桜花を見た (文春文庫 う 11-7)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167640071

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  • 5篇からなるの短編種

    《桜花を見た》
    太物問屋「いせ辰」の手代、英助は、母親の死に際に「お前のお父っつぁんは、遠山左衛門尉景元様だよ。15になったら、会いに行くんだよ」と、言われたが、18になる今まで、会いに行く勇気がなかった。
    それでも、英助は、真面目に奉公に励み、得意先にも、贔屓にされていた。
    ある日、「いせ辰」の跡取り息子から、妹のお久美と、世帯を持たないかと、言われる。
    お久美は、片足が不自由で、出戻りであった。が、英助は、その縁談を受けるつもりでいたが、お久美は、英助が、無理をしていると思い、「断っても良い」と言う。
    英助の誠に触れた、お久美は、英助から、父親の話を聞く。「誰にも知られず、会いたい」という英助の気持ちを知り、「きっと私が会わせてあげる」と、心に決め、びっくりする行動に出る。

    《別れ雲》
    筆屋の老舗「宝山堂」の一人娘、おれんは、手代卯之吉を婿に迎えた。だが、卯之吉は、親方のやり方に、反発して、借金を作り、行方不明に。父と娘は、手頃な家を見つけ、細々と、筆の商いをしていたが、そんな二人の前に、歌川国直が、客として、現れる。

    《酔いもせず》
    父葛飾北斎の世話をしながら、陰に隠れて、絵を描く娘のお栄。
    女と言うだけで、世に出られない。
    お栄は、鬱々と、日々を過ごすが・・。

    《夷酋列像》
    和人商人との商取引や、労働条件に不満を募らせた一部のアイヌ達が蜂起した、クナシリ、メナシの戦い。その討伐隊の指揮官の一人である蠣崎波響は、松前藩の藩主の弟であり、絵師で、藩の家老であった。
    陸奥国伊達郡梁川へ移封された、松前藩の復領の為、波響は、10年以上も、絵を売り、帰封を叶えた。

    《シクシピリカ》
    高宮元吉は、貧しい農家の長男であったが、学問を志して、家を弟たちに任せ、奉公先で、学問を積んだ後に、師の代理で、蝦夷地見分随行員として、蝦夷地に向かう。

    《桜花を見た》で、親子の対面の場面は、流石、宇江佐真理さん。泣かせどころを、心得ておられる。

    5篇全てが、実在の人であり、作者の、史実に基づいた、想像が面白く、読み応えがあった。

    新しい作品が読めないのが、残念。

  • 久し振りの宇江佐真理さん。
    何故かちょっと読むペースが遅かったというか、引き込まれなかった。
    どうしたんだろう…

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/709436

  • 実在する人物を題材にした時代小説集。宇江佐真理の小説は初めてだったが、しみじみとさせられる落ち着いた雰囲気が時を感じさせて良い。次はもう少し軽いものを読んでみよう。

  • 遠山の金さんのおとしだね。
    常磐津の死傷をしていた母の父なしごである英助は、亡くなる母親から、その証拠である守刀と印籠を持たされる。だが商家の手代となって、武家にはならない意思を持った英助は、一目だけ会いたいという夢だけ持つ。
    片足の障害を持ち出戻りとなった商家の娘。前から狩る愚痴を言い合える仲良しだった。真面目な仕事ぶりと、娘に対して偏見もなく、大事に思う英助を店主は出店を持たせてやろうとする。そこで娘は夢だけで終えるはずだった栄輔の望みを思わぬ方法で叶える。

    葛飾北斎が関係する2篇。
    筆屋の娘の恋心。

    北斎の娘の話。

    松前藩の家老でもある絵師の話など。。。

    情けが通う短編集。

  • L
    いくつかの話は実在人物を取り巻く話。

    桜花を見た・・・手代の英助は自分が町奉行遠山の息子である、という亡き母の言葉を胸に、ただ遠山本人には確かめられずにいた。父子の最初で最後の面会シーン。泣けます。
    別れ雲・・・筆屋の娘おれんは婿に入った手代の夫の遊びが元で店をつぶされ、筆職人の父と二人で小さな店を構え生きていた。店に寄るつくようになった絵師の鯛蔵はおれんよりも年下だがおれんに好意をもっている様子。おれんはその想いに応えることができない。そんななか行方不明の夫が江戸で同じ筆屋を営んでいることを知る。
    酔いもせず・・・葛飾北斎の娘、お栄の話。
    そういえば諸田作品で一九の娘舞の話にお栄も登場してたものがあったっけね。あっちのお栄よりもこっちのお栄の方がまともで良かった。
    その他、松前藩がらみ作品

  • 江戸時代の実在の人物たちが、主役あるいは重要登場人物になっている短編集。

    読み応えズッシリあり。

    北海道を舞台にした後半の2編は、同時期の出来事を松前藩と幕府側の両サイドから描かれていて、ナカナカおもしろかったです。

  • 表題の「桜花を見た」は胸がツーンと硬くなる(笑)お話で好きですが、「別れ雲」はちょっと納得のいかない話でした。それ以外の話は実話を素にしているそうですが、堅い内容は砕けた脳味噌に浸透しきれませんでした。

  • 大分前に読了

  • 短編小説集。
    題名は遠山の金さんの桜の話。

    江戸情緒あふれつつ日本史の復習も出来るかも…。

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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