特捜検察の闇 (文春文庫 う 15-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 151
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167656652

作品紹介・あらすじ

バブルの「闇の紳士」たちが「守護神」と頼った元特捜のエース田中森一。オウム真理教教祖の主任弁護人を務め死刑廃止運動のリーダーでもある安田好弘。田中は古巣の東京地検特捜部と、安田は中坊公平率いる「住管機構」という「絶対正義」と対峙する。二人の弁護士の軌跡を軸に司法界の驚くべき変容を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の本を読むのは2冊目。
    先日読んだ「野中広務 差別と権力」と比べると、本書は何か散漫としてまとまりがないなと思っていたら、あとがきに元々違う連載2本をくっつけたと書いてあって納得した。

    本書は、2人の弁護士(田中森一と安田好弘)の逮捕の件を通じて、本来は正義である筈の司法界が歪んで正常に機能しなくなっている様を警告している。
    確かに本書を読むかぎりにおいて、その警告に説得力はある。

    しかし……。
    本書で登場する安田弁護士は、後に「光市母子殺害事件」の弁護で有名になった、あの弁護士なのだ。
    著者のために断っておくが、本書が刊行されたのはその前である。

  • 1

  • 文春というのはおかしな会社で、こういう本を出しているにもかかわらず、その誌面は相変わらずロッキード事件当時の検察観が覆っている。
    もちろんほかのマスコミについても完全な検察支配下にある。大新聞はいうにおよばず、著者が元いた共同の加盟社ですら小沢事件に関する識者コメントを魚住に求めたところはないのではないか?
    結局本書のような主張はマスコミ全体としてみたときに「こういう視点も取り扱っています」という免罪符に過ぎないのではないか?

  • フィクションのような出来事ばかりで、まるで小説のように読めますが、すべて現実の話。最近、検察の闇が次々に明るみになっているけれど、それを予見したような内容です。
    検察の奥深くに迫る取材力と視点が素晴らしい。
    かつて検察を賛美したことがある筆者の作品だったので、よけいに説得力がありました。

  • 司法の闇が見える
    正義を守る司法の崩壊がわかる
    悪でも善でも、司法は平等でなければいけない
    しかし、善のみが司法を利用できる
    おかしい
    正義のためが、国のために変化してしまった
    国を抑える、裁くはずに司法が、国の援護ではいけない
    戦前の失敗をまた繰り返すのだろうか

  • 著者は、田中森一(たなかもりかず)と安田弁護士が関わった事件を通して、検察組織の闇にスポットを当てている。「正義って何なんだ。検察だけが正義で、あとは悪だというような、そんな理屈があるんかっ!」という発言が印象的でした。


  •  よくわかる本。

  • 田中森一、佐藤優の流れでこの本にたどり着きました。
    絶対的な正義などない、正義の仮面を被っている物が一番怪しい。
    肝に銘じておきましょう。
    小沢の秘書逮捕という事件もあり、タイムリーな1冊でした。

    『だが、まやかしの「正義の御旗」も高く掲げれば大きな求心力を持つ。<略>裁判官・弁護士・検察の法曹三者が互いに独立し、率直に批判しあって初めて司法のシステムは正常に機能する。三者が「国策」の名の下に合体し、馴れ合うようになると、どんなおそろしい事態が起きるか。』

    まあ、この国に「国策」は無いのだから「国策捜査」もない、というのはある意味正しいのでしょう。
    本当は空気を過剰に読んだ「暴走」なんでしょうが、それを「国策」「正義」だと思い込んでいると。

    ただ、弁護士は依頼人の利益のみを考えるべき、というのは疑問。
    丁寧な真実を見極めようとする姿勢が大切なのではないでしょうか。

    「公」と「私」のバランスですね。

  • 田中森一がらみで読んでみた。いろいろな事件についての考察もありよかったかな。

  • 政治にも経済にも疎い自分が なぜこんな本を手に取ってしまったのか…去年自伝「反転」で話題になった元特捜の田中森一や、オウムの弁護人であった安田好弘。彼らが一体何をし、なぜ逮捕されたのかが、そこにどんな意味があるのかが書かれている。許永中や宅見勝、イトマンなどかつてよく耳にした名前がバシバシでてくる。ニュースで見聞きしていても、そこで行われていたさまざまな事柄は私たち一般庶民には全く関係のないことで。数百億もの大金をいとも簡単にあちらからこちらへ動かし、そして罪をなかったことにする操作がどういう風に行われていたのかがこれを読むとよくわかる。検察vs弁護士 という一般的な図式の中で、『正義』というものの意味が問われ続ける。「正義ってなんだんだ!」作者のインタヴューに対して田中氏が叫ぶ。「正義を守るのが検察の最後の砦だ」と 死ぬまで言い続けた検察官がいた。「われわれが正義である」という錦の御旗を打ち立てながら自分にとって目障りな検事に無実の罪をなすりつける元日弁連会長がいた。正義って いったいなんだろう。日々の生活から少し離れて考えてみたい気もする。

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著者プロフィール

魚住 昭(うおずみ・あきら)
1951年熊本県生まれ。一橋大学法学部卒業後、共同通信社入社。司法記者として、主に東京地検特捜部、リクルート事件の取材にあたる。在職中、大本営参謀・瀬島龍三を描いた『沈黙のファイル』(共同通信社社会部編、共同通信社、のち新潮文庫)を著す。1996年退職後、フリージャーナリストとして活躍。2004年、『野中広務 差別と権力』(講談社)により講談社ノンフィクション賞受賞。2014年より城山三郎賞選考委員。その他の著書に『特捜検察』(岩波書店)、『特捜検察の闇』(文藝春秋)、『渡邉恒雄 メディアと権力』(講談社)、『国家とメディア 事件の真相に迫る』(筑摩書房)、『官僚とメディア』(角川書店)などがある。

「2021年 『出版と権力 講談社と野間家の一一〇年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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