- Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167693015
作品紹介・あらすじ
「私、結婚するかもしれないから」「すごいね」。小六の慎は結婚をほのめかす母を冷静に見つめ、恋人らしき男とも適度にうまくやっていく。現実に立ち向う母を子供の皮膚感覚で描いた芥川賞受賞作と、大胆でかっこいい父の愛人・洋子さんとの共同生活を爽やかに綴った文学界新人賞受賞作「サイドカーに犬」を収録。
感想・レビュー・書評
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二つの短編物語。
余分な言葉が削ぎ落とされており潔い。そしてとても読みやすい。短めの物語だが惹き込まれた。
「猛スピードで母は」は芥川賞受賞作、「サイドカーに犬」は芥川賞候補作ということで、暗く重たい話かなと思っていたが、どちらも想像に反して淡々と軽やかに、ときにユーモアも滲ませながら話は進んでいった。
「猛スピードで母は」は母子家庭の小学五年生の男の子と常識はずれの母の物語。豪快で常識はずれな母の我が子への不器用な愛情を感じた。
「サイドカーに犬」は小学四年生の女の子と父の愛人の一緒に過ごした少し奇妙な日々が描かれる。
子どもの置かれた環境から考えると決して明るい話ではないが、その状況を悲観しているでもなく、子どもの視点から淡々と語られていく。
ふと子どもの頃の感覚を思い出す。
子どもって大人が思う以上に感じているし考えているんだよね。
なんだか独特の雰囲気で魅力を感じる作品だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
表題作も『サイドカーに犬』も今の感覚で言えばひどい大人達に振り回される子どもの話。でも子どもである慎や薫が親や愛人など大人に対してとる行動が、過度な庇護を求めるわけでもなく淡々と自然で清々しい。寂しさと笑いの物語。
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111108さん、ようやく長嶋有さん読みました!
良い小説でした…。
・サイドカーに犬
母が家出し、小学生女子の薫が、父と、一風変わった父の愛人の洋子さんと、弟と、父の仕事仲間たちと過ごした一夏の物語。
淡々と綴られていく気だるい夏のエピソード、父の不祥事によって意外に派手にバタバタと幕を閉じるラスト、偽造硬貨で鳴り響く「夏休みの終わりを告げるベル」に、大切なものがなくなる前の最後のきらめきとノスタルジーを感じた。
何より、大人になった薫が、洋子さんを思い出して「そろそろなんじゃないか」と、人生が劇的に変わる何かを予感するような最終ページが、すごく良かった。
子供の目から描いているからこそ、洋子さんのかっこよさが際立っている。
また夏に読み返したいような中編で、個人的には表題作より好き。
・猛スピードで母は
とにかく、母が団地の梯子を登って、ベランダ伝いに自室まで渡っていくシーンからラストにかけてが心に残った。
私としては、「猛スピード」な母の型破りな愛情が、遠回りして慎に届く場面のように思った。
こちらの小説も、何度か読み返したらいろいろ発見がありそう。-
ロッキーさん、こんばんは♪
いきなりレビュー冒頭で叫んで?いただきありがたいやら恥ずかしいやらです〜
勧めておきながら何ですが、長嶋有さ...ロッキーさん、こんばんは♪
いきなりレビュー冒頭で叫んで?いただきありがたいやら恥ずかしいやらです〜
勧めておきながら何ですが、長嶋有さんそんなに数多く読んでなくってこの本も未読です。お兄さん又はおっさんが主人公という勝手なイメージがあったので、子供が主人公ということがまず新鮮ですね!そして割と何も起こらない系の話かと思ったら激しい展開があるようで?気になります〜
長嶋有さんの知らなかった面を教えてくれたロッキーさんに感謝です‼︎2022/07/28 -
111108さん、コメントありがとうございます!
やっと読めたの嬉しくなり、冒頭から元気にご報告していまいました。恥ずかしがらせて申し訳ない...111108さん、コメントありがとうございます!
やっと読めたの嬉しくなり、冒頭から元気にご報告していまいました。恥ずかしがらせて申し訳ない…!
