菜の花の沖 二 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2000年9月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784167105877

みんなの感想まとめ

多様な人間模様と経済の変遷を描くこの物語では、主人公の嘉兵衛が放浪の身から船員として成長し、さらには商売人へと変貌していく過程が描かれています。彼の出世譚は、実力主義の厳しさを感じさせる一方で、江戸中...

感想・レビュー・書評

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  • ▼2巻。嘉兵衛は乞食のような放浪民から兵庫で「船員さん」になる。まだまだ貧しい。ところが優秀である。フリーの特殊技能者としてごりごり出世する。このあたり、農村の秩序のなかで陰湿にいじめられていた前史に比べて、実に爽快に実力主義です。このあたりは、現代でも同じでしょう。なんであれ商売や生産や、工事や料理などの「現場、最前線」では、役に立つ立たないが、学歴や所属会社と関係なくずる剥けに見えてしまう。

    ▼そして嘉兵衛は、「フリーのイチ労働者」から、「船(ぼろだけど)という資本?を所有する商売人」へと変貌していきます。このあたり、言ってみれば出世譚ですね。多少のわくわくがありますが、それだけに流されない晩期司馬節。主人公の出世と活動範囲の拡大にしたがって、江戸、隠岐、秋田…と「日本各地の江戸中期の経済と暮らし」の風景を見せてくれます。それが「わくわくしない」とする読み方ももちろんあるでしょう。でも、今の自分的には実に惑溺する読書の快楽だったりします。

  • レビューは最終巻の予定

  • 二巻終盤部、嘉兵衛が故郷の地を再び踏む場面は万感の思いで読み進めた。

    嘉兵衛が吐き出されるかのようにその地を追われたとき、彼の胸には憎しみと辛さがあらゆる肯定面を覆ってしまっていた。その後彼がその故郷の湊が困るほどの大船でもって乗り付けるまで、ほんの数年のことである。その数年の間に嘉兵衛がなし得たことによりその故郷の純粋な人の群れは純粋な気持ちで頭を下げるのである。日本人という群れの醜い部分ときらいになれない部分を、この下りの感情の浮き沈みの描写がうまく汲み取ってくれているような気がした。

    さて、嘉兵衛が懸ける千石船への夢の実現もすぐそこ。彼の行動範囲の輪がどんどん大きくなってきていることを感じずにはいられず三巻へ!

  • 戦国大名や幕末の志士を主人公にした小説が目立つなかで、司馬遼太郎にしてはめずらしく、民間人である廻船商人・高田屋嘉兵衛を主人公にした長篇小説。この高田屋嘉兵衛という人物については、わたし自身はゴローニン事件の一方の当事者として、日本史ですこしだけ習った記憶があったが、ラクスマンやレザノフといった海禁政策下におけるほかの来航者と、それに対して幕府がどのような対応を行ったかという一聯の流れのなかで教わるため、個個の案件や人物については詳しくは知らない人が多いのではないであろうか。わたしもほとんど名前だけしか知らない状態で読み始めたが、この嘉兵衛という人物がじつに魅力的で、なぜいままでもっとよく知らなかったのだと後悔するほどである。嘉兵衛はたんに巨万の財を築きながら、不運にもロシア艦船に拿捕されてしまった被害者というわけではない。嘉兵衛は拉致された人質という立場にありながら、坐してただ助けを待っていたわけではなく、みずから事件解決の糸口を切り開こうと尽力する。突然言語もわからぬまま極寒の地に連れられてきて、希望を失わないどころか事態を理解して日露交渉に活路を見出したその姿勢には舌を巻くばかりである。また、事件に至るまでの前半生もすばらしい。「百姓は生かさず殺さず」という言葉に象徴されるように、江戸幕府がさまざまな規制によって農民を締めつけていたことは有名な話であるが、こと商人に対しても例外ではなく、たとえば船舶の建造にかんしても、じつにさまざまな制約があり、他国に見られるようなより技術的に発達した種類の船の建造は禁じられていた。嘉兵衛はこのような規制を率直におかしいと感じつつ、禁を侵さずにできるだけ最適の構造を追求して建造するなど、開明的な思想の持主であった。開明的といえば蝦夷地開発においてもそうで、当時まだ寂れた漁村に過ぎなかった箱館にその航海上の利点を見出し、開発に尽力したほか、松前藩が非人道的な扱いをしていた土着のアイヌに対しても、ちゃんと人間として尊重して、漁法を教えるなどの交流があった。こんにち、嘆かわしいことにいまだにネット右翼などのあいだでアイヌに対する差別が見受けられるが、いまから200年以上前の高田屋嘉兵衛のほうがよっぽど進歩的な考えの持主であった。嘉兵衛の行動については、それぞれ人質として助かりたい一心からどのように振る舞うことが最適か考えただけに過ぎない、あるいは商人としてひたすらに利益を追求した結果としてこのような姿勢になっただけである、という側面もないとはいえないかもしれないが、たとえそうであったとしてもやはり偉大な人物であることには変わりがないと思う。司馬遼太郎はよくもまあ、教科書にちょっと名前が出てくるだけの商人がこのようにすばらしい人物であるということを「発見」したものである。

