新装版 「レ・ミゼラブル」百六景 (文春文庫) (文春文庫 か 15-7)
- 文藝春秋 (2012年11月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (497ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167590062
感想・レビュー・書評
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当時の情景が伝わるような筆致
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世界の名著の一つ、ヴィクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』を全巻読破するのには、実は大変な苦痛を伴う。原作があまりにも長大で、登場人物一人一人の来歴やパリの街の下水道に関する考察、時代背景などをこまごまと書き連ねていて本編から逸脱している箇所が多いからだ。少年少女世界文学全集のような子ども向けの抄訳版でも十分面白いのは、この冗長な部分が含まれないためである。
本書はフランス文学研究の第一人者である鹿島茂先生が原作の本文を抜粋した上で当時の歴史的背景や作家個人の事情、私生活との関係、執筆エピソードなどについて解説し、1章あたり2~3ページにまとめたものでとても読みやすく物語のあらすじもわかりやすい。しかも著者がフランスで手に入れた貴重な原書の精緻な挿画を全ての章に挟んでいる。これが19世紀フランス社会の雰囲気を伝えるのに大きな役割を果たしていて、このような稀覯本の挿し絵を原作本文・解説と共に見られることは本当にありがたいことである(これにはミュージカル版「レ・ミゼラブル」で今もシンボルとして使われているコゼットの絵も含まれている)。
例えばジャン・ヴァルジャンの魂を暗闇から救い出したミリエル司教は社会的にどれくらい偉い人なのか。女工ファンチーヌのように男に捨てられて未婚の母となり、生活のために売春婦に身を落とす女性は珍しくなかったのか。欧米文学を読む時に必ず立ち塞がるキリスト教文化の理解の仕方や、その国の慣習を解説してくれるのは本当に助かるし、むしろ原作より面白いかもしれない!という気持ちにさせられる(もちろん、原作に挑戦してみよう、という勇気も湧いてくる)。これほど内容の濃い、価値のある文庫本にはなかなか出合えるものではない。比類なき深い人間愛と貧困にあえぐ民衆の社会に対する怨嗟の声、革命に懸ける激しい情熱は『レ・ミゼラブル』でしか味わえないものだと思う。
ちなみに『レ・ミゼラブル』は何度も映画化されているが、2012年公開のミュージカル映画(ヒュー・ジャックマン主演)は最初から最後まで泣きっぱなしで観てしまうほどの感動作で、生涯に一度は観るべき傑作。併せてお薦めしたい。 -
19世紀フランス文学、文化研究者による、図版入りレミゼラブルの解説。
原作は読んでおらず、子どもの頃に抄訳を読んだり、ミュージカル映画を観たきりで、全体像がわかっていなかったので、本作をよく知ることができ、大満足。
それにしてもルイナポレオンとか、7月革命とか、パリコミューンとか、フランス近代史をもう一度おさらいしないと文学も訳わからなくなってしまうなあ。 -
文庫版で再読する。
英国のディケンズもそうなのだろうが、『レ・ミゼラブル』は当時の庶民から、NHK朝の連続テレビ小説の如く受容されていたに違いない。
本書は、分冊イラスト入りで定期出版されていたバージョンのみならず、ユゴーの他作品に添えられた挿し絵から、作者による作中人物の似顔絵までも収録した、かゆいところに手が届く1冊。
完訳版を読んでみて、サブヒロインのエポニーヌに心を惹かれた。映画版やミュージカルでも女優にとって美味しい役回りだろうし、挿し絵を手がけた銅版画家にしても腕のふるいどころだろう。
エポニーヌの最期を描いた二葉の挿し絵は心を打つ。 -
NHKで放送されたBBC版TVドラマと併せての評価です。
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読了 20200428
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ユゴーの大作・レミゼラブルの挿絵付きの解説本。物語の展開に従って、挿絵と共に当時の時代背景も含めて詳しく解説しており、大変面白く読めた。原作を読んでいない人でも、この本1冊で物語の概略は掴めると思う。
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映画でも舞台でも、レミゼが好きな人は必読です。
とても楽しく、レミゼの背景が理解できるようになります。
私は全訳本に挫折してしまったので・・・ -
起承転結の転の部分がフランス革命にあたるところだけれど、ここが冗長だった。
ただ、あとがきにもあるように、この部分は端折れないし、作者の意図もあるし。
やっと読み終えた。