- Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167717322
作品紹介・あらすじ
ネット展開するグレーゴル・ザムザ、引き篭もり世代の真情あふれる「最後の変身」から、ボルヘスのを更新した「バベルのコンピューター」まで、現代文学の旗手による文字どおり文学の冒険。さまざまな主題をあらゆる技法で描きながら突き進むこの作品集は、文学の底知れぬ可能性を示している。
感想・レビュー・書評
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短編集。最後の変身がすき。
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短編集。瀕死の午後、波打つ磯の幼い兄弟、初七日が良かった。何気ない日常の風景が強烈なインパクトをもって胸に迫ってくる。論理的的確な描写は美さえ感じる。重厚で力のあるフレーズに圧倒された。
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個人的に興味深かったのは、カフカの「変身」をモチーフに、引きこもり青年の独白調で綴られた「最後の変身」です。
自分が「変身」したのは、肥大した自尊心と外殻に囲われた腐りきった中身、そして自らに課してきた「役割」であるとし、自らの半生を振り返る。
(ちなみに「役割」というのは、後の平野作品に出てくる「分人」の概念に近しいのかな)
ただの独白なのに、これほどまでに臨場感と迫力を出せるのは、やはりすごい筆力だと思います。ここだけ横書きなのも面白くて、「インターネットの日記なんかを覗き見ている感覚」なんだそう。なるほどなるほど。
他の作品、特に小品とも呼べる短編については、大胆な比喩も多く、正確に意味を把握するには至っていませんが、何か現代社会の脆さを表現しているようで不思議と感心してしまいました。 -
平野啓一郎の小説を読んでいつも思うのは、彼はとても「ブンガク」を着こなすのがうまい、ということだ。
つまり、彼の小説は一種のファッションのように自分には見える。
彼の小説には決定的に何かが欠けているように感じるのだ。
「初七日」などがその顕著な例で、(ところどころ脇の甘さは見られるが)描写は美しく、いかにも文学らしい「死」も描かれていて、オチもそれなりにしっかりとしている。
なのに、何かが足りなく感じる。
恐らく彼は、たまたま小説を書くのがとてもうまかったから小説を書いているだけで、別に絵がうまければ絵を書いて、作曲の才能があれば音楽をやっていたんじゃないだろうか。
(対照的にあれだけ小説を書くのを嫌がっている中原昌也の小説はその「何か」に溢れているように思う)
むしろ平野の作品が面白いのはその実験的な作品の方で、この本では「バベルのコンピューター」や「閉じ込められた少年」は面白く読んだ。
多分平野啓一郎は「ブンガク」という服を脱ぎ捨ててめちゃくちゃをやったら、もっと面白い作品が書ける人なんじゃないかと思う。 -
タイトルは好き
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11/13
中篇はイマイチだな、という印象。
実験的な試みをする短編か、作りこまれた長編か。
横書きの意図が解説のとおりなら些か安直かと。 -
精密機械のように組み上げられた文章。
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9つの短編の中で、私は「最後の変身」が一番興味深かった。
カフカの変身への考察を交え、主人公の現実を描くという発想にも斬新さを感じたし、主人公がただダラダラと語っているかの様にみえて社会風刺や皮肉や的確な主張を散りばめる文章力が凄いとしか言いようがなく、ただただ感嘆するばかりの本当にすごい作品だった。 -
091111