キミは珍獣と暮らせるか? (文春文庫PLUS 40-26)

著者 :
  • 文藝春秋
3.79
  • (8)
  • (12)
  • (13)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 87
感想 : 15
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167713195

作品紹介・あらすじ

フェネック、サル、スカンク、ハリネズミ、アリクイ…。ヒトはなぜ犬や猫に飽き足らず、珍獣を飼おうとするのか。伝説の珍獣ショップ「動物堂」店主としてあまたの珍獣を扱い、自らも飼ってきた著者による類のない珍獣選び・育成指南の書。独自の動物観、ペット観に裏打ちされた金言の数々は、読む者に「動物を飼うとは?」と改めて自問させずにおかない。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 1.
    犬で言うとパグ、間抜けでブサイクな動物が著者の好み。あまり凛々しい動物は出てこないことを念頭に置いて。

    「僕の場合はっきりと自分の好みというものが分かっている。ニュアンスやテイストでいえば、「まぬけ」である。「バカ」である。「何考えてんだかよく分からん」である。形でいうと「カッコ良くない」「頭が大きい」「顔が細くない」「目が離れている」「手が短い」等である。」
    「ためしに今度僕の店に来てみるといい。何人か女の子が働いているのだが、みんなこのものさしにかなったヤツばかりである。」
    「そのものさしにかなってないと、たとえどんなにその人が仕事ができてもいい人でも、どっか頭で感心してるだけで、性根の部分でまるごと好きになってあげられないのである。」

    2.
    ただし、絵がなく、容姿についての描写も少ないため、「へんないきもの」のような面白さはない。

    「ハナグマなんて体は大きいが大人になってもほんとにカワイイ。」
    「シマテンレックやズグロテンレックは、ハデなシマもようが入っていてキレイということなのか、わりと出回る。」

    ハナグマってなんだ。シマもようってどんな。
    Google画像検索を待機した状態で読み進めないと、読者は置いてけぼりをくらう。

    3.
    動物の飼い方についてはさすがにプロ。
    詳しいので、参考になる点が多くある。

    「動物はウソつかない……それは動物が自分にウソつかないだけで、他人のことはダマシますよ、ヤツら。もちろん、あなたのことも。」

    「僕は、この動物のデータを持ってないから薬は出せないよ」とキッパリ言われた。さらに「この状態だと三日以内に死ぬかもね」とズバッと言われた。僕は、悲しかったがその一言で先生を信頼することにした。僕が最もイヤなのは平気で知ったかぶりをする獣医だ。平気で注射を打って、動物を死なせてしまう獣医も世の中にはたくさんいるのだ。」

    「結局そのワオキツネザルは、その性格をとても気に入ってくれた素晴らしいご夫婦が、マンション暮らしをやめ、サルのために田舎の庭つき一戸建てを借りるというので売りました。サルには六畳一間の専用のねぐらと十畳のリビングと、そして日なたぼっこできる庭があたえられ、今でも元気にやってます。」

    「夜行性の動物、中でも目や耳の大きな動物は、小さな音、かすかな光に当然敏感なわけだ。まぶしい光は人間の百倍まぶしく、大きな音は人間の百倍うるさいと思っといた方がいい。」

    「小さく、これといって強力な武器も、すさまじい繁殖能力も持たない動物にとって、身を助ける最大のものが、その臆病さ、警戒心なのである。」

    「あとは勝手にカーテンと戦ったりしている。僕は僕で知らん顔してTVみてたりする。無視してやるのも大事で、上手に無視のできる人の方が動物は安心する。」

    「僕はしつけもいっさいしない。向こうの自分勝手さを全部のんでやることにしている。」

    「もう人間が飼うこと自体、実に人間の身勝手なわけだ。だから、それ以上の要求は酷だと思っている。」

    「つかず離れずといった距離をキープしつつ、時々でも向こうがこっちを求めてくれればメッケもんである。全然求めてくんなかったら、あーオレは好かれてねーなーと思うだけである。しょうがないから、その動物がエサを食べてる時、あんまりその動物は見ないようにしながら、となりで同じエサを食べてみたり、相手が毛づくろいをはじめたら、僕もちょっと離れたところで毛づくろいをしてみたりする。ま、そんなことに意味があんのかわかんないのだが、そうこうしてるうちに、なんとなく味方だとは思ってもらえることが多い。もちろん、これはあくまでも僕の考え、僕のやり方だが……。」

    このへん「飼い方の章」としてまとめて、
    動物については名前、注意点を表にしてくれていたら、と思う。

    4.
    ちなみに1章はまるまる読み飛ばして問題ない。

    いくら「覚悟がないなら飼うな」と言ったところで、飼う人はその時点では「覚悟しているつもり」なので無意味である。
    里親募集のサイトを見れば、引っ越しとともにペットを捨てる人のいかに多いことか、そして自己愛に満ち満ちて、どれほど独善的であるかがわかる。

