- Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167602093
作品紹介・あらすじ
名門Q女子高に渦巻く女子高生たちの悪意と欺瞞。「ここは嫌らしいほどの階級社会なのよ」。悪魔的な美貌を持つニンフォマニアのユリコ、競争心をむき出しにし、孤立する途中入学組の和恵。ユリコの姉である"わたし"は二人を激しく憎み、陥れようとする。圧倒的な筆致で現代女性の生を描ききった、桐野文学の金字塔。
感想・レビュー・書評
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なんだこれは。
不気味な一人称で語られる意悪の数々。
リアルな世界だけでなくSNSでも人に優しくしようって時代。
そんな時代に、397ページまるごと悪意で埋め尽くされている。
主人公「わたし」の悪意は先も底もないほど恐ろしい。最初はその性格の悪さが心地よくて、迸る悪意にゾクゾクしつつも笑いながら読んでいたのだけれど、その先も底もない悪意の繁栄に、後半は空恐ろしくて下巻に入るのが本当に怖くなってしまった。それなのに、早く下巻をと思っているから恐ろしい…。完全に癖になっている。
最近、「普通の人」が主人公の作品に物足りなさを覚えるようになってしまって、そこから「生きづらさを抱えている主人公」「ちょっと変わった主人公」へと進化を遂げ、「かなりぶっ飛んでいる主人公」まできた。いよいよ、サイコパス物しか読めなくなるかもしれない。どうしよう。
やばめな人が主人公の作品知ってるよって方、おすすめ教えてください。
さて、「悪意」といえば。
東京オリンピック開会式の楽曲制作を担当していた小山田圭吾さんのこと。
わたしが一連の報道で感じた「悪意」について、連休後半の二日かけて、下記の記事をアップさせていただきました。
様々な人が目にする媒体だし、すごく悩んだ。
だけど、なんだか今回の騒動にすごく悶々としてしまって、ひとまず文章にすることにしました。
嫌な思いをする人もいるかもしれないし、批判的なコメントがあるかもしれないことも覚悟で。でも、同じ思いの人だっているんじゃないかなってことも祈りつつ。
言葉を選びながらになったので、5000文字近くと少し長いですが。
よろしければご覧ください。
https://note.com/tattychannel/n/n4d606d353d52 -
人間関係や各々の個性や人格を判断する為の土台作りになる為、物語に大きな波が起こるわけでもなくひたすら黙々と文章を追い続けるだけの上巻。
物語の終始どんよりとした色味は心地良く、人物達に感じるひたすらの不快感とこれからどう話が繋がっていくのかとの高揚感が精神を維持している。転待ちだ。 -
上下巻通しての感想。
「東京電力OL殺人事件」を題材に書かれた物語は多い。
この「グロテスク」も和恵というキャラクターの設定に事件を反映させている。
桐野さんの物語には底辺に悪意がずっと流れているものが多い。
ユリコ、和恵、ミツル、そして「わたし」。
心の中に 底なしの悪意を抱えている。
彼女たちの悪意がもたらしたものは、いったい何だったのだろうか。
「わたし」によって語られるユリコと和恵の人間像。
すべてではないにしてもある程度は自分というものを理解していたユリコ。
まったく自分というものを理解していなかった和恵。
それは第三者に自分がどう見えているのか・・・といった点にもはっきりとした違いを生んでいる。
破滅していく様を楽しんで傍観している「わたし」も、自分が見えていないといったところでは和恵と似ているのかもしれない。
気味が悪いほど異様で歪みきった精神。
多かれ少なかれ、誰の中にもその芽はあるのだろう。
目を背けたくなるようなものほど凝視してしまう。
