疑惑 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167106676

作品紹介・あらすじ

二十五も年上の夫に多額の保険をかけ、車ごと海に沈めたのは稀代の悪女“鬼クマ”と断定する地方紙記者。非難の渦中で国選弁護人が一人奮闘する推理サスペンス。「不運な名前」併録。

感想・レビュー・書評

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  • 「松本清張」の推理小説『疑惑』を読みました。

    『神と野獣の日』に続き「松本清張」作品です。

    -----story-------------
    25歳も年上の夫に多額の保険をかけ、車ごと海に沈めたのは稀代の悪女“鬼クマ”と断定する地方紙記者。
    非難の渦中で国選弁護人が一人奮闘する推理サスペンス。
    『不運な名前』併録。
    -----------------------

    「松本清張」作品って、一度読むと、また次の作品を読みたくなる… そんな魅力がありますよね。

    本書には以下の中篇作(二篇)が収録されています。

     ■疑惑
     ■不運な名前


    『疑惑』は、状況証拠しかない容疑者「白河(鬼塚)球磨子」に対し、その性格や経歴等から、マスコミは彼女を犯人(悪女“鬼クマ”)として断定して大々的に報道するが、その後、冤罪が判明するという事件の顛末を描いた物語です。

    確かに、25歳も年上の資産家「白河福太郎」と結婚し、死亡した夫には3億円の死亡保険がかけられていて、車で夫と一緒に海に転落して自分だけ助かった… というのは、非常に疑わしいし、暴力団とのつながりがあり、傷害事件等で前科4犯となれば、色眼鏡で見てしまうということがあるかもしれませんが、、、

    物的証拠が無い中で、犯人と断定するのは危険ですよねぇ… マスコミによる報道被害について、改めて考えさせられました。

    「球磨子」の裁判における弁護士については、東京の有名な弁護士(「岡村謙孝」弁護士)に断られ、当初から弁護士をしていた「原山正雄」弁護士が病に倒れ、ヒヤヒヤさせられましたが、国選弁護士としてやむ得ず引き受けた「佐原卓吉」弁護士が意外な活躍を見せます、、、

    検察側の用意した証人の証言の根拠の脆弱性を指摘し、さらには、車内に残っていたスパナの存在と車を運転していた「白河福太郎」右足の靴が脱げていた謎をほぼ完ぺきに解明。

    ここで追い詰められたのは、北陸日日新聞社会部記者「秋谷茂一」、、、

    彼は「球磨子」の殺人と断定し、新聞紙上に保険金詐欺鬼女特集企画を組んだ張本人… 「球磨子」が無実になれば、彼女を批判した「秋谷」は必ずお礼参りにより報復され、家族は破壊される。

    そこで彼の取った行動は… 階段を歩く足音が聞こえるような感じがしましたね。
    面白い作品でしたが、こわ~いエンディングでした。

    本作品、昨年の11月にテレビドラマとして放映されたようです… 観たかったなぁ。

    備忘用に主な登場人物を紹介しておきます。

    秋谷茂一
     北陸日日新聞社会部記者。
     保険金詐欺鬼女特集企画を組む。

    鬼塚球磨子
     34歳、熊本生まれ。
     白河の後妻で前科4犯。

    白河福太郎
     59歳、資産2億円。
     東京で球磨子と知り合い結婚。

    原山正雄
     球磨子の弁護士。
     肝臓に持病あり。

    藤原好郎
     27歳、事件の目撃者。

    河崎三郎
     黒駒一家のやくざで球磨子の用心棒。

    木下保
     白河の友人で、球磨子の悪評を福太郎から聞く。

    豊崎勝雄
     球磨子の元愛人で球磨子と銀座でクラブを経営する。

    岡村謙孝
     東京在住の敏腕弁護士で、原山から球磨子の弁護を依頼される。

    佐原卓吉
     原山の後任として球磨子の弁護をする国選弁護士。



    『不運な名前』は、史実や文献による調査や憶測をもとにして、明治時代の藤田組贋札事件の真相を追究する推理小説。

    明治時代に起こった実際の事件で、その罪を着せられ獄中死した「熊坂長庵」という画家をキーワードに、当時、集治監(刑務所の前身)があった行刑資料館で、たまたま居合わせたルポライター「安田」と元学校校長「伊田」、謎の女性「神岡」の三人が、それぞれの知識や調査内容から真相を解き明かにしようと試みます。

