新装版 夕陽ヵ丘三号館 (文春文庫) (文春文庫 あ 3-6)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (579ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167137113

感想・レビュー・書評

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  • 昭和の時代。社宅に住む奥様たちの実態。
    下らないけど下らなくない。主婦カースト。
    ボスママや太鼓持ちママ、子どもの出来不出来、それに夫の出世の具合までからんでくるから複雑。
    音子が馬鹿な主婦すぎてイライラします。「あの人は私のことを嫌いなのに違いない」と悩んで、まわりに悪口を吹聴しても、みんな自分が大事だから出方をうかがってる。最初に仲が悪かったボスママと仲良くなったあとで、悪口を言ったことをばらされたらどうしようとか。
    子どもの友達を他の家の子にとられた、って思い込んで、万年筆買って「またうちに来てね」。とらねーっつーの、って突っ込みたくなる。うざい母親だなあ。
    出し抜かれたり、嘘をついて油断させたり、油断させられたり、(音子の脳内で)いろいろ大変。
    でもその脳内の悩み、もしかして本当かも? でも、言い張っても「馬鹿な主婦」ですまされてしまう孤独。そう思うとぞっとする。
    有吉佐和子、こういう「くだらないけど当人にとっては大事」な女のあれこれを書かせたら面白い。

  • どこが面白いのか分からない。
    主婦の愚痴をツラツラと。。お腹いっぱいです。

  • 主人公は一流企業に勤めるエリートサラリーマンを夫にもつ専業主婦の音子。
    音子は夫の東京転勤を機に、念願の出来たばかりの社宅に入る。
    入居したその西部屋からは美しい夕陽と夕陽に染まる富士の絶景が見られた。
    そこで彼女は我が家となる社宅に「夕陽カ丘三号館」と名付けた。
    言葉も風土も合わない大阪という地、そして古びた社宅から出て、機能的で新しいメゾットタイプの社宅で暮らすことに喜びを感じる音子。
    しかし、そこで待ち構えていたのは社宅の妻同士の閉塞感の漂う人間関係、そして一人息子の素行や成績、交友関係に対する心配事だった。
    大阪時代に仲よくしていた社宅の友人と手紙のやりとりをする音子だったが、思いがけない事を知り、さらに予想外の出来事に振り回されることとなる。

    -と、こういう話の筋なら、今時の小説なら短絡的に陰湿な嫌がらせ、果ては殺人にまで事は発展したりする。
    それはそれで刺激的で興味を惹くけれど、この話はそこまでは発展せず、それなのに最後まできっちりと読者をひきつける。
    それがすごいと思う。
    登場人物の会話ひとつひとつにも臨場感があり、言葉をとても丁寧に使われていて、心理描写の細やかさを感じる。

    ただ昔の小説なので時代錯誤感は免れない。
    登場人物の会話もあまりに丁寧で美しすぎるし、主人公の家庭では白黒テレビを使っていたりする。
    だけど、人の行動なんてのは時代が変わってもそうそう変わるもんじゃないんだとこれを読むと思う。

    これを読んで思うのは、文中に出てくる「小人閑居して不善をなす」に尽きると思う。
    母が「すごい人は暇な時も何かを成すけれど、普通の人間は暇だとろくな事を考えないし、ろくな事をしない」と言ってたのを思い出しました。

    本の帯に本文を抜き出していますが、扇情的に人の関心を引く意図がありありで、この本の内容を誤解させるものだと思い、不快感を感じました。
    ただ、そんな事を考えるのは多分私くらいだと思う。

  • 一流会社の社宅における人間関係のお話し。お中元の処理の仕方に時代を感じて面白い。

    時代背景は少し古いと感じるだろうけれど、人間の心理、人間関係の問題は今に通じる。
    人の噂、隣人との比較の中で、正しい価値判断ができなくなっていく主婦。
    現代におけるママ友や会社の女性同士の人間関係の悩みと同じだ。現代では、そこにブログやSNSなどネットからの情報も加わり混乱する。

