楽しい終末 (文春文庫 い 30-3)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (403ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167561031

感想・レビュー・書評

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  • 原発・核・エイズ・フロンガスと温暖化…。
    人類が、地球が滅びるとしたら、その原因は何か?をテーマに書かれている。
    全然楽しくない未来図に、途中で読むのを投げ出してしまった。

    最初の章の原発に関しては、1990年に執筆された内容だけれど、もうすでに原発事故の可能性について指摘していて感慨深い。

  • 初めて共感と共に読んでから暗い気持ちになって、たびたび読んで参ったなあと思い、震災後にまた思い出して読んで…。
    誰にでもあるのかもしれない先を見通す目。
    それを言葉にしていく作家の仕事にもっと敬意を。

  •  一言で言えば、難しい!自分の学のなさを痛感させられた作品。様々な角度から、世界が終わるのならばどうおは。やって終わるのか、恐竜は、戦争は、人間とは、と考察がのべられている作品。今でこそ原子力の問題が露呈しているけれど、ずいぶん前の作品なのに原子力についても詳しく書かれている。
     主観が入っている部分もあり、可能性を示唆した文献のような作品。またいずれじっくり読みたい。全てを理解しながら読もうとしたため、時間がかかった・・・。

  •  ホモ・サピエンスの起源が10万年前であり、猿人の起源が500万年前になるらしい。恐竜が滅亡したのが6500万年前であり、彼らは地球上に1億5千年の長きにわたり生存していたのだとか。人類は地球上で大きな顔をしているが新参者なのである。

     日々生活のなかで人類が滅ぶ危機を身近に感じることはない、2回の大きな大戦中ですら人類が滅ぶ姿など誰もイメージしてはいなかったことだろう。しかし、人類は間違いなく滅亡するのだ。なぜなら、地上に誕生した生物で滅亡を免れた生き物はいないのだから(細菌類などは別)

  • 核、ウイルス、思想など、いろんな角度から人類の終末を考察した一冊。
    本、映画、歴史の引用が多く、教養が深まった。
    人の運命はもはや人の手の中にはない。しかし今更、人は文化を手放すことはできないだろう。
    万物は盛者必衰。だから人類も何かしらの形で終末を迎えるのだろう。悲しいことだが、人類だけが特別ってわけではないと思う。

  • 震災のあとに、app storeでdiscountされてたので、なんとなーく。
    原発の事故の可能性に言及した一種の予言書的な触れ込みやったと記憶してるんやけど。

    で。
    原発がその存在自体に事故の可能性を内包してて、「事故が起きるまで事故は起きない」から安全、とみんなで見て見ぬ振りしてる、とか確かに今回の原発の事故の根底にある問題を指摘してて、確かに慧眼やなーと思わせる。

    でも、それ以上にそれ以外の箇所での「終末論」(こっちが本題)の展開が面白くってなかなか読み甲斐あり。

    原発のことでフォーカスされて見つけておいて言うのもなんやけど、そういう売り方をされるべきじゃないような。

  • 20年以上も前に書かれた本なのに、いまの世界の問題を書いてるかのよう。技術、進化、病気、核も環境もいろいろある地球の問題って結局は20年前から何も解決へ進んでないんだね。
    あと、今までの読書経験値を確認できる本だった。

  • 2011/10/15読了。電子書籍で読んだ。

  • 核、エイズ、フロンガス、ネイティブアメリカン、恐竜の絶滅などを例に取り上げた人類の終末論。
    原子力発電所を見学して筆者が感じた違和感が語られていたので再読。

    「言ってみれば、核エネルギーは逆宝くじである。普通の宝くじは少しのお金を個人の意思で投資して万に一つの幸運を待つ。この原理によって人は毎月のまったくの浪費を許す。それに対して原子力発電は毎月少しずつの便宜を一方的に提供された上で、確率上は万に一つの巨大名不幸の実現を知らず知らずに待つ。宝くじの確率論は厳正なもので、売った枚数と当たる率、胴元の儲けなどはすべて外から見ることができる。冷静に考えれば投資は元の取れるものではないが、しかし当たるかもしれないという可能性そのものに人々は価値を見出している。電力供給量のほうはたぶん当たらないだろうというお祈り以前の空疎な楽観論ぬ彼方に原子炉建屋が透けて見える。」

  •  評論。世界の終末ということについて、核戦争、原発、遺伝、歴史の中に埋もれた滅びていった文化、人々の終末思想、SF作品群に見られる人類滅亡のストーリー、恐竜の滅亡や種の寿命、サル学、伝染病の研究等々、さまざまな観点から語られた一冊。

     本作にかぎらず、池澤さんのエッセイ等を読むたびにいつも思うんですけど、その知識の幅広さ・深さと、視野の広さに、読めば読むほど驚かされます。あと引用された書籍のタイトルを見ていて、そのジャンルの広さにもびっくり。

     わたしたちは自分たちの滅びのトリガーを、意識しないまま緩慢に引き続けているのか。それは人類がいまの進化の道を選択した時点で、宿命付けられていたことなのか。いろいろと考えさせられる本です。

     ふだんは、評論なんていう堅苦しいものは読みつけないのですが、池澤夏樹さんの著作だから……というファンの理屈になっていない理屈で、手を伸ばしてみました。
     科学知識の乏しい私には、読むのに時間がかかりましたが、(ファンだから、普段のように分からない箇所をなんとなく読み流すことをしないで、ひとつずつ論旨を丁寧に追ってしまった、というのもある気が……)それだけの時間を割く価値ありな一冊です。

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著者プロフィール

1945年生まれ。作家・詩人。88年『スティル・ライフ』で芥川賞、93年『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞、2010年「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」で毎日出版文化賞、11年朝日賞、ほか多数受賞。他の著書に『カデナ』『砂浜に坐り込んだ船』『キトラ・ボックス』など。

「2020年 『【一括購入特典つき】池澤夏樹=個人編集 日本文学全集【全30巻】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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