  • やっと東北まで行きましたね。司馬さん、ここまで長すぎ!でも、このしつこさが後で効いてくるんでしょうね!
    まさに粘膜の一冊。文化論入ってましたね。本巻で都志浦の纏めはできたのでは?次巻は広く羽ばたく巻になることを期待しています。

  • 海をつなぐ者たちの幕明け
     歴史説明がストーリーをまたぐ。その註釈的を飛ばしてもいいし、じっくり読むたのしみもある。
     たゆたふやうな気持になりながら、嘉兵衛が船をもち、兵庫から日本ぢゅうを廻る船頭としての、序章にすぎぬはじまりを読んだ。

  • 大河小説の二巻目、嘉兵衛が船乗りとして、多くの人に助けられて成長して行く姿は読んでいて楽しい。
    途中、司馬氏の歴史観や思想が入り、更に時代背景の知識が深まる。

  • 2巻は嘉兵衛が自分の船をゲットして、故郷の人々と和解するまで。

    嘉兵衛は筏で冬の過酷な海を渡って江戸に行ったり、秋田に木材を取りに行ったりと名声を高めていく。隠岐に流されるところは、手に汗握るように読んだ。

    船頭として活躍する嘉兵衛なら、帰郷は「錦の御旗を飾る」ようなものだったろう。現に、身分差のある弟と庄屋の娘さんの結婚が決まる。

    また、2巻では、当時の日本の風景や産業の広がりが活写されていて面白かった。

  • 歴史的な説明会が多すぎて、どうもハマれず2巻目で挫折…

  • 104

  •  嘉兵衛が,小さいながらも自分の船を手に入れ,いよいよ海に乗り出すという場面が描かれる。
     紀州の丸太を江戸まで届けるという大役を引き受ける嘉兵衛。丸太を筏に組み,そこに帆,舵,船室などを設け,荒波を超えていく…という場面は,映画にすると手に汗握る画像になることだろう。
     1巻同様,いろいろなミニ知識が出てきて,なかなか為になる小説だなあ。わたしが読んでいるのは,単行本の方である。

  • 江戸時代後期に廻船業者として活躍した、高田屋嘉兵衛の伝記小説、第2巻です。
     
    二十代前半の嘉兵衛が、兵庫の廻船業者で働くシーンから始まります。
    船の操縦者と、事務方の双方をこなす、嘉兵衛青年。
    瀬戸内海を起点に、江戸や九州など遠方への航海を経験し、見聞を広めていきます。
     
    この第2巻では、船乗りになった嘉兵衛が周囲の人に認められ、廻船業者として独り立ちしていく日々が描かれています。
     
    自然相手の、船の仕事。
    需要がありながらも、様々な制約がある、この時代の日本の船乗り。
    操船技術も整っておらず、度胸頼りの部分が大きい、長距離航海。
     
    そんな船乗りたちの活躍によって商品が行き交う、江戸後期の商品の流通。
    嘉兵衛が寄港した街々は、どのような産物を扱い、どのような雰囲気だったのか。
     
    嘉兵衛の日々の描写を通して、江戸時代の経済の成り立ち、さらには身分制度といったことまで、学ばせてもらいました。
     
    第3巻も続けて、読みたいと思います。
     
    『菜の花の沖 (1)』
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/4167105861
     .