お兄さんかおっさん主人公のお話のが多い作家さんなんですかね。そういうタイプの小説も気になります。
平熱な雰囲気はそのままに、この小説は少し動きがあり、私はそこが結構好きでした。よろしければぜひ読んでみてください\( ˆoˆ )/
111108さん既読の作品も、これから追っていこうと思います!2022/07/28 -
ロッキーさんお返事ありがとうございます♪
『台所大平記』に続き、こちらももちろん読みたい!読みます!ロッキーさんお返事ありがとうございます♪
『台所大平記』に続き、こちらももちろん読みたい!読みます!2022/07/29
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羽田圭介さんのYouTubeで紹介されていた本作。
ちょうど純文学気分だったこともあり、気になり購入、読了。
いやぁぁぁぁーー、ものスゴく良いーーー(´∀`)
出会えて良かった。
久々にどハマりしそうな作家さんに巡り会えた予感…( ̄∇ ̄)
何というか、とても「潔い」作品だなぁと。
変に飾り過ぎないストーリーと文章、これ見よがしなザ「純文学」とは対極にあるような感じ。
さらさらと、そして淡々と綴られていくこの作品の空気感がもう堪らなく最高です(*´∀`*)
何かこうホッカイロみたいな感じ?の作品ですね、地味なんだけど持ってると心もほんのり暖かい…みたいな。
ちょっとイマイチ(というか全然)作品の良さが説明し切れていない感じがありますが…
そもそも「小説」自体が「言葉で表現する文学」なので、その良さを「言葉で表現する」ことにも限界があるんじゃないかと…
ということで、気になったらぜひ直接本を…
あと、本作はキャラクターもとても魅力的です。
「猛スピードで母は」のお母さんとか、ハードボイルド具合が超絶カッコ良かったなぁと。
息子のためならベランダだってよじ登る(笑)
理想的過ぎない、写実主義的な作風の良さが出ているようにも思いました。
完璧過ぎる登場人物は誰一人出てこない。
短所も含めて表現されているからこそ、とてもリアルな実在する人物のように感じられるのではないかと。
あと、作品のタイトルもまた秀逸です…
「サイドカーに犬」、「猛スピードで母は」って、もうこの絶妙な透かし具合…(´∀`)
この出会いがあるから、読書は辞められない。
<印象に残った言葉>
・パックマンも苺たべるよ(P62、私)
・洋子さんにコーラを奢ってもらった自動販売機に、父にもらった偽造硬貨をいれてみた。とたんに警報ベルが夜の路上に鳴り響いた。夏休みの終わりを告げるベルだ。私は走って逃げた。(P74)
・慎は新しい担任の先生が嫌いではない。一人で頑張って大変なのはこの人だ。サッカーゴールを守り切れると信じて身構えている。(P115)
・しばらく二人は立っていた。須藤君は慎の横顔を何度かのぞきこんだ。「なんで泣いているの」須藤君はいつもより困った口調でいった。慎は上着の裾で顔をぬぐうと「これ預かってくれない」といって手塚治虫の本を手提げごと須藤君に渡した。(P157)
<内容(「BOOK」データベースより)>
「私、結婚するかもしれないから」「すごいね」。小六の慎は結婚をほのめかす母を冷静に見つめ、恋人らしき男とも適度にうまくやっていく。現実に立ち向う母を子供の皮膚感覚で描いた芥川賞受賞作と、大胆でかっこいい父の愛人・洋子さんとの共同生活を爽やかに綴った文学界新人賞受賞作「サイドカーに犬」を収録。 -
二作品の短編には、それぞれ母親、父親、愛人、恋人など子どもの視点からみた大人たちが出てくる。わたしたち読者に、その大人たちは子どもから見た一方面の姿しか映らない。自然とわたしの視点も子どもとなって、母親や父親を見上げるものになっていた。
あの頃は気づかなかった“変”だったこと、“言葉に出来なかったこと”そんなものが、今なら理解出来るし、想像も出来る。
子どもって大人が思うよりも敏感に察するところがあると思う。それらの出来事や大切な人の心の動きなんかを、分からないなりにも意外と冷静に受けとめることが出来ていたんじゃないかな。
子どもっていっぱい、いろんなこと考えていると思うよ。 -
子供から見た大人たちを、すごく上手に描いている。私も片親で母から育てられた身としつ共感できたし、心情も理解できた。
親も一人の生身の人間であり、完璧ではないです。読むタイミングとして、若い頃に読んだ方が良いかなと思われた。
この本は特に何か起こる訳でもなく、ただあの頃の無性に不安で多感だった頃、そう時代とか時期ではなく頃というのが一番しっくりくる、頃の話。 -
#猛スピードで母は
#長嶋有
#文春文庫
#読了
「サイドカーに犬」と「猛スピードで母は」の2本立て。どちらも子ども目線からみた大人が描かれる。決して模範的でない大人。大人だっていろいろあるということかな…映画化された「サイドカーに犬」の広告動画を読了後に見た。映画も素敵なんだろうなあ。 -
「サイドカーに犬」5…小4女子と父の愛人・洋子さんとの交流。著者と同世代だから余計そう感じるのかもしれないが、完全に精神がタイムスリップした。
「猛スピードで母は」4…母子家庭の小6男子の淡々とした日常。子供の思考描写がすっと納得してしまうような生々しさがある。
どちらの作品も「破天荒なオトナ」により閉鎖空間に楔を打ち込まれたときの子供たちの衝撃が描かれていた。
自分は幸か不幸か周囲が真っ当な(?)大人ばかりだったので、このパラダイムシフトがめちゃくちゃ遅かった。それがコンプレックスでもあり、20代の放蕩生活の遠因になったと思っている。 -
初、長嶋有作品
すごい人だ