リオノーラの肖像 (文春文庫 コ 6-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (609ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167218096

作品紹介・あらすじ

ミアンゲイト館でいったい何が起こったのだろう、かつては笑声に満ちていた貴族の館に?ソンムの会戦で帰らぬ人となった父。自分を生んだ直後に世を去った母。館の客人を見舞った殺人事件-。リオノーラ・ギャロウェイは生きる情熱を、館にたちこめる謎を解くことに捧げたのだが、ある日…。重厚なミステリー・ロマンの傑作。

感想・レビュー・書評

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  • もう中古本しかないんですね、『リオノーラの肖像』。ちょっと残念です。日本では1993年に初版が発行されていたよう。もう15年以上も昔なんですね!ちょっと感慨深い。

    これはゴダード2作目の作品。ゴダード初期の作品全てに共通して見られる特徴。複雑に折り重なった歴史の紐を解き明かしていくミステリー。そして、素晴らしく極上のミステリー。ゴダードは初期の頃が本当に素晴らしい作家だった。このまま、進んだらどれほどのものに!と期待感とワクワク感が強かったのですが。。。『石に刻まれた時間』あたりから「?」に思うことが多くなり、現在に至っては彼の作品をチェックしなくなっちゃいました・・・ひょっとしたら、その後、色々と傑作が生まれているのかもしれませんが、わたしにとってのロバート・ゴダードは初期の頃の作品を超えられなかった作家というイメージです。。。すみません。しつこいですが、本当に初期の頃の作品は素晴らしい!の一言です。彼はわたしが好きな作家ベスト10をやると必ず上位に食い込むことでしょう。ええ、本当に好きですwえ、しつこいって?すまそ。

    さて、リオノーラの肖像。表紙からしてとっつきにくい人はとっつきにくいかも?ミステリファンの中でも評価が分かれるみたいですが、ミステリーとしての筋立て、犯人の意外性、過去は今を支配するパターン、全てが極上のレベルに達しています。が、複雑怪奇すぎて、それがダメな人はダメかもしれませんね~汗。以下、あとがきより。


    ここで紹介する『リオノーラの肖像』(In Pale Battalions)はゴダードの二作目の作品。長い複雑な筋のミステリで、物語はリオノーラ・ギャロウェイという七十歳の女性が、その人生のほとんどをついやして解きあかした秘密を娘に語り聞かせる形式をとっている。ハンプシャーのミアンゲイトという貴族の館で、意地の悪い義理の祖母、レディ・パワーストックに苛められながら不幸な生い立ちをしたリオノーラは、幼い頃から多くの疑問を抱え込んでいた。彼女が生まれる前に第一次世界大戦の激戦地ソンムで戦死したという父親のこと。墓がどこにあるのかさえわからない、彼女を生んですぐに亡くなったという母親のこと。彼女が生まれるまえの第一次大戦中にミアンゲイトでおこったという殺人事件。彼女自身の出生をめぐる謎や、ミアンゲイトにたちこめるミステリの影。が、そうした疑問や謎に対する答えはけっして彼女に明かされることはなかった。思いもかけず幸福な結婚のチャンスにめぐり逢い、二人の子供に恵まれたリオノーラは、そうした疑問もふくめ、不幸な過去のいっさいを記憶から消しさろうとつとめる。ところが・・・以下略。


    なんていうかうまく説明できないのですが、昔はこういうことがよくあったのでは?と思うときがあります。ちょっと見当違いかもしれませんが、女は働きに出かけず、親ないしは配偶者ないしは親戚のオトコ、もしくは見知らぬもののお金に頼って生活をする(子供もしかり)。。。そんな状況でオンナにはどのような生活の選択があるのでしょうか?その環境で生き延びる術を身につけるしかないのですよね。。。


