TVピープル (文春文庫 む 5-2)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167502027

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  • <u><b>日曜日の夕方は、いつでも/誰にでも来る。</b></u>

    <span style="color:#cc9966;">不意に部屋に侵入してきたTVピープル。詩を読むようにひとりごとを言う若者。男にとても犯されやすいという特性をもつ美しい女性建築家。17日間一睡もできず、さらに目が冴えている女。―それぞれが謎をかけてくるような、怖くて、奇妙な世界をつくりだす。作家の新しい到達点を示す、魅惑にみちた六つの短篇。 </span>

    <blockquote>日曜日の午後にはなにもかもが少しずつ擦り減って縮尺が少しずつ縮んで見える。まるでTVピープルそのものみたいに。</blockquote>
    「日曜日の午後」「TVピープル」も、春樹お得意のメタファーだと思うんだけど、人生ってのは「日曜日の午後」のようなものが多く存在する。

    [more]
    「日曜日の午後」は、何かをやろうとするけど、うまく行かない。少し何かをやってみようとして、やめて、また違うことを少しやってみてやめる。その繰り返しだ。
    そして気付いたら、何もかも中途半端なまま終わっている。とっても無駄なことを自分はしているんじゃないかと辛くなる。

    笑点の音楽を聴くと、月曜日から仕事だと考えて鬱になるなんてよく聞くけど、月曜日からの仕事に対してのプレッシャーだけじゃなく、
    そうした「日曜日の午後」が抱える根本的な問題もそこには流れているから、悲しくなるんだと思う。

    時々ふと、人生もそんなものじゃないかと考えてしまう。”なにもかもが少しずつ擦り減って縮尺が少しずつ縮んで見える”のだ。

    春樹はよくそれを小説にえぐり出す。だからすごく悲しい、そんでもってむなしい。でも、同情してくれているようで少し心地良い。



    短編小説はあまり好きじゃない。だけど、春樹の短編はものすごく好きだ。この滑稽な「TVピープル」も同じである。
    <blockquote>深い哀しみにはいつもいささかの滑稽さが含まれている</blockquote>
    春樹の小説がどことなく滑稽に見えるのは、そこに深い哀しみがあるからだと思う。
    そして、それが私が春樹の短編の好きな理由だと思う。

  • 高校生のころ安部公房を読んでいた。大学生になって村上春樹を読みだした。奇妙な話には十分に免疫があった。見知らぬ人が自分の家に居座っていても、それはありなのだ。家電メーカーの宣伝部署か何かに勤めていて、テレビを持っていない。そんな家にテレビが搬入される。番組が見られるわけではない。それでもテレビはある。妻はそれに気づいているのか、いないのか。別のメーカーのテレビが会社に運び込まれる。ほかの従業員はそれに気づいているのか、いないのか。空間的にはテレビの占める割合は大きい、いまでも。しかし、時間的にはスマホの方が大きい部分をしめている。いまなら、スマホピープルが押し寄せてくるのか。「やれやれ」2回。眠れずにトルストイを読む。「アンナ・カレーニナ」を1週間で3回続けて読むのはどういう気分なのだろう。たしかに、寝なければ時間は約1.5倍にふくらむ。僕の読書渋滞は解消されるかもしれない。しかし、ふつうなら眠くて同じ個所を何度も読み返すことになりそうだ。「やれやれ」は2回。結局、本書には2作品中4回登場するにとどまる。「我らの時代のフォークロア」著者からすると、僕は一回り下の世代になる。学生運動はすでに終わっていた。ドアーズは聴いたことがなかった。僕が高校生のときにジョンが殺された。恋愛はずいぶん自由になっていたし、処女性もさほど重要視されなくなっていたと思う、たぶん。時代は変わっても、クラスには目立つ存在と、そうでない存在があった。クラスのスーパースターにもそれなりの悩みはあるわけだ。それを思うと、少し苦しくなる。
    あした、「トニー滝谷」の映画を観る。「ハナレイ・ベイ」が映画になって、近々公開される。こちらも観てみたい。「ノルウェイの森」のことがあるので、村上春樹原作の映画には少し慎重にならざるを得ないのだが。

  • 短編集。賛否わかれる話が多い。そして自分的には合わないと感じた。途中でバッサリ終わる短編ばかり。余韻とかではなくて、突如の終了にイラつきさえ感じる。それでも眠りあたりは引き込まれるストーリーだった

  • 「眠り」の女の人に会いに。

    TVピープル、加納クレタ、眠りあたりは春樹らしさを感じたけど、こんなのも書いていたんだなぁと少し意外な話もあった。
    TVピープルも終わり方はちょっと意外だったし。
    ぞくっとするお話たち。

  • twitter等のネットを見ると、この小説を思い出す。喋り続けなければ砂になってしまう。

  • 「我らの時代のフォークロア」の、「眠り」の、どこにもたどり着けない女性たちが印象に残る。水は一体何を表している?

  • えー、おもしろかった
    私の・名前は・加納クレタ

  • 荒く鋭く、これは怖いな…という箇所もあり。村上春樹さんの今書かれている小説の、原液のような部分を感じた。

  • 村上春樹にしてはあまり聞かないタイトルだと思って借りたたが、案の定という感じ。短編集で、随所にらしさはあるが、SEX表現が目立つ。

  • 初期を代表する短編小説集。"TVピープル"、"加納クレタ"、"眠り"など、どこか暗くて不可思議・不条理な世界観は長編小説にはない魅力が凝縮されている。今でも古くない作品集。‬

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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