    小説の姿を借りて、「松本清張」が真相を追究したルポルタージュって感じでしたね。

    歴史に興味があれば、知識欲を満足させてくれる作品です。

    実際はどうだったんだろうか… 今となっては真相は闇の中ですが、事実を知りたくなりましたね。

  • 「疑惑」「不運な名前」二つの中編もの。
    「疑惑」は、社会部記者のおいつめられっぷりがなんとも言えません。「不運な名前」はなんとなく読み終えた感じで、なるほど的な感想です。

  •  みなさんと同意見……映画の面白さがくっきり記憶に刻まれてたんで、原作を読んだら「あれ?」という感じ……(´ェ`)ン-…
     伝聞だけでクマコ本人はいっさい登場しないとか、ベテランらしい工夫はあるんだけど……(´ェ`)ン-…
     オチが、何だかね……(´ェ`)ン-…
     むしろ、この短編の潜在性・可能性を見出し、ああいう名画に仕立て上げた野村芳太郎監督の手腕がすばらしい、ということかな( ´ ▽ ` )ノ
     原作より映画のほうが上、というのも珍しいね( ´ ▽ ` )ノ
     恐ろしく昔にいちど見ただけなのに、桃井かおりの「おえー!」をいまだに覚えてるくらいだもんな( ´ ▽ ` )ノ

     もう一作は「名前もの」つながり?
     あくまで昔日の一事件に関する論考文であって、むりやり小説形式にまとめ上げた乱暴感が否めない(>_<)
     本来、熊坂長庵が主人公の作品になるべきであって、時間がないからこういう形で済ませたのかな?(´ェ`)ン-…
     まあ、昔はインクを肉と呼んでいたから今でも「朱肉」というんだな、とか勉強にはなったけど……(´ェ`)ン-…
     好き嫌いも聞かず、勝手に親子丼を注文されても困るよなあ……(´ェ`)ン-…
     

    2017/10/16
     

  • 疑惑は読みやすく、変わった視点でとても面白かった。不運な名前は小難しくて斜め読み…

  •  
    ── 松本 清張《疑惑 19850325 文春文庫》
    《告発 〜 国選弁護人 20090124 NHK》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4167106671
     
    (20160817)
     

  • 週刊誌を発端にした冤罪事件?現代にも通じるらしい。

  • P231

  • 図書館にて借りました。

    すんごい悪女がもしかして無罪になったら・・・その記事を書いた自分にお礼参りに来るかも?

    この「来るかも?」に一度取り付かれたらさあ大変!
    主人公の危機感がとってもリアルです。

  • 保険金目当ての夫殺し。
    疑惑の被告人・スゴイ名前の鬼塚球磨子(クマコ)
    女性の弁護士がいつまでたっても登場しない。
    待っちゃったよ。映画とは違うんだ〜。
    女性2人がガンガンやり合うんじゃないのね。
    自信なさげな男性弁護士が真相に辿り着き、その結果…。
    面白い短編でした。

  • 中編二編。

    「疑惑」
    桃井かおり、岩下志麻主演の映画がとても好きだったので期待して読んだ。
    原作は弁護士が男性であることに加え、視点というか主役・語り手の違いからラストも映画と異なっていたが、これはこれで面白かった。

    「不運な名前」
    藤田組贋札事件を題材に、犯人とされた熊坂長庵について論じた作品。
    何が本当なのだろうか、難しかった。

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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