    母と娘、二人のリオノーラに課せられた過酷な運命。


    そして、彼女たちを苦しめた元凶がオリヴィア・ハロウズ、すなわち、レディ・パワーストック。悪役としての設定はまーいいんだけれど、動機がちょっと分かりづらかったかな。。。結局、彼女は義息子、ジョン・ハロウズに惚れていたってことですよね?もしくは自分の魅力になびかない息子に執着心を燃やしたってことなのかしら?手に入らないものほど憎いってこと?いえ、ラルフ・モンペッソンへの思いゆえに?ここがちょっと私の中ではあやふやなのですが、要はこんなオンナに睨まれたら、リオノーラのような純粋なオンナにはどうしようもないってこと。


    弱さゆえの愚かさ。そして、悪意によってゆがめられた過去と真相。


    読まないと、そして、読了しないとこの本のよさは分からないでしょう。当たり前か・・・汗。登場人物は多いし、暗いし、辟易するかもしれませんが、最後まで読み終えるとなんか、ストーンと全てが収まるとことに収まったかも!?というカタルシスがありますwwwわたしは上記の件以外はね・・・←読み込みがたりーんw

  • なんかもう、時代にもまれたなぁって感じのお話。
    長い長い旅をしてるような人生。

  • これも図書館で借りて読んだ。

  • リオノーラの人生にまつわる長大な謎を、話者ひとりひとり順番に語らせることで少しずつその核心に迫っていく。正義、信念、ロマンスに満ちた冒険小説の傑作。

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    『リオノーラの肖像』のあらすじ

    齢70に達したリオノーラ・ギャロウェイ(主人公・以下(主)と略)が自分の悲しい子ども時代の思い出を娘のピネロペに初めて語って聞かせる。

    ■なぜか自分を徹底的に虐げる継祖母オリヴィアと、自分に無関心な実の祖父。死んだと聞かされている顔も覚えていない両親。父が出征している間に身ごもったといわれる母の醜聞。そして屋敷で過去に起こったと聞かされている殺人事件・・・。広い屋敷で悲嘆にくれて過ごしていたリオノーラ(主)だったが、ある日ピネロペの父となる若い兵士、トム・ギャロウェイと邂逅する。二人のあいだにはすぐに恋が芽生えやがて結婚。こうしてリオノーラ(主)は、悪い思い出しかない屋敷から逐電することに成功する、過去の出来事をすべて忘却の彼方に追い払うようにして。なんとかして明らかにしようと胸に誓っていた両親の死にまつわる数々の謎も、幸せを掴んだリオノーラ(主)にとってはもはやどうでもいいことであった。(ここまでリオノーラ(主)による独白)

