新装版 関東大震災 (文春文庫) (文春文庫 よ 1-41)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167169411

感想・レビュー・書評

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  • 火の恐怖は十分に伝わった。

  • この時代から我々は全然進歩していない。全く教訓にしていない。

     「関東大震災は同規模の安政大地震より被害がはるかに大きかった」とのことだが、大正時代は江戸時代よりも都市の防災機能は劣っていた。江戸時代には設けられていた「火避け地」という町から町への延焼を食い止める空き地が無くなり、人口密集度は以前より増し、江戸期にはあれだけ恐れられていた大火に対する備えが明治以後急速に衰えていったのはなぜなのだろうか?

     当時東京ではいち早く水道が整備されていたが、震災でズタズタになり、一方では井戸などを早々に廃止していったがために地震後の大火を消しとめる手立てがほとんど無かったという。

     そして今、人口密集度はさらに高まってはいないか?高層建物安全性は一定の想定の範囲内だけでの安全ではないのか?水道・ガス・電気がズタズタになって火は消せるか?その後生活はできるか?

     一向に当時の課題は解決できていない。

     そして物語の半分を占める流言飛語の恐ろしさ。根拠もなく「津波が来た」「大きな余震が来る」「朝鮮人が集団で襲ってくる」と言いふらし、それを聴いて確かでもないのに人に伝えていく。新聞も官庁も警察・軍隊も確かめもせずパニックになり多くの朝鮮人は殺されることになった。

     残念ながらこの「流言飛語」は通信手段の発達によってより早くより大勢に伝わるようになってしまっている。

     課題は解決どころか拡大に向かってしまっているのだろうか?

  • 「関東大震災」吉村昭著、文春文庫刊。ぎりぎり前日に読了。毎年”防災の日”に学校で聞いていたのは何?と思う程、起きていた事々を知らなかった。揺れの被害の大きさや、局所低気圧を生む程の猛火の事、殊に情報途絶が流言を生み、全国で数千人の朝鮮人を殺戮するに至った事は...。
    東日本大震災で、途絶期間はあったが、やはり携帯情報端末の威力を感じる。情報そして思いやりの搬送。それには電力。でも大規模系統給電ではなく、被害を限定できる小規模分散型かな...。さて今の関東、既に危険な期間に。あの規模の災害に堪えうる?

  • 日本人として必読

  • 地震、その後の火災ももちろん怖いし悲惨さは言わずもがな、一番怖いのは流言飛語にのり暴徒化した理性を喪失した群集心理。官憲による確信殺人行為、一部犯罪者による窃盗なども全く目立たなくなる程。これこそ"原発事故"以上に恐い"人災"だ。そのような犯罪を正当化させるような風紀の乱れを引き起こした集団心理は想像を越える。

  • 関東大震災について、吉村昭氏の真骨頂ともいえる丹念な聞き取りによりまとめられている本。大地震周期説やデマの話などいろいろ思うところがあった。

  • 先の震災に触発されて吉村昭 得意の記録文学「関東大震災」を読む。神奈川、東京を襲った烈震の様子から、陸軍省被服廠跡の惨劇、流言飛語に基づく朝鮮人虐殺までを精緻に再現する。

    震災による被害がここまで拡大した原因の一つは、江戸時代には生きていたはずの防災ノウハウが失われていたことであった。三陸海岸大津波にしても、関東大震災にしても、吉村昭で先人の知恵と過ちを知っておくことはきっと大切な備えであろう。

  • 震災の後に仕事の関係もあって読んでみたけど、堅苦しい内容を想像してただけに、実際の体験談にはすごく衝撃を受けた。あんなに悲惨な震災だったなんて初めて知ったし、また近いうちに起こるかもしれない、なんて考えはじめるとやっぱり防災への意識って大事なんだと痛感しました。

  • 関東大震災について、はじめて被害規模を含めて事実、真実を知りました。知らなかったことが、恥ずかしい限りです。こんなに悲惨だったのか、というのが感想です。筆者の調べ上げには脱帽します。

  • 災害時の人間に対する恐怖感が、流言飛語を伝播させた。朝鮮人来襲説、大杉栄事件も詳しく記述する。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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