後日の話 (文春文庫 こ 28-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167144029

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  • 芥川賞受賞作「蟹」が読みたいのだけれど

  • 何気なく手にした本。
    パッと開けた最初の文章。
    『十七世紀のトスカーナ地方のさる小都市国家で、結婚二年にして、思いもかけぬ出来事から処刑されることになった夫に、最後の別れで鼻を噛み切られ、その後を人々の口の端にのぼりながら生きた、一女性についての話である。』
    に強烈に惹かれ読みたいと思いました。

    この作者の本は初めて読みましたが、読んでいる途中、作者の経歴が本に書かれてないか探しました。
    日本人でこんな風に異国の感覚をもって、こんな文章が書ける人がいるなんて!
    長く外国にいた人なんだろうか?そう思いました。
    それほどこの本は外国文学そのものでした。

    被害者というのは、受けた傷跡を体や心に残すだけでなく、さらに周囲の好奇の目にさらされるという二重の苦しみを負う事となる。
    でもこの話の被害者であり、主人公のエレナには人々に噂される下地がそれまでに出来上がっていたように思う。

    私は外国文学は感覚的に分からなくて、これもその印象が強い本でした。
    伊藤整文学賞受賞作品と本の表紙にテプラで貼られてました。

  • 中世イタリアを舞台にした純文学。余韻の残るラストシーンと、そこに至る伏線はなかなか秀逸。芥川賞とった短編『蟹』も読んでみたいね。

  • 静かで淡々とした、対象から常に一定の距離を取った文体なのに、ときどき変拍子が入るようなひねった感じ。17世紀イタリアが舞台、豪商の娘が主人公なので、山尾悠子の「竈の秋」を連想したけれど、あれほどひんやりはしていなくて、もっと皮肉が効いている。

    不思議ちゃんがあっさりと平凡な恋をして貞淑な妻になり、「事件」を経て一口では言い表せない魅力を持った女性へと発酵していく過程から目を離せない。でもそこには鍾乳石のように育っていく狂気が伴わないわけにはいかず、その狂気の発現の仕方も独特で、なるほどねぇーと唸らされた。

    とても奇妙な話なのに、わき役たちが地味にいい人たちばかりなのが好バランス。モンティさんと友達になりたい。

  • 舞台は17世紀、イタリアのトスカーナ地方の小都市。
    刑死間際の夫ジャコモに「鼻を噛みちぎられる」妻エレナのその後が語られる。

    エレナは海の底に潜んでいる巻貝のようだ。
    硬い殻の中身は心優しい女性にすぎないのに、ジャコモに対する愛憎が静かに着々と螺旋を形成していく。

    淡白だけど毒がある、そんな愛の小説である。

  • 初河野多恵子。
    解説川上弘美!

    死刑囚の夫に鼻をかじられた妻の話。
    ものすごく上品な文章を書く人。
    情景の描写が美しく、イタリアの風景は現地人が描いているような細やかさ。

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