救う?―気候変動時代の新市場
    第2章 フードテックの新潮流―ゲノム編集から食べるワクチンまで
    第3章 土地を奪われる農民たち―食のマネーゲーム2.0
    第4章 気候変動の語られない犯人―“悪魔化”された牛たち
    第5章 デジタル農業計画の裏―忍び寄る植民地支配
    第6章 日本の食の未来を切り拓け―型破りな猛者たち
    第7章 世界はまだまだ養える―次なる食の文明へ
    おわりに
    参考文献一覧

    ISBN:9784166613854
    出版社:文藝春秋
    判型:新書
    ページ数:320ページ
    定価:900円(本体)
    発売日:2022年12月20日第1刷発行

  • Mika Tsutsumi Official Web site|堤未果オフィシャルウェブサイト
    http://www.mikatsutsumi.org/sp/books/

    文春新書『ルポ 食が壊れる 私たちは何を食べさせられるのか?』堤未果 | 新書 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166613854

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  • S図書館
    2019年から3年かけ著作
    著者は海外生活で、消化器系に深刻な障害を抱えてしまった
    日本に帰国し、腸内蘇生治療+発酵食を実施したところ、症状が治まったそうだ
    その経験を通して食を探訪した
    前著「日本が売られる」と類似点もあり

    《内容》
    人工肉、培養肉はあくまでも加工肉
    遺伝子組み換えサーモン
    表示もなしでOKのゲノム編集野菜、ゲノム編集魚
    農地を買うのは投資家、雇われ農家
    新品種穀物、化学肥料、農機具一式を買った先は土地の荒廃
    牛は悪くない、問題は育て方

    日本で救いの取り組みを紹介
    有機給食
    土壌革命は高機能炭
    菌ちゃん野菜(生ゴミリサイクルの野菜)で幼児の体が激変

    《感想》
    ルポなので、具体的数字を使って当たり前なのだが、ネガティブのオンパレードでさすがに疲れた
    それだけ安全性に乏しいことを語っていた
    後半に光を射した内容が日本のことで、昔ながらの栽培の取り組みをしていて誇らしいと思った
    当たり前だが土の中の微生物は必須なのだ

    各国の土地を投資家が買っているという現状は、日本でも人ごとではない
    農家の高齢化はターゲットに値する
    守るためにはどうしたらよいのか課題だ

    自分の体験だが、草を刈ってそのまま山積みにして、数週間後見てみた
    するとミミズや昆虫はいるわ、何かの幼虫はいるわ、そこだけ肥沃になっていて驚いたことがあった
    まさに微生物が発生し、それを求めてミミズや昆虫が寄ってきた証拠だろう
    久しぶりに見た元気な昆虫に楽しくなった笑

  • モンサント(現バイエル)を巡る話はなんとなく知っていたつもりでいたが、アグリビジネス、というか肉も魚なども含めたフードテックの最新情報には正直驚きました。
    ゲノム編集食品がすでに市場に出回ってたことさえ知らなかったが、食をめぐる世界市場にGAFAMをはじめとする巨大企業も参入し、農地の買い占めから衛星を使った農作物管理まで、すごいことになってます。
    そのあたりの世界と日本の動向が、手短にまとめられていてとてもわかりやすい。それらの現実にかなり絶望的な気分にさせられる。
    だが、希望もある、という話。
    いや~、久しぶりに興味深いルポでした。

  • 遺伝子組み換えもイヤだが、ゲノムでつくる食料なんて食べたくない。その表示もいらないなら食べない選択も出来ない。ちゃんとしたものを食べたい。
    農業に持ち込まれるマネーゲームで、わからないものを食べさせられる、土地や家畜も健康で無くなって行くのが恐ろしい。
    それでも牛を元気に活かした放牧や土壌を強く元気にする農法が有るというのが救いに見えた。
    選挙でも、農業と食をどうする候補なのか見極めたいですね。

  • タイトルが良くない。これは「農業ショック・ドクトリン」と名前を付けてほしかった。(もちろん、中身は素晴らしいです。)

  • 食のテクノロジーは、食糧問題に限らず環境負荷低減など様々な問題を解決する素晴らしい技術と考えていたが、負の側面も大いにあることに気付かされた。

  • 気候変動の時代にあって、今まで食べていたものが採れなくなる。そんなことが現実に起ころうとしている。
    その前に様々な手を打とうとして、ビジネスが立ち上がろうとしている。が、それは、我々にとって正しい道なのだろうか。

    このルポを読むと、見えないところで動いている策略に恐怖すら覚えてしまう。
    一握りの大資本企業の作り出す作物が、食の多様性を奪い、一時的に収穫量が増えたとしても、その結果逆の未来を迎えてしまうことにもなりかねない。
    しかし、こうした企業に対抗し、有機栽培による多様性を維持しようとする人々もいることが救いである。

  • 新資本主義的な食の搾取に対して痛烈な批判が書かれている。目から鱗だったが、中立的な視点から書かれているのか少し疑問点もある。搾取に対して市井の我らができることは何か考えさせられる。

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著者プロフィール

堤 未果(つつみ・みか)/国際ジャーナリスト。ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒業。ニューヨーク市立大学院国際関係論学科修士号。国連、米国野村證券を経て現職。米国の政治、経済、医療、福祉、教育、エネルギー、農政など、徹底した現場取材と公文書分析による調査報道を続ける。

「2021年 『格差の自動化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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