火天の城 (文春文庫 や 38-1)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167735012

感想・レビュー・書評

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  • 信長・テクノクラート三部作の一つ。

    安土城を建てた棟梁親子、阿部以言、阿部以俊を描く。

    職人としての武骨な男の生き様、武骨であるが故の親しみと反発の描き方が、相変わらず魅力的で面白い。

    人の描写だけでなく、どのような材料で、どのような道具で、どのような作り方で、どのような職業の人が集まって信長の考えを具現化していったのか、物作りの過程も緻密でその情景が目に浮かぶ。

    また親子の関係の描かれ方もこの作品のコアになっているようで、最後に想いが通じ合った以言・以俊親子と、最後まで心が通じることがなかった信長・信雄親子の対比という側面もとても印象深い。

    次は「雷神の筒」だ!

  • 山本兼一作品、二作目。
    この人の作品は父と子の葛藤がよく登場する。
    はじめは息子以俊は父に対して融通が利かないと反発するが、安土城築城の最中に父がけがをして、監督の代理をすることによって、父親が背負っていた棟梁としての責任を思い知るにつれて、父のことを理解するようになっていく。
    お父さんが大変な職人気質、息子ははじめは女遊びをしてろくでもない男かと思ったが、だんだん息子も成長してく。これは息子の成長物語でもある。

  • ずいぶん大きくなるまで、城というものがそこまですごいものとは思っていなかった。まぁなんか昔のでかい建物なんかな、程度で。でも初めて松本城を見にいった時に、実際に間近で見て、でもって中に入ってみて、これはすごいな、と。石とか、めっちゃでかいし。百聞は一見にしかずというか、写真を100回見ても分からないというか。この本を読む前には、実際に城を見にいったら良いよなぁ、とか思うわけで。しかしこんなにいろいろ考えて作ったのに、敵に襲われるとあっさり焼かれてしまうというのが切ない。

  • 安土城を消失させたのは明智光秀の軍勢ではなかったのかぁ。知らなんだ。

  • 焼かれてしまった安土城の天守閣が、見たことはないのに勿体無くて、勿体無くて…。多くの犠牲を出しながら建てられた絢爛豪華な天守閣がのこされていたら、現存する天守閣もまた違ったのかもしれない。本能寺の変は信長以外にも多くのものを殺してしまったのね。歴史は残酷だと思う。その上に私達はいるのだけど。

  • 織田信長と言えば?と聞かれ
    沢山あるけど咄嗟に出るのといえば
    楽市楽座、長篠の合戦、そして安土城。
    そんな安土城を作った匠の親子と依頼主である信長の話。
    宮大工の棟梁の岡部又右衛門と息子の以俊。
    天下の城である安土城を造れ!しかも南蛮風に!
    っていう無茶振りもありつつ翻弄される親子も対立しながら
    大工の棟梁としての仕事の意気込みが何ともあっぱれな作品。
    建設にはいろんな邪魔が入るけど、そこは負けじとこちらも頑張る。
    何万人という各方面から集まったプロフェッショナルな人達をまとめていく又右衛門
    その背中を見ながら反発するけど徐々に意味を分かってくる息子の以俊。
    この安土城、もちろん最後は燃えて灰になるのだけれど
    実は安土城建設する資料的なものは全くと言っていいほど残ってないそうで。
    フィクションだと分かっていても、目の前で日々城を建てていく匠のドラマを見ているような。
    著者の山本兼一さん、今年の2月に亡くなったとのこと。
    心からお悔やみ申し上げます。

  • 山本兼一さんが亡くなる前に読み終えられなかったことが残念。
    ある程度まで進んで以降、どうなるのか? と
    どんどん読み進めたけれど、又右衛門の気持ちには
    いまいち寄り添えなかったように思います。
    まだ私が子供だからでしょうか。
    もう少し時が経ってから再読したら、また違うのかもしれません。

  • 安土城建造のお話。

    安土城は、織田信長の命により、総棟梁の岡部又右衛門を中心に建造された。

    信長からは様々な無理難題をふっかけられた。
    重機などはない戦国時代。全ては人の手で行わなければならない。
    城を建てさせたくない者からの妨害もあった。
    たくさんの知恵をしぼり、様々な職人の一流の技が用いられた。そして、少なくない犠牲も払われた。
    その真剣な営みの中では、人の成長や家族や仲間の絆の深まりもみられた。

    まさに命がけで建てられた安土城が出来上がる時には、読んでいる私にとっても、安土城は愛おしい存在になっていた。

    しかし1年もしないうちに、信長は本能寺の変に倒れる。

    なぜ安土城がああいう末期を迎えるのか…
    それは、あの城が名実ともに「信長の」城だったからなのではないか。

    岡部又右衛門父子に魅かれながら読み進んだ作品だったが、最後の最後に織田信長という人の圧倒的なカリスマ性を感じさせられた。

  • 安土城建設の話。
    熱意、情熱、意志。。。
    尊敬する

  • 面白かった。戦国時代において決して主役級とはいえない人物を主人公にしてしまうのが著者の良さであった。本当に惜しい存在をなくしてしまったと思う。まるで戦国時代にいるような、そんな細かい描写がよかった。

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著者プロフィール

歴史・時代小説作家。1956年京都生まれ。同志社大学文学部を卒業後、出版社勤務を経てフリーのライターとなる。88年「信長を撃つ」で作家デビュー。99年「弾正の鷹」で小説NON短編時代小説賞、2001年『火天の城』で松本清張賞、09年『利休にたずねよ』で第140回直木賞を受賞。

「2022年 『夫婦商売 時代小説アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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