    ■二人の子供をもうけ幸せに暮らすリオノーラ(主)。オリヴィアの死の一報を受けてしばらくたったあと、父ジョンの戦友だったという謎の男フランクリンがリオノーラ(主)の前に突然現れ、生前の父母や彼女が生まれる前の屋敷の状況について彼女に話して聞かせる。フランクリン曰く・・・父は戦地では同僚にも部下にも慕われる素晴らしい人格者であった。父が戦死した後、彼の遺言により屋敷を訪れたフランクリンはそこで屋敷の異常な実態を目にした。老いた屋敷の主人(リオノーラ(主)の祖父)をしり目に、訪問客をひたすらに誘惑し女王として君臨する美女オリヴィア(リオノーラ(主)の継祖母)。夫ジョンの戦死という悲劇からまだ立ち直れていない、どこか謎を秘めているような寡婦リオノーラ((主)の母)。奸智に長け、屋敷の財産、リオノーラ((主)の母)をも奪い取ろうと画策しているアメリカ人起業家モンペッソン。愛娘リオノーラ((主)の母)の悲嘆に心を痛めながらも生来の明るさに好感がもたれる豪放磊落な老人チャーター。フランクリンは寡婦のリオノーラ((主)の母)に心を惹かれ、モンペッソンの魔の手から彼女を助け出そうとする。しかし彼女は何か重大な隠し事があるようで、それをフランクリンに明かそうとしないばかりか彼にすげない態度で接するだけ。人間不信に陥ったフランクリンは屋敷を出て死の待ち構える戦地に戻ろうとするが、若くして亡くなった、リオノーラ((主)の母)の実母にして慈善活動家ミリアムの残した本をきっかけに、ウィリスなる男がすべての謎のカギを握っていると突き止め彼を追った。そしてついにフランクリンの前に姿を現したウィリス。果たしてそのウィリスこそ死んだと思われていた戦友、ジョンその人であった。ジョンは戦死を偽り身を隠して屋敷に帰ってきていたのだ――つまりリオノーラ(主)は不義の子供ではなかったのだ――。しかし軍からの逃亡は死刑に値する重罪。モンペッソンはジョンの生存を知り、それを脅迫のネタに使ってリオノーラ((主)の母)を奪い取ろうとしていたのだ。そんな状況の中モンペッソンは何者かに射殺され、絶体絶命だったリオノーラ((主)の母)は救われる。そしてジョンはフランクリンに、身分を入れ替え自分がフランクリンとして戦地に戻り戦死するからフランクリンにはこのまま生きのびよと提案。フランクリンはそれを承諾し結果、ジョンはフランクリンとして戦場の露と消えた。こうしてリオノーラ(主)は初めて、自分の出生、父の死の秘密を知ることになった。(ここまでフランクリンの独白)

    ■リオノーラ(主)は50歳。一度だけ会い、もう忘れかけていたあのフランクリンの訃報を受け取った。そして意外にもフランクリンはリオノーラ(主)に全遺産を残したとあった。リオノーラ(主)はそれまで愛する夫のトニーにさえフランクリンが語った真相を話さずにいたが、ことここに及んでやっと自分の秘密を打ち明ける。トニーは急かすことなくリオノーラ(主)が自分からしゃべってくれるまでその機会を待っていたのだという。そして今度はトニーから、まだ話していなかった、オリヴィアの死の床での状況をリオノーラ(主)に語り始める。トニーはオリヴィアがもう長くないと知らされたとき、残される屋敷のことなど話すためにオリヴィアに会いに行っていたのだ。オリヴィア曰く・・・わたしは美貌を武器に男たちを虜にし、好きなものを奪い取り、彼らを破滅させてきた。しかしジョンだけはものにできなかった。そこでリオノーラ(主)を手元に置くことで、ジョンは必ずまたこちらに戻ってくると考えて待ち構えていた。ジョンが戦死しているはずがない、今もどこかで生きているはずだ、それでもリオノーラ(主)を奪い返しに戻ってこない、ということはつまり私の勝利なのだ。獣じみたモンペッソンの性欲だけが私を満足させた。だが彼もフランクリンに殺されてしまった。(ここまでオリヴィアの独白)

    ■かつてリオノーラ((主)の母)はリオノーラ(主)を出産したあとすぐ、ジョンへの思いを残しつつ息を引き取った。そしてリオノーラ(主)は母の友人である教師グレイスにあずけられた。……そして現在、グレイスに再会したリオノーラ(主)は彼女から意外な真実を明かされる。グレイス曰く・・・モンペッソンを殺したのはチャーター老人だった。娘がジョンのことでモンペッソンに脅迫され、このままいけば結婚、さらに財産がすべて奪い取られることを知った老人はなんのためらいもなくモンペッソンを銃で射殺した。若いころ武勇伝をとどろかせたチャーターにとって悪漢を始末することなど造作もないことだったのだ。(ここまでグレイスの独白)