  • 高田屋嘉兵衛の生涯を描いた全6巻中の第2巻。中古の船を得た嘉兵衛は船乗りとして日本海を北上、海に躍り出る。

    江戸時代後期、士農工商の身分からは外れた船乗りはコメとは別の貨幣経済の立役者である。身分制度の足枷から抜け出た嘉兵衛、1巻で切ない場面が多かった分、2巻は広い海へ躍り出る開放感が素晴らしい。

    兵庫から瀬戸内海を経て遠路秋田まで。当時の西回り航路を辿る記載が、紀行文的に楽しめる。

    太平洋の黒潮沿いに広まったと思われる海洋民族。日本人のルーツの一つであろう。日本海沿いにもその文化は散らばって残存しているようだ。裏日本ではなく江戸時代は日本海側が北前船の航路で表であったとのこと。

    嘉兵衛の夢は蝦夷地との交易。優れた船大工との出会いもありいよいよ大型船の建造に乗り出す。
    追われるかのように逃げ出した故郷に錦を飾り、順調なストーリー展開。

  • 彼が船乗りなのに関わらず
    決して言葉が荒くないこと。
    そう、彼は貧しさゆえに受けた不条理を知っているから。
    痛みを知っているんですよね。

    だからこそ決して部下をいびって
    育てようとはしないのです。
    これ、現代でもできない人がいますよね。
    不条理な扱いをしても、部下は育たない。
    でも力を持つと人はおかしくなるのよ、よくね。

    最後のほうには嘉兵衛はついに故郷に帰ります。
    因縁の場所。
    だけれども恥じない活躍をした嘉兵衛を
    決して故郷は残酷な扱いをしませんでした。

    そして、もうそれは不相応な縁談を
    ほかの兄弟に取りつけることができたのです。
    それはひとえに派手な活躍でなくても
    部下を大事にした嘉兵衛だからこそでしょう。

  • 陸からはみ出たものという自意識と、船を持って松前にゆくという大きな野望のせめぎ合いを、波間に漂う船のように描く。

    作中、各地の港や航路の話が出てきて興味深い。特に酒田、最上川のあたりは気になるところである。陸の中での歴史しか見ていなかったのだなーとこの冒険小説とも言える作品を読んでいて、目からウロコが落ちる思いである。海には道があって、高い山に閉ざされていても、そこに一足飛びに行けるという。重い荷物も、海だからこそ運べる。
    陸送を充実させてきたのはたかだか100年にも満たないのではないか。

    そして、ドローンによる輸送の時代、空の道が開かれつつある。
    そんなことを思わせる小説である。


  • 徐々にのしがっていくところ。

    リスクをとって = 生命をかけて、そして、やりきらんと、物語は先には進まんのですな。

    そして、クルーを弟にすればいいかっていうところ、なかなか味わい深い。

  • 二巻読了。

    船頭としての実績を着々と積み重ねていく嘉兵衛。
    彼の弟達も船乗りになり、兄弟が力を合わせていく姿にエールを送りたくなります。
    当時の海運事情や、津々浦々の港の様子も興味深く読みました。
    そして、嘉兵衛がいよいよ大型船を造船することに・・。船大工の与茂平と、嘉兵衛の関係がとても良いので、素晴らしい船ができそうで楽しみです。

  • 2017.04.18 品川読書会

  • 嘉兵衛が淡州へ帰り、律蔵さんに対して生涯の大恩人じゃ、と思うところが好き。こんな聖人のような人に支えられた嘉兵衛は幸せ者だな。

  • 廻船商人高田屋嘉兵衛の物語。嘉兵衛の人物の大きさ。素晴らしい。司馬さんは初読みだがもっと読みたい。詳細は→http://takeshi3017.chu.jp/file6/naiyou23901.html

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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