- Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167157029
感想・レビュー・書評
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挫折
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鳥羽・伏見の戦い後、新政府より朝敵の汚名を着せられた松平容保の会津藩をかかえて奥羽越三十一藩の盟約は成り、東北の山野に一大決戦の嵐が吹き抜ける。はたして、薩長は王師の軍か?私怨の兵か?膨大な資料と緻密な交渉により、さまざまな人間像を浮き彫りにしながらも、この壮絶な戦いを再構成する大作。(単行本1978年、文庫本1984刊)
綱淵謙錠は忘れられた作家と言えるかもしれない。多くの著作
があるが、現在も新刊で買えるものはごく一部である。文庫本
などはブックオフでもあまり見かけない。(司馬遼は別として
も吉村昭に比べても驚くほど少ない)
そんな中、エッセイ集などをせっせと見つけては購入している。
本書も1冊105円で購入したものである。
物語は、容保が江戸屋敷を出て会津に帰るところから始まる。
ここら辺のくだりは、大河ドラマ「八重の桜」の原作ではと見
間違えるくらいに同じであった。(多分、同じ資料なのだろう)
京都守護職時代、世良修蔵の暗殺、奥羽越列藩同盟の結成、長岡城の攻防を経ていよいよ官軍が会津領に迫るまでを描いている。
読んでいてぐいぐいと引き込まれる史伝体小説である。
世良の暗殺については、先日読んだ【「朝敵」から見た戊辰戦争】が霞むような迫力があった。(ただしどちらが正しいという
事では無い)会津藩が越後にも所領を持っていた事は知らなかった。
世良なきあと仙台藩に囚われた奥羽鎮撫総督府の九条道孝を巡る佐賀藩前山参謀と仙台藩但木土佐の虚々実々の駆け引きも面白い。
本書には特定の主人公がいる訳ではないが、上巻の後半は、河井継之助が良い。司馬遼太郎の描く河井継之助には魅力を感じなかったが、綱淵版河井はまさに英雄と言えるほど光っている。
江戸城開城から会津戦争までの経緯はあまり良く知らなかったが本書により知る事が出来た。