    ■全ての謎の答えが明かされたレオノーラ(主)はフランクリンの遺産の中にあった一枚の絵を、フランクリンと親交のあったという若い画家ダンリックに寄贈しようと彼のもとに赴く。ダンリックは生前のフランクリンにどれほど世話になったかをレオノーラ(主)に語る。ダンリック曰く・・・自分は若いころの過ちがもとで世間からつまはじきにされ、自殺を試みた。そこにフランクリンが現れて自分を救ってくれた。なぜわたしをこんなに気にかけてくれるのかと聞くとフランクリンはこう答えた。「以前にもこういうことがったからだよ。わたしはある友人に、避けられぬ死を免れる手段を提供しようとしたことがあった。だが彼は拒絶した。今、あなたをとめることで、私は二度目の賭けをしようとしたんだ・・・」(ここまでダンリックの独白)

  • ゴダードの作品は初めて。重厚で重々しい話を書く作家というイメージだったがやはりその通りだった。
    過去を紐解いていく手法は見事で、最後の最後まで目を離せない展開に惹きつけられた。最終ページに辿り着いた時はじめてすべてが腑に落ち、また作者の反戦メッセージが心に響く。

    ただ、タイトルにある肝心なリオノーラの影が薄い。人物造形もオリヴィアに比べてインパクトに欠け、ふわりとした曖昧な女性で終わってしまった。もっともオリヴィアは強烈過ぎて不愉快度が高く、第2部は挫折しそうになったくらいだ。彼女に騙され翻弄される男性陣が多すぎる…。中でもパワーストック卿の見る目の無さと上に立つ器ではないことが一番の悲劇の要因かもしれない。

  • とても悲しい話・・・・

  • 奥さんに借りた2冊目。
    これもおもしろかったですよ。序盤はどんどん読みたくなります。
    が、やっぱりこないだと同じく、最後ら辺がちょっともったり…もったいなーい。
    この人の正体は実は、とか、モンペッソンを殺したのは誰か、というのは早々に予測が付きます。でも各人がこの事件をどう見てるのか、という方がおもしろいのでそれはあんまり気になりません。
    なかなかねえ………………うちの親戚を思い出させる本ですねこれは(笑)。オリヴィアとパワーストック卿の関係がまさに。
    なので、実は身近にこういう関係を見てきた身から言わせていただくと、ちょっと周囲の反応が甘いんですよね。甘いというかニブいというか。まあニブいのはニブいんですけどその鈍さの方向がちょっと違う気がしますが…まあこんなもんといえばこんなもんかな(どっちだ)。
    みんながチャーターを軽んじている感じなのがちょっぴり腹立たしかったです。もっと話しようよみんな!と念を送っていました。(が、届かず。無念)
    グレイスにももうちょっとなんとかできなかったのか。なんか冷たいというか薄情というか痴呆気味なんですよねリオノーラって。

  • いつもゴダード作品を読むと感服するのが、緻密なプロットと読者をワクワクさせる文章にだ。本作品も一人の女性が自分の秘密を紐解いていくのだが、人生とはかくも複雑にできているのだろう・・・とため息がでてしまうほど、良くできた作品だと思う。主人公のリオノーラは70歳になって初めて、不幸だった子供時代の訳と謎を知ることになる。というか自ら知ろうとする。本当なら何不自由なく育つ環境だったのに、悲しくなるほど不幸だったのだ。子供の幸せって大人が多いに作用すると思うとホント切ない。これまた「あの時、もし・・・」と考えてしまう。あるいは「あの人があの時言ってくれたら・・・」とかね。でもそんなリオノーラも幸せな結婚をして幸せになれたから、過去に戻ることができたのだと思う。それだけが救われた気分にさせてくれる。

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著者プロフィール

1954年英国ハンプシャー生まれ。ケンブリッジ大学で歴史を学ぶ。公務員生活を経て、’86年のデビュー作『千尋の闇』が絶賛され、以後、作品を次々と世に問うベストセラー作家に。『隠し絵の囚人』(講談社文庫)でMWA賞ペーパーバック部門最優秀賞を受賞。他の著作に、『還らざる日々』『血の裁き』『欺きの家』(すべて講談社文庫)など。

「2017年 『宿命の地(下) 1919年三部作 3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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