読んでもけっして幸せな気持ちにはなれないのに、それでも読むことを止めることが出来ない。
悪意という名の強烈な力に引きずられるように読み終えてしまった。
「わたし」が抱え込んでいる悪意が怖ろしい。
ユリコも和恵も、その悪意の標的となり被害を被ったこともある。
事件を起こすわけでもない。
変人だと思われても、ひっそりと社会の中で生き延びている「わたし」のような存在こそ悪意をまき散らす源になっていくのだろう。
面白い物語はたくさんある。
心に残る物語もたくさんある。
けれど、読み手を圧倒し引きずり込むような物語は少ない。
読み終わったあとの後味の悪さも含めて強烈な物語だ。 -
まぁ酷い重い暗い…
同じスイス人の父、日本人の母から良いところを何一つ受け取らずに生まれた姉と正に神のいたずらとしか言いようのない完璧な容姿をもって生まれた妹。そして真面目に一生懸命は美徳だが、周りの空気は読めず、自意識過剰で妙に自信家の同級生。そんな三人が悪意、劣等感、疎外感、虚無の渦巻く半生を「わたし」こと姉が述懐する体で進む物語。とにかく胸糞悪い感じが延々と続くんですが、人間の奥底にある他人には出来れば見せたくないような感情の坩堝で繰り広げられる人間模様に引き込まれて行く…読みだしたら続きが読みたくて読みたくて頁を繰るのが楽しいって感じさせます。そこは流石に超一流の作者の手腕といったところでしょうね。怖いモノみたさ…って面白いんですよね。さぁ早く下巻を読みたいです(笑) -
面白かった。けど、内容の濃さのせいで一気読みすることはできず、少しずつ読み進めていった。
上巻の感想としては、この人達はなんとバランス感覚の欠如した人々だろう!ということ。
主要な登場人物たちは、心のどこかが壊れてしまっているような、そんな印象を受けた。
きっと主人公の家庭も、和恵の家庭も、ジョンソンの家庭も、そして推測になるけどミツルの家族でさえも機能不全家族だったのかもしれない。
だけどその中でも主人公の家庭は別格。「怪物」であるユリコの重力が強すぎて、全体に歪みが生じてしまっているように思えた。(幸か不幸か、自分は凡庸な見た目をしているので)突出した容姿がここまでに周囲の人生に影響を及ぼすのかと驚きながらも、ページを捲る手が止まらなかった。
そして、こんなにも大勢の「極端」な人物が、見事に物語のコントロール下に置かれている。作者の力量に感服。
加えて、場面の描写も見事で、一つ一つのシーンが強く印象に残っている。
ユリコを突き放す雪山のシーン。ミツルと初めて打ち解けるテニスコートでの場面。和恵の父からの容赦ない言葉が浴びせられる、仄暗い廊下。土砂降りの中を走る、ミツルの母の自動車の車中。
重大な会話が為される時、その場面もまた色濃く描かれていて、それが小説としての奥行きをもたらしていると感じた。
ひとまず上巻は読み終えたのだけど、下巻は一体どのような話になるのだろう。上巻だけでもこんなにも濃密で、読み手が消耗するような話だったのに。恐れ半分、期待半分と言ったところ。とにかく、下巻が早く読みたい。 -
面白いけど、読む時間取れなくて時間かかって流し読み。下巻読むか迷う。でも気になるから読みたい。
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エリートOL殺人事件を題材にした小説。折原一の「追悼者」とはまた違った切り口。狂ってる登場人物それぞれの視点より展開。どう収束するのか続きが気になる。
関係ないけど、上を登録し忘れて下の後に登録したが、本棚見るとこの順番で良かった(笑)
こちらへもコメントしてくださり、ありがとうございます。
また、noteも読んで下さり、感想も下さり、本当にありがたい限り...
こちらへもコメントしてくださり、ありがとうございます。
また、noteも読んで下さり、感想も下さり、本当にありがたい限りでございます!!
