- Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167653033
感想・レビュー・書評
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売れない画家が「俺」という一人称で語る物語。この画家は俗に言うヘンな人なので頭の中で考えることがヘンすぎて笑える。お見合いをわざと失敗するために、鰻重を肝吸いのように吸う場面は、声を出して笑った。芥川賞を取った表題作の他1作収録。
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パンクロッカーである町田康さんの芥川賞受賞作。2000年度受賞なのでもう20年も前なのか。
突拍子のない展開や描写はどこかパンクっぽい。ことの成り行きをひたすら記述するスタイルはデビュー作『くっすん大黒』とも似ているのだが、展開の摩訶不思議さをとくに楽しむことも出来ず、読む頭がついていかなかった。一読して、思い返しても何が書いてあったのかよくわからない。ひたすらわけのわからないことが語られている。
デビュー作がパンクっぽくなかった分、反動なのかとてもパンクっぽい作品だ。これは町田さんが進化したのか、あるいは劣化した結果なのか、どっちだろう。芥川賞の選考も支持と不支持で真っ二つに割れたという。僕は『くっすん大黒』のほうがはるかに良いと思ったし、正直これで芥川賞ならデビュー作でのほうが良かったなと思ってしまった。 -
かなりROCKな作品ですなぁ〜
主人公のダメっぷりも良い
俺は大好き
でもダメなひとは絶対ダメだろうなぁー -
へらへらと生きる“俺”がだらだら語るうちに、友達の、道行く人の、他人の悪意が襲いかかってくる。
でも読んでいるうちに、全ての悪意はこの本人から発せられたものに見えてくる。
自分が社会に向けた敵意は、鏡のようにはね返されて自分を突き刺す。
“俺”が社会を突き放しているのか、社会が“俺”を突き放しているのか。
しかし、解説で池澤夏樹が書いているように、どんなに馬鹿馬鹿しくても“俺”は「大衆を見下して超然としているわけにはいかない」。
どれだけ社会を軽蔑していても、現実ではおべんちゃらを言いながらへらへら笑って金を借り、ハムをめぐんでもらわないと生きられない。
だからこそ主人公は滑稽にも、悲しくも見える。
“俺”は孤独だけど、真っ暗な中で一人ぼっちの孤独じゃなくて、雑踏の中でぽつねんと立っている姿がどうしようもなく孤独。 -
イカれ徒然草。すごい。
あまりにもとりとめのない脳内イメージを、厳密に明確に克明に文章に落とし込んでいる。文体も相まってスルスルと脳内にインストールされてしまう。
あんまり深入りしすぎると自分の口調とかも影響受けそう、日常に悪影響が出そう。危険。
読書になにか意味を求める人には向かない。ただの暇つぶし、エンタメだって思える人なら楽しめると思う。 -
きれぎれ、人生の聖の2編。人生の聖の書き出しが秀逸。ちゃんちゃら&いとをかし。
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疲れすぎて眠れないようなときにこういうダメ人間のふらふら幻想譚を読むと、ごわごわになった脳みそがもみほぐされる。次の一文でなにがどうなるのかわからないのも、日々に倦んだ身体に効いた。
「人生の聖」の、頭蓋骨を透明なケースにしちゃった男の話が一番好き。 -
なまじ芥川賞をとってしまったがために文学だ非文学だと論争を呼んでいる作品だが、町田康なのだからこれでいいのだ。ストーリーなど二の次、自動筆記の如く単語を紡いでいる。リズム。