- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167614058
感想・レビュー・書評
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これが読んでいない最後の藤原伊織作品になると思いながら読了。
ダナエは手のひらの闇、水母はシリウスの道に繋がるような。
とにかく藤原伊織作品は主人公がかっこいい。
黙って力になってくれるところ、
説明しないところ。
シリウスの辰村は私の小説カッコいいランキング上位だけれど、水母の方が先に書かれたようなので麻生が元になっているのかな。
もっとたくさん作品を読みたかった。
また読み直そう、テロパラからシリウス、ダックスフントも、蚊とんぼ白髭も。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
中篇一本に短編二本。導入がやや入り込みづらいが、入ってしまえばとてもしっかりした作品だった。特に人物が良い。とりわけ女性が良い。やわらかくありながら、サバサバとバードボイルドであって、惹かれる。いいな、と思わされる。読後に「テロリストのパラソル」の著者であると知り、なるほどと思うと同時、これが遺作であるということが残念でならない。
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3作品とも著者の特長が出ていて面白かったです。「ダナエ」はギリシャ神話を読んでみたくなるような気持ちになりましたし、犯人の動機がわからず早く読み進めたくなる構成でした。「まぼろしの虹」と「水母」は、その後に含みを持たせるような終わり方で、私的には少し物足りなさを感じました。短編は感情移入できる主人公の内面を知るまでの時間と、感情移入後の展開が短く、その面でも物足りなさを感じました。それでも私は本作を含め、藤原伊織さんの、根底にどこか孤独や潔さ、そして圧倒的な優しさが漂う作品が好きです。
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中短編三作品から成る著者存命中に刊行された最後の作品集。レンブラントの絵画「ダナエ」をモチーフにした表題作はミステリー色が強く、家族を題材にした「まぼろしの虹」は文学色が濃い少々風変わりな作品。最後を飾る「水母」は犯罪小説的な味わいがあり、バラエティに富んでいる。登場する男たちは過去への郷愁を抱え、ままならない現実に目を瞑るしかないが、解説の小池真理子氏が評した<荒ぶる諦念>に即した矜持を持ち合わせている。情緒的で感傷的なやせ我慢の美学に満ち溢れた一冊。著者の作品は長編より短編の方が私は好きかもしれない。
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藤原伊織的世界観。
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著者の代表作といえる傑作中篇など、全三篇収録の作品集。
「ダナエ」「まぼろしの虹」「水母」のどれが“著者の代表作といえる傑作中篇”にあたるのか分かりませんが、なかなかに味わい深い一冊でした。
ちょっと崩れたような、うらぶれた雰囲気のある男性が特徴的。ファンはこういうのが好きなんだろうな。 -
大きな余韻。謎多き終わり方が何とも言えず心地良い。以前一度だけ浅田作品で似たような作品があった。その時は読者への挑戦状に思えたが、本作は読者に委ねられているといった優しい雰囲気を感じた。初読みの作家さんでしたが、すでに他界されているようで新刊が出ないのはとても残念。刊行済の他作品も読んでみたいと思う。
あらすじ(背表紙より)
世界的な評価を得た画家・宇佐美の個展で、財界の大物である義父を描いた肖像画が、切り裂かれ硫酸をかけられるという事件が起きた。犯人はどうやら少女で、「これは予行演習だ」と告げる。宇佐美の妻は、娘を前夫のもとに残していた。彼女が犯人なのか―。著者の代表作といえる傑作中篇など全3篇収録。 -
藤原伊織の遺作となった短編集です。あまり短編は読まないので放置していましたが、早く読めばよかった。非常によかったです。
シリアスな空気の中で不思議な優しさというか優しさがあります。これは彼の本に通底している特徴です。 -
「水母」の,元妻への配慮の仕方が好き。