    また売春と人身売買を一緒にしているが、自主的か否かによって大きく異なる。
    性に関することは売春だけでなくアダルトグッズショップであっても、「なんとなく後ろめた」くなるのは、社会通念上それがタブーとされているからだ。
    そして、人間の人身売買について、というか、奴隷制度については、南北戦争の結果、廃止になっただけの話。当時、奴隷制度に恩恵を受けていた南側の白人は猛反対した。
    いまだに、知っている限りでも東南アジアでは人身売買が組織的に続けられており、たびたび結構な数の逮捕者が報道されている。

    ペットは、ペット制度のために不利益を被る人もいなければ、ペット自身がデモを起こしたりすることもない。
    そのため今も動物売買が続けられているというだけのこと。
    法律上、ペットはモノということになっている。今のところ。
    そのためショップによっては「生体保証、当店の指定フードを定期購入することで期間内に死亡した場合は交換」なんて謳っている。

  • 動物を金で買うことは人身売買と本質的に変わらない、としながらも、それでも飼いたいという欲望を肯定する。本書はその上で希望者に相応の覚悟を突きつける。筆者の現在は、その欲望から解脱したように全く珍獣を扱っていない。それが正しいのだと思う。

  • 口調は軽いけど、内容はまっすぐ重い。

    飴屋さん、文章と演劇とでは随分違う印象を受けるけれど、シンプルで明け透けで嘘が無いところは変わらない。

  • 【本の内容】
    フェネック、サル、スカンク、ハリネズミ、アリクイ…。

    ヒトはなぜ犬や猫に飽き足らず、珍獣を飼おうとするのか。

    伝説の珍獣ショップ「動物堂」店主としてあまたの珍獣を扱い、自らも飼ってきた著者による類のない珍獣選び・育成指南の書。

    独自の動物観、ペット観に裏打ちされた金言の数々は、読む者に「動物を飼うとは?」と改めて自問させずにおかない。

    [ 目次 ]
    第1章 レクチャー珍獣初心者のあなたへ(珍獣とは何か(珍獣と苦楽をともにしないか) 動物を買うとは?(その動物は「商品」か「自然物」か?) 物の選び方(必殺技を伝授する))
    第2章 動物の飼い方(齧歯目とウサギ目(あなどれないカリガリ軍団) サルの仲間「霊長目」(サルはボンボン生まれない) 食肉目 有袋目(カンガルーたちの驚くべき事実) 食虫目・その他)
    第3章 畜生とケダモノの日々(店の名前は動物堂;ドングリとチャコちゃん;台湾からのFAX;擬人化のすすめ;エコロジーって何?;僕らのダッチライフ)

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 様々な動物の売り買いに関する情報も書いてありおもしろい。珍しい動物を飼うには様々な努力が必要なのだと知った。

  • アニマルストアを経営していた経験から、まず動物を飼う、買うということの心構えの説教からスタート。
    珍獣の飼い方、飼ってみての感想、特徴、苦労を生き生きと書いていてとても参考になった。
    絶対に自分では飼うことのないような生き物の実情が知れた。
    ぜひトビネズミを飼いたい!

  • こういう本好き! あなたは自然物ですか、人工物ですか?

  •  当時(今も、かどうかは不明)著者はアニマルストア=動物堂を経営する動物商であった。この店では犬猫以外の生き物しか売っていない。
     ただし、動物商の仕事をするのは365日分の300日。残りの65日は美術家。
     現在この比率がどうなったのか寡聞にして知らないが、わたしが飴屋法水(あめやのりみず)を知ったのは、芝居の演出家、プロデューサーとしてである。残念ながら彼の演出する芝居をじかに見たことは一度もないが、みたくて仕方がない。この本を読んでますますその思いを強くしている。
     この本に書かれていることは、単なる動物生態解説や飼育マニュアルではない。動物を飼うという行為から世界全体を、人間の本質を読み解く。至極まっとうな意見だと共感した。文章もうまい。
     これから動物を飼おうとする人はもちろん、既に飼っている人にはずべからく読んでほしい、いや読むべきだ。そのくらい説得力がある。文章もうまい。下手な絵にも味がある。

  • 巡り巡って、ここまで辿り着いてしまった。

    わたしはもとより動物好きで、まあ有りがちですが過去にウサギ、九官鳥、イヌは飼ったことがあります。ネコはずっと飼ってます。
    そのわたしとしては、非常に面白く読める本でした。
    そして、オススメされてしまったこともあって、リス、トビネズミ、トビウサギにとても興味が。かわいい。
    可愛いし、ある程度放っておくことは余裕でできてしまうので、飼ってみたい。

    ……だけど、うちで今飼っているネコはほぼ猛獣で、リスやトビネズミなんて飼おうものなら、勝手にケージを開けて食べてしまうでしょうから、無理。

  • 極私的なジャンルですみません。著者はかつて劇作家や現代美術家であったのを、ある日突然動物商に転職した方で、珍獣ー犬猫ではなくモモンガやサル、もっと変な動物たちーを主に扱っていたそうです。この本はそれらの飼い方指南が大半でありつつ、もともとペットとして手懐けられていない珍獣たちと暮らすということは、分かり合えない相手にどれだけ愛情を与えられるかという意外と大きなテーマが通底しています。私のバイブルです。

全15件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1961年3月22日、山梨県甲府市生まれ。演出家、現代美術アーティスト。

「2014年 『ブルーシート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

飴屋法水の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×