ロックミュージシャンのどうしようもなさ(褒めてます)。そういうとこが好きだったりするんですよね(笑)
だから、小山田さんがオリンピックの開会式の音楽を担当していると知ったとき、NHKの番組の音楽を担当していると知った時は、「ついに時代がついてきたのね!ロックミュージシャンをダメ男と定義づける時代は終わったのね!」と心の中でガッツポーズしている自分がいました(笑)
たぶんそう思うのは、あまり関係がよくない、わたしの母親がそのような男性を毛嫌いしているところがあって、そういう部分でも「認められた」ような気になったんでしょう。個人的理由ではありますが。
普段行動には起こさなくても、他人に対して思っていることってたくさんあって、表現をする人ってそれを上手に昇華している人たちだなって思うんですよね。中には、毒が含まれていることがある。ロックはそのうちの一つだと思います。でも、毒のもっていき所に困っているひとは、毒を含んだロックにめちゃくちゃ救われると思うんです。わたしもその一人です。
本ぶらさんのお言葉を拝借すると「まっとうな生活をおくっている一般庶民では気づけなくて、そういうどーしようもなくダメな人だからこそ気づいて歌えることって、あるんだと思うんです。
だから、ロック(に限らず芸術)って、心をとらえるんじゃないでしょうか?」の部分。刺さりました。
たぶん、普通はその音楽(芸術)を享受する側が多いわけで、生み出す側というのは、普通の感性では絶対ないはずです。
だから「ロックミュージシャンに倫理観を求める方が間違ってない?」って感覚や「ロックミュージシャンなんて、そんな風に身近にいたら迷惑極まりないアホバカばかり」って感覚もまさに!!って感じですし、ロックミュージシャン採用するならロックにやろうぜ!と思うわけですが、オリンピックはそうはいきません。
でもだからと言って、正論でできるわけがないロックミュージシャンに正論でぶつかるのも個人的には納得いかないし、でも正論でやっていくのがオリンピック。正論でさばけるものならなんでもよかったんでしょうね。
それこそ、オリンピック選手の中にも似たようなことをしてきた人だっているかもしれない。そんなことしだしたら、荒さがし五輪になってしまいます。オリンピックだけでなく、「今を最大限」、わたしはそれこそが生きていることだと思っているので、小山田さんが様々な活動の場を奪われていることは悲しく思います。そう言うと「いじめの被害に遭っていた人のことを考えてない」とか言われるのかもしれませんけど。
頂いたコメントに対する返信になっていないかもしれません。すみません。
また、作品の紹介ありがとうございます!!
タイトルがすごく素敵なので、やばさとは距離を置いているところにも好感が持てます(笑)
探してみます^^
またいつでも遊びにいらしてくださいね!
ロックみたいな若者文化を絶対認めない!のが、正しい大人(親)の姿だって思うんです(^...
ロックみたいな若者文化を絶対認めない!のが、正しい大人(親)の姿だって思うんです(^^ゞ
子供(若者)の方も、大人(親)が認めてくれるものを若い自分たちがいいと思っているのは恥ずかしいことだ!くらいに思わないとって思うんですw
小山田氏については、それをしたのは中学生とか高校生の時なわけですよね。
なら、今現在そのことをどう思っているのか、悪いことをしたと思っているのか(いないのか)を言う場所を設けて、続けてもらった方がよかった気がしますね。
それは、その後にあったお笑いの方についても、そうだと思います。
>荒さがし五輪になって
本当にそれは思いました。
ていうか、今後そういうことを言う人や国が出てきて、メダルはく奪とか起きてくるのかもしれませんね。
こんばんは!
お返事ありがとうございます!!
時折、親が好きなものを自然に好きになる人っていますけど、あれってすご...
こんばんは!
お返事ありがとうございます!!
時折、親が好きなものを自然に好きになる人っていますけど、あれってすごいですよね。
うちの親も音楽好きですが、一方でわたしは真逆の音楽を好きになることで未だに反発している気がします(笑)
小山田さんのことに関しては、わたしもそう思います。謝罪のみで、釈明みたいのをする機会はなかったですよね。かと言って、あの状況ではだれも彼の言葉に耳を傾けなかった可能性もあり、なんとも言えませんが。
フジロックで特別編成となったMETAFIVE、最高にかっこよかったです。最後に「緊急事態中のMETAFIVEでした!」と、うまいこと言ってました。
メダルはく奪とかは嫌ですね。
妙にリアル…