    知らないことは知らないままでいいはずなのに。

    有吉佐和子が社会に問いかける作品では、ほのぼの感動する、切なく感動する、そういった方法をとらない。
    現実の人間の愚かさと醜さを表現しながら、いつの間にか「家族には何が大切なのか」そういうことを感じさせてくれる、そういう作品である。

  • カラーテレビやらお受験やら、話が少し前のことなんだけど、古臭い感じがしないのが、有吉佐和子のすごいところ。世の中は日々変わるけど、人間の本質は変わらないんだろうなと感じる。狭いコミュニティの中で、自分がいかに上にいくか、心理戦が面白い。ちょっと辟易してくる部分もあるけど。

  • 恐ろしい本だ。誰の中にもある狂気をこれでもかとえぐり出している。

  • 主人公の女性には嫌な感情しか持てず、読んでいてもイライラしてしまったのだけど
    それでもフト振り返ると、程度の差はあれ
    自分も同じようなことをしているのでは?!・・・なんて思ってしまったりして。
    きっとこの小説の主人公は形を変えながらも
    全ての女性の中にいるのではないかな?

  • 社宅地域内で起こる軋轢や確執の日々。読んでいて辟易する。男目線だと、暇な専業主婦はこんなものと見下してしまいがちだが、サラリーマン社会もレベルは一緒である。
    どんなコミュニティーでも、自己の位置を高める為に、他人をあの手この手で貶めるのは生き物の性かもしれない。

  • 有吉佐和子の名作復刊第二弾ということで平積みになっていた。ぺらぺらめくるとおもしろそうだったので読んでみました。

    一流会社の社宅に繰り広げられる、奥様方と息子とついでに夫の生態を描く。読んでいると、作者佐和子氏はどこか覗き窓か望遠鏡で各部屋を観察しているような雰囲気がして、読んでる者も一緒に覗いているような感じになる。主人公の主婦・音子に一体化はしない。

    解説が無いので、全共闘、教育ママという言葉と、カラーテレビがある、などの言葉から時代設定は70年前後かな、と思ったが時代設定にかかわりなく、自分の息子の成績と夫の出世に一喜一憂する主婦・音子の言動・言葉は現在でもあてはまる部分があると感じる。これは専業主婦でなくとも勤めてる妻・母でも多かれ少なかれ持つ感情ではある。ただ専業主婦だと勢い昼間の8時間を目いっぱい息子と夫の事に投入できるので、この小説のようなことになるのだろう。しかしここでは妻は息子の成績と夫の出世によって評価される。評価というより、自分が気持ちよくなれる、ということか。妻自身は仕事をしていないので成果は息子と夫でしか現れないのだ。

    オスはメスを選ぶのに子孫を残せそうなメスを選び、メスは木の実や動物を倒せそうなオスを選ぶ、ということが竹内久美子の本だったかに書いてあったような気がするのだが、”木の実をたくさんとってくる一流会社勤めのオスをめでたくGETした妻たち”という図を思い浮かべてしまった。しかし社宅に住まざるを得ないところがミソである。

    調べてみると、1970年4月~12月に毎日新聞に連載され、71年に新潮社から単行本。71年10月~3月までTBS日曜9時からドラマ放送されたようだ。子供が6年で、夫は戦争に行っており、妻は女学校を出た設定だ。とすると夫は大正10年代生まれで妻は同じか昭和ヒトケタの生まれの設定になる。・・自分の家族と同じような感じだ。ドラマでは音子・八千草薫、夫・山内明でまさしく予想設定通りの生年の人だ。

  • さすが有吉佐和子作品と思います
    単純な社宅のおしゃべりだけではない
    人間の描写が描かれていると思います

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著者プロフィール

昭和6年、和歌山市生まれ。東京女子短期大学英文科卒。昭和31年『地唄』で芥川賞候補となり、文壇デビュー。以降、『紀ノ川』『華岡青洲の妻』『恍惚の人』『複合汚染』など話題作を発表し続けた。昭和59年没。

「2023年 『挿絵の女 